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CSI: Miami - Season 3, Episode 4

#52 Murder in a Flash


You don't know what it's like to watch someone so beautiful be ruined by a drug.

事件概要

ダニー・クライナー殺害事件

ゴルフコースに、唐突に若者たちの集団が現れる。彼らは口々に “The best of all the lost arts” と言い、手にしたゴルフボールを投げつけ、また唐突に去って行った。ゴルフのプレイ中だった男は、ボールを片付けようとし遺体を発見する。遺体は十代の少年だが、そばには酒のビンがあった。鼻血を出しているだけで外傷はなかった。

謎の集団は「フラッシュ・モブ」といって、時間と場所を決めて集まり、何か変わったことをして逃げるという最近流行の遊びだった。思いついた誰かがメッセージを伝え、受信した者が別の誰かに伝えるという形で波及する。モブにはそれぞれテーマがあるという。

被害者は、膝に怪我をしてチタンの金具を入れていた。そのシリアル番号からダニー・クライナーという氏名が判明。高級住宅地に住み、パームクレストアカデミーという有名高校に通う生徒だった。フラッシュ・モブの参加者はその高校の生徒たちだった。

生徒たちのPDAをひとつずつ調べていくと、フラッシュモブのメッセージを最初に発信したは、ジャスティン・ギレスピーという生徒だった。ジャスティンは少し前にダニーと言い争っているところを見られていた。また、サラ・ミッチェルという生徒はPDAを提出しなかった。

ホレイショとイェリーナはサラの家へ向かう。一方、カリーとデルコはジャスティンの家へ向かうが、弁護士の父に阻まれ、あまり収穫は得られなかった。

ダニーの血液からは、デートレイプに使用されるガンマヒドロキシ酪酸(GHB)が検出されていた。現場にあったスコッチのビンからも高濃度のGHBが検出される。ハイになる量をはるかに超えていた。また、ダニーの下着に付着した口紅や、靴底の砂から、彼が化学の女性教師と関係を持っていたことがわかる。ダニーは教師の住宅に出入りし、テスト問題を盗んで同級生に売りつけていたのだった。「買い手」の生徒に聞くと、事件当夜、ダニーが試験問題を持って来る予定だったのに来なかったという。

ジャスティンの家のテラスにはゴルフ場の砂があったが、ジャスティン自身はモブに参加していない。カリーの説得でジャスティンはようやく口を開く。事件の夜ジャスティンは、ゴルフ場のコースに遺体があると、誰かが父親に話している声を聞いた。それで、遺体を見つけさせるためにフラッシュ・モブを発信したのだった。依頼人が誰かはわからなかったが、年配の男だったという。

カリーは学校の警備員からレポートを受け取り、2週間前にGHBが校長に没収されていたことを知る。校長のオフィスに保管されていたGHBの成分はダニーが摂取したものと同じだった。校長の娘ステファニーはモブに参加していないはずなのに、彼女の下着にはゴルフ場の砂が付着していた。また、ビンにもステファニーの指紋があった。ステファニーは、学校でカンニングなどの不正行為が横行しているというのに、教師たちは学校の体面を守るために見て見ぬふりをしたり、生徒とつき合ったりしているという状況がどうしても許せなかった。ダニーが試験問題を売ることを知り、それを阻止するためにダニーをゴルフ場に誘い出した。ただ彼を眠らせて試験問題を奪っただけだが、量が多すぎてダニーは死亡。ステファニーはそれを父親に話し、父親が弁護士に話し、ジャスティンがその会話を聞いてフラッシュ・モブを発信したのだった。

マドンナ・アリアス殺害事件

サラ・ミッチェルの家を訪ねたホレイショとイェリーナは、そこで薬物らしい白い粉を発見する。しかも、その袋には血がついていた。血痕は、サラ以外の女性のもの。行方不明者のデータベースと照合し、マドンナ・アリアスと判明。届けがあったのは前日で、パームクレストアカデミーとは無関係だった。売人の住所を聞いていってみると、そこにはマドンナの兄ラウル・アリアスがいた。部屋のクッションに血痕。外のゴミ箱の中に、マドンナの遺体があった。ラウルは妹が麻薬を持っていることに怒り、その薬をトイレに捨てて流してしまったという。

