Law & Order - Season 5, Episode 17 ====== #105 Act of God ====== * 邦題:「ダイナマイトの夜」 * 脚本:Ed Zuckerman, Walter Dallenbach * 監督:Constantine Makris * 初回放映:1995-03-22 ---- //The cornerstone of the system is that it is better for 10 guilty men to go free than for one innocent man to go to jail.// ===== 事件概要 ===== ==== People v. Henry Chappel (判事:Eric Caffey) ==== 夜中の建設現場で爆発が起こり、ロッククライミングの練習をしていた少年が死亡する。爆発は事故ではなく、ダイナマイトを仕掛けたものとわかる。その現場では労働争議があり、工事を請け負っていたパリーは資金難の問題を抱えており、爆破事件によって破産を免れていたことがわかる。パリーは定住所を持たず現場のトレーラーに寝起きしていたが、現場から回収された物はファイルなどのオフィス用品ばかりで、パリーの私物は残っていなかったという。刑事たちは、パリーが爆発直前にたまたま私物をすべて撤去し、爆発時刻にたまたま眠れず散歩していたというタイミングの良さに疑いを抱く。 パリーの犯行を直接裏付ける証拠こそなかったものの、動機と状況証拠は十分であったため、パリーは逮捕される。パリーは無罪を主張し、ハンク・チャペルに聴取はしたのかと反論。ハンクはパリーの恋人クリスティンの夫だったが、刑事たちはクリスに夫がいることすら知らなかった。 調べてみると、ハンクは妻の浮気を知って怒っており、仕事がら爆発物の取扱い方法にも通じ、自宅を捜索すると爆弾の材料が発見される。その材料は実際の爆弾に使用されたものと一致し、今度はハンクが逮捕されて起訴される。 法廷でマッコイはブリスコーを尋問してパリーの逮捕が時期尚早であったと言わせ、またハンクを挑発して「パリーが死ねばいいと思った」という証言を引き出していく。ハンクは第1級放火、第2級殺人の両方の罪状で有罪の評決を受ける。 ==== People v. Arthur Palley & Christine Chappel (判事:Elizabeth Mizener) ==== が、その後ブリスコーが検事局を訪れ、パリーが爆発時刻に散歩に出かけ、その後戻って来ていないことに疑問を呈する。マッコイはそれを聞いてクリス・チャペルの電話を盗聴し、クリスとパリーの間で「検事が連絡して来た。バレたらどうしよう」「落ち着け、ハンクは有罪なんだから何も心配することはない」という会話が交わされていたことを知る。実はパリーが爆弾をセットし、クリスが自宅に証拠を仕込んでハンクに罪を着せていたことがわかり、マッコイはクリスとパリーの両名を逮捕。 だが弁護人は「電話の令状を許可する根拠が不十分」として証拠の排除を要請。判事は、同一事件ですでに別人が起訴されて有罪になっていることを知り、証拠を排除する。マッコイはハンクの有罪評決を撤回して釈放させようとするが、証拠にも証言にも手続きにも問題がないことを理由に却下される。ハンクを釈放するには、パリーとクリスの有罪を(通話録音を使わずに)証明するしかない。 マッコイは通話録音を別の理論に当てはめて、再び証拠として使おうとする。つまりクリスがパリーと共謀してハンクを罪に陥れたのではなく、クリスがハンクの共犯であることにして、ハンクを証言台に立たせようというのだ。ハンクがテープを聞いたことを知り、クリスは「パリーの計画だった」と認める。マッコイは第2級放火と第1級故殺で10年の実刑での取引を切り出す。 ようやくハンクの釈放命令が出され、パリーも弁護人を通じて取引を打診する。 ---- ===== 感想 ===== シーズン3「Jurisdiction(裁きの権限)」以来の冤罪事件だろうか。えらくとんとん拍子に証拠が見つかって話が進むなぁ~と思っていたら、やはり。チャペル家に証拠を仕込むことができたのは、普通に考えればクリスしかいないと思うのだが、ハンクはやはり奥さんの関与を信じたくなかったのかなぁ。爆弾の部品に指紋までは付いていなかっただろうから、弁護人が奥さん犯人説で陪審員を説得することも、やろうと思えばできたのだろうか? 「裁きの権限」の方でも、実は無罪だった最初の被告人がなかなか釈放されず控訴中という所で終わったが、今回も、いったん有罪の評決を受けたハンクはなかなか釈放してもらえない。違法に収集した証拠もなく、偽証した者もなく、手続きも適正に行われており、12名の陪審員がきちんと評議したうえで出した評決なのだから、今さら検事1人が「気が変わった」と言ったところでほいほい釈放するわけにはいかないだろう。ハンクが有罪になった裁判では「合理的な疑いが生じない」レベルはクリアしていると思うし。「無実の人間を1人牢獄へ送るより、10人の有罪の人間を釈放する方がましだ」という言葉は知っているけれど、犯罪者10人野放しってのも、それはそれで楽しくない事態だよね。 ハンクを釈放するには、パリーとクリスの有罪を証明するしかないが、2人に対して捜査しようとしても「ハンクがすでに有罪になっている」という理由で令状が下りない。というわけで、苦肉の策で考え出されたのが、証拠を別の理論に当てはめるという戦術。クリスがハンクの共犯ということにすればオッケーなのか? でも現実的に考えて、そんなわけないじゃん? ……と、何だか舌先三寸で丸め込まれているような気になってしまった。 ともあれ、最後には無実だったハンクが釈放され、無事に真犯人が罰を受けるという結末になった。シフは「死刑がなくて良かった」と言うが、現実にはこのエピ放送の少し前に、NY州では死刑制度が復活していたというから、これもすごいタイミングだったわけだ(その後、2004年に違憲判断が出てまた状況が変わっている)。 --- //Yoko (yoko221b) 2010-06-26// [<>]