CSI: Miami - Season 4, Episode 17 ====== #89 Collision ====== * 邦題:「独りぼっちの過去」 * 脚本:Dean Widenmann * 監督:Sam Hill * 初回放映:2006-03-06 ---- //Being someone's father is not a right; it's a gift.// ===== 事件概要 ===== ==== アンジェラ・ロスことバーバラ・ソマーズおよびルイス・レイエス殺害事件 ==== 正面衝突を起こした車があった。運転席では若い女性が頭から血を流して絶命している。単純な事故かと思われたが、トランクを開けてみると中には若い男性の遺体があり、さらに車の後方にも追突されたような窪みがあった。運転免許証の氏名は「アンジェラ・ロス」となっていたが、住所がフェイクだったため正確な身元は不明。男性の方は死因は絞殺だが、腹部には死後に刺されたらしい傷、手には赤い染料、身体には白い繊維(発見された車とは別の車のシートカバーと思われる)が付着していた。 車の後方の凹みから採取した塗料からもう1台の車種が判明し、一致する特徴の車が発見される。それはレンタカーで、ラッセル・ミラーという男性が借りていた。死亡していた男性は、ミラーが宿泊しているホテルの従業員ルイス・レイエスだという。ミラーはルイスと性交渉を持ち、それを「妻に知らせる」と脅されたために絞殺し、ちょうどアンジェラの車が通りかかって現場を見られたために追跡して追突し、事故を起こさせたうえで遺体をトランクに遺棄したのだった。 だが、くわしく検死した結果、アンジェラは追突されて事故を起こした後、頭を殴られて死亡したらしいことがわかる。そこで、車内をもう一度調べ直すと、ガラスの破片に混じって小粒のダイヤモンドが発見される。被害者は宝石類を身に着けていなかった。 ダイヤに刻印されていた番号から取扱店がわかり、そこで話を聞くと、ダイヤは前日に盗まれたネックレスのもので、「アンジェラ」の正体は店員のバーバラ・ソマーズであることがわかる。バーバラの自宅へ行くと、息子のダニーがいた。なかなか口を開こうとしないダニーの様子とバーバラの遺体に残された無数の虐待の痕跡から、バーバラがDV夫から逃げ回っていたのではないかと思われた。 バーバラの車内で発見した指紋は、飲酒運転の前歴のあるハワード・ベンチリーの物だったが、ハワードは自分は事故を目撃しただけで無関係の第三者だと主張する。だが、DV被害女性を支援するネットワークを通じてナタリアが調べた結果、ハワードこそバーバラの夫であることが判明。 バーバラが持っていたダイヤのネックレスは、火事場泥棒のリタによって質屋に持ち込まれていた。さらに、リタはネックレスとともに発見した拳銃も持ち込んでいた。拳銃は清掃されてしまったが、マガジン部にはハワードの指紋が残っていた。ハワードは息子のダニーを取り戻すためにバーバラを尾行し、追突されたのを見た。その後、ガラスごしに中を見ると、バーバラが拳銃を取り出していた。だが弾が入っていなかったため、ハワードが銃を取り上げ、何度も頭を殴って殺害したのだった。 ---- ===== 感想 ===== 単純なんだか複雑なんだか、よくわからないエピソード。 話は二転三転するし、被害者も加害者も複数いて、次から次へと新事実や怪しい関係者が登場する(ややこしいので上の概要では省略したけど、宝石店の店長も嘘ついてたし)。ひねりすぎたせいか矛盾が出ているが、個々の要素を見れば「調べたらこうだった、聞いたらこう答えた」式の単純なものだったと思う。DV被害者支援ネットワークについては、単に「聞いてみます」「わかりました」ですませずに、カリーやアレックスも巻き込んでもっと具体的に描写してほしかったなぁ。そうすれば過去のエピソードとの連続性も感じられたかもしれないのに。 冒頭でルイスの遺体に気づいたのはトランクから血が流れ出しているためだったが、その後アレックスが「この傷は死後のもの」だと言う。しかし、その後犯人が自白するシーンの回想では刺していない。