lao:s06:114_savages
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1995年、ニューヨーク州では死刑制度の復活を認める法律が可決された。パタキ新知事が署名したのが3月で実際に施行されるのが9月からなので、このエピソードの放送当時はまさにタイムリーな話題だっただろう。そもそも、こんな重要なことがこのシリーズの元ネタにならないはずがないのだ。 | 1995年、ニューヨーク州では死刑制度の復活を認める法律が可決された。パタキ新知事が署名したのが3月で実際に施行されるのが9月からなので、このエピソードの放送当時はまさにタイムリーな話題だっただろう。そもそも、こんな重要なことがこのシリーズの元ネタにならないはずがないのだ。 | ||
- | 90年代当時、犯罪の増加は深刻な社会問題であり、とにかく犯罪に対して厳しい態度を取らなければ、政治家はもちろん判事も地方検事も地位が危ないという状況だったようだ。劇中の台詞にもあるように「人々は犯罪にうんざりしていた」のだろう。そのあたりの事情は下記『死刑の大国アメリカ』(宮本倫好著)に詳しい。 | + | 90年代当時、犯罪の増加は深刻な社会問題であり、とにかく犯罪に対して厳しい態度を取らなければ、政治家はもちろん判事も地方検事も地位が危ないという状況だったようだ。劇中の台詞にもあるように「人々は犯罪にうんざりしていた」のだろう。そのあたりの事情は下記『死刑の大国アメリカ』に詳しい。 |
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しかしこのような文脈で死刑を求刑される事件として思い浮かべるのは、「サムの息子」のような連続殺人犯やテロリスト、あるいは組織犯罪の大物のようなわかりやすい悪人だろう。そのようなわかりやすいモデルケースを持って来ないところが、いかにもこのシリーズらしい。警官殺しといっても相手は潜入捜査中で、見た目はチンピラ。被告人も殺人は今回が初めてで、元々やっていたのは死刑とは縁のないマネーロンダリングだ。被告人の妻は「私たちはパタキに投票したのに」と言うが、パタキが公約した死刑復活に自分たちがこのような形で関わることなど、想像もしていなかったに違いない。 | しかしこのような文脈で死刑を求刑される事件として思い浮かべるのは、「サムの息子」のような連続殺人犯やテロリスト、あるいは組織犯罪の大物のようなわかりやすい悪人だろう。そのようなわかりやすいモデルケースを持って来ないところが、いかにもこのシリーズらしい。警官殺しといっても相手は潜入捜査中で、見た目はチンピラ。被告人も殺人は今回が初めてで、元々やっていたのは死刑とは縁のないマネーロンダリングだ。被告人の妻は「私たちはパタキに投票したのに」と言うが、パタキが公約した死刑復活に自分たちがこのような形で関わることなど、想像もしていなかったに違いない。 | ||
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対してマッコイの主張はあくまでもドライで政治的だ。マッコイは、死刑の本質は復讐であるとズバリ言ってのける。州が当事者に代わって復讐することで(つまり「暴力装置」として働くことで)私的な復讐や自警団的な暴力が抑止され、人々はシステムが機能していることを実感できる。さらに被告人のサンディグは裕福な白人男性であり、死刑制度復活第一号の「ポスター・チャイルド」としての属性も備えている。 | 対してマッコイの主張はあくまでもドライで政治的だ。マッコイは、死刑の本質は復讐であるとズバリ言ってのける。州が当事者に代わって復讐することで(つまり「暴力装置」として働くことで)私的な復讐や自警団的な暴力が抑止され、人々はシステムが機能していることを実感できる。さらに被告人のサンディグは裕福な白人男性であり、死刑制度復活第一号の「ポスター・チャイルド」としての属性も備えている。 | ||
- | 一方で、ブリスコー刑事の体験は切実だ。以前に一般人2人を射殺して逃走中の犯人を追跡したことがあったが、その時「銃を降ろせ!」と命じると犯人は素直に応じた。もし、先に2人を殺したことで死刑になると思っていたとしたら、その犯人は自分の命令を聞かなかっただろう――という言葉からは、現場で凶悪犯と対峙する警官の皮膚感覚を強く感じさせ、警官殺しが capital | + | 一方で、ブリスコー刑事の体験は切実だ。以前に一般人2人を射殺して逃走中の犯人を追跡したことがあったが、その時「銃を降ろせ!」と命じると犯人は素直に応じた。もし、先に2人を殺したことで死刑になると思っていたとしたら、その犯人は自分の命令を聞かなかっただろう――という言葉からは、現場で凶悪犯と対峙する警官の皮膚感覚を強く感じさせ、警官殺しが capital |
そして死刑の求刑を決断したのは、地方検事のアダム・シフ。ブロンクスの地方検事は「死刑の求刑はしない」と明言しているらしい。つまり、今回の犯人がブロンクスで殺人を犯していれば死刑にはならなかったのに、マンハッタンで殺せば死刑になる。それで良いのか? という疑問が投げかけられる。 | そして死刑の求刑を決断したのは、地方検事のアダム・シフ。ブロンクスの地方検事は「死刑の求刑はしない」と明言しているらしい。つまり、今回の犯人がブロンクスで殺人を犯していれば死刑にはならなかったのに、マンハッタンで殺せば死刑になる。それで良いのか? という疑問が投げかけられる。 |
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