マドンナの死後、彼女のカードで誰かがガソリンを買ったことがわかり、イェリーナとホレイショが現場へ向かう。スタンドへ行くと男がイェリーナに話しかけ、「おれのカードを使って、あんたが現金で払う。半額でどうだ」と持ちかけてくる。イェリーナがバッジを見せたところで、すかさずホレイショが行く手をふさぎ、カードを没収。

マドンナはフィデルに「兄がトイレに薬を流してしまった」と言ったが、フィデルはそれをばかばかしい言い訳と受け取り、マドンナを殴り殺してしまった。フィデルは別の男に罪をきせようとするが、マドンナの顔の傷にあった皮の欠片は、フィデルの手袋のものだった。


感想

突然、どこからともなく現れる大勢の若者たち。無表情で同じ文言を繰り返し、ボールを投げて去る。カルト教団の集まりか? ゴルフ場に反対する環境保護グループか? と思ったら単なる遊びだった。フラッシュ・モブって突発オフみたいなものか。

皆が口々に言った台詞は、マーク・トウェインの “The best of all lost arts is honesty.” の引用だった。カリーがそれを調べてジャスティンと話す場面がとても印象深い。CSIの仕事は現場で証拠を採取し、その証拠から事実を読み取ることだが、そもそも証拠を現場にもたらすのは「人」であるということが伝わってくるから。その言葉の意味を知った時にカリーは、そして画面を見ている私たちは事件の性質を理解することになる。

そして、カリーがジャスティンに父親のことを話すところがまた良い。「弁護士の仕事は依頼人を守ること」であり、それをカリーは父親の姿から学んでいた。時に困ったパパではあるけれど、本来は良心的でしっかりした弁護士なのだろう。カリーの魅力は愛らしい容姿や可愛い声よりも、常にプロフェッショナルであることだと思う。だがそれを父から学んだ彼女が、父のためにそれを曲げてしまった(「愛の奴隷」)というのは、何と皮肉な。

このAプロットの方はカリーとデルコでほぼカバー。新人ウルフ君がほとんど登場しないのが寂しいな~。ウルフの採用が決まる前に書かれた脚本なのかもしれないが、後からでももうちょっと出番を作ってあげたら良かったのにと思う。そしてホレイショは途中から派生した事件の方へ。こちらの事件では、妹を麻薬に蝕まれ殺されてしまった兄を見るホレイショの表情が、なんとも痛々しい。

あなたにこの気持ちはわからない、そう言われたホレイショとそこにやって来るイェリーナ。その場にいた三人はそれぞれに愛する者を――妹を、弟を、夫を――麻薬によって失ったという同じ悲しみを抱えているのに、その気持ちを分かち合えないまま抱え込んでいる様子なのが悲しい。

ホレイショはラウルに、フィデルが妹を殺した動機を言えなかった。それは言えないだろう。ラウルが泣き崩れたのは、ただ妹が死んだことへの悲しみだったのか。それともラウルは気づいたのだろうか、自分の行動の結果だと――ホレイショの表情から「君が気の毒すぎて言えない」という気持ちを読み取ったのか。

あるいは、あの時のラウルはホレイショ自身だったのかもしれない。地面にくずおれ、ホレイショの手にすがって号泣するラウルの姿は、自分では声をあげて泣くことのできないホレイショの心の内を表しているようにも見えた。

でも、ホレイショとイェリーナのプチ囮捜査にはちょっと笑ってしまった。二人とも見事に警官に見えない。まるでヤクザとその情婦……いやいや、これは捜査のための演技なのよね! そうよね!


単語帳

Yoko (yoko221b) 2006-07-21