トランクに入れてから刺した、あるいは偶然何かが刺さったとしても、すでに死亡して血液の循環が止まっているのに、流れ出すほどの血が出るだろうか? マイアミでプロットに突っ込むのはもうやめようと思ったのはすでに前シーズンのことだが、これはちょっと見逃せなかった。 このエピソードでは、事件はホレイショとナタリアの背景を描くための舞台装置にすぎないのだろうか。 ホレイショが自分の母親を守ろうとした結果、母親を殺害した加害者を殺してしまった(明言はされていないが、そういうことなのだろう)ということは「別れても憎い人」で、また子供の頃に父親から虐待を受けていたことは、「壊れた男」で明らかになったが、今回の話でその両者が結び付いた。ホレイショとレイモンドの母親を殺したのは彼らの父親だった――ホレイショが父親を殺したということになる。 ホレイショの経歴について、前シーズンまでに明らかになっていたのは、弟レイモンドのこと、母親がキューバ人であること(公式サイト)、カストロ政権成立の少し前に生まれていること(シーズン1で45歳)、スペイン語は多少わかるがあまり得意じゃないこと(シーズン1「カリスマ教授の異常な生活」他)、キューバ人コミュニティともあまり付き合いがないこと(シーズン1「漂流 新月の闇」)、キーズ諸島に土地を持っていたこと(シーズン3「エバグレーズ炎上」)――という所だろうか。なので、あとは適当に想像で補って「母親はキューバ人だがアメリカナイズされた人で、夫や息子たちとの会話はほとんど英語。父親は、当時のキューバ経済を支配していたアメリカ企業のオーナーか何かで、革命で財産を失ったが、フロリダに持っていた不動産を息子たちに遺した」というようなことを考えていたのだが、想像するだけ無駄だったかもしれない。orz そしてまた唐突に出たナタリアの過去。彼女もまたDV被害者で、元夫は現在服役中らしい。何話か前にウルフの現場検証を見に来た時に、「犯罪現場はこれで2度目、自分から進んで来たのは初めて」と言っていたので、事件に巻き込まれたことがあるというのはわかっていたけれど、それは夫からの暴力事件で自分が被害者になった時だった――ということなのだろうか。その関係で、DV被害者を支援する女性たちのネットワークにも関わっているということなのだが、相手が服役中とはいえ、進んでTVに出たりして(「消せない感触」)大丈夫なのかね。レイプ事件で起訴された男性の無実を証明して得意げに喜んでいたナタリアと今回の彼女は、ちょっと結び付かないんだなぁ……あの時は被害者への気持ちがほとんど感じられなかったという点で。 ホレイショがダニーと並んで座って「君は独りじゃない」と語りかける場面、あの場面自体はすごく良かったと思うのだが、こうあっちでもこっちでも「虐待の過去」を持ち出されると、正直げんなり……。虐待/DV/殺し合い設定はベガスでもう2人も出てきているし(片方は子守からだけど)。ベガスとマイアミは別だといえば別なのだけど、こう連続するといい加減ウザいって気にもなる。 辛い過去を乗り越えて優しくなれる、というドラマの描き方はわかる。それは決して悪い話ではない。だが、トラウマを乗り越えなければ優しくなれないというわけでもないし、優しい人間にはかならずトラウマがあるというわけでもなかろう。ホレイショが子どもに優しいという設定はパイロットから一貫しているし、ここで今さら理由付けに虐待設定を持ち出さなくても十分に描けているのではないだろうか。単にロリショタ好きだからという理由ではダメなのだろうか(ダメだろ)。 文句ばかりだとアレなので、良かった点。カリーとウルフが宝石店でカップルと間違われて、「は?」てな感じにきょとんとしている所が可愛かった。やはりそんな風に見えるのかなぁ……カリーってば身を乗り出してショーケースをのぞき込んでいたし。でも、腰に警察バッジと銃をぶら下げてるんですけど。 それから、トリップがミラーに「君のDNAが検出された」と言う場面。検出した場所は "south of the border" だそう。「国境(境界線)の南側」という意味だけど、この場合は「ベルトの下」ってこと……よね。 :D --- //Yoko (yoko221b) 2007-04-22// [<>]