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CSI: NY - Season 8, Episode 1

#163 Indelible


事件概要

ショーン・ピーターソン

閉店後のバーに強盗が押し入り、金品を奪って逃走。逃げる際に、用心棒のショーン・ピーターソンが射殺される。巡査部長に昇進したダニーが制服警官を指揮して現場を封鎖し、フラックが刑事として事件を担当。マックは警察を休職して、9/11の犠牲者の身元確認を行う民間ラボに勤務し、CSIではジョーが臨時チーフを務めていた。

その夜は閉店後にも常連客だけでビリヤードなどをしており、強盗は金の他に客たちの携帯電話を奪っていた。店を出る時はすでに金を手にしていたのに、なぜわざわざショーンを射殺する必要があったのか。強盗が入る少し前に帰宅したバーテンのデヴォンは「黒人と白人の2人組の男がいた」と言う。

奪われた携帯電話は電源が切られていたが、その中には遠隔操作で電源を入れられる物があった。アダムが電源ONに成功し、2人組の居場所はあっさり判明。黒人のマイク・ホワイト(通称ブラック・マイク)と白人のマイク・ブラック(通称ホワイト・マイク)が逮捕される。

2人は強盗は認めたものの、ショーンの殺害は否定。所持していた銃は一致せず、嘘を言っているようにも見えない。ジョーは出入り口付近の血痕の形状に注目し、実験を繰り返した結果、ショーンがまず殴られて昏倒し、その直後に何者かがバーの中から外へ出て行ったことを突き止める。バーテンのデヴォンが嘘を言っていたのだ。

デヴォンは、ホワイト・マイクから麻薬を買っており、代金が払えなくなって強盗を手引きしたことを認める。最初の計画では誰も傷つけないはずだったが、2人組を入れるところで手違いがあり、ショーンに気づかれて思わず撃ってしまったのだという。拳銃は「用心のために」とホワイト・マイクから渡されたものだった。

事件は解決し、ラボの面々はブルックリン・ウォールの前で行われる追悼式典に参加する。


感想

最後の未解決事件を片付け、「そろそろ潮時か」と考えるマックの姿で終わった前シーズン。そのままシリーズ最終回でもいいような光景だが、その後めでたくシリーズ継続と決まった。シーズン8のプレミアは2011年9月。というわけで「2001年の同時多発テロから10年」という節目のエピソードが来るのは当然のことだろう。

このようなエピソードであるから、見ている私の視線も過去へ向かわざるを得ない。2001年当時、この番組はまだ始まっていなかったから、思い出が向かう先は必然的にシーズン1の第1話「まばたき」ということになる。それを促すように、OPの前には初期シーズンで使われていた旧ロゴの映像が挿入された。しかし……うーん。何と言えばよいのだろう、この違和感。8歩歩いて来たから8歩戻れば元の場所に戻るのかな、と思っていたら、いつの間にか斜めに歩いていたので違う場所に戻ってしまった、みたいな。

その最たるものがラストのビーチの場面だ。マックが、クレアと行くはずだったオペラのチケットを海に流す場面。情景としては悪くないけど、私としては「ビーチボールはどこへいったの?」と言わざるを得ない。

テロ事件の後、マックはクレアを失った辛さのあまり、彼女を思い出させる身の回りの品々はすべて処分してしまった。しかしひとつだけ、2人でビーチに行った時にクレアがふくらませたビーチボールだけは手放せなかった。クレアの息がまだそこに入っているから――。

「まばたき」でこの独白に涙し、シーズン1の世界を愛した私は、7回のシーズンを経てあの世界が遠くに隔たってしまっていることを改めて思い知らされる。

マック以外のメンバーたちも、あの日あの時どうしていたかを折にふれて思い出す。だが、こういう回想エピにありがちだけど、偶然に出会うシーンが多すぎだと思う。ダニーとドンがこの日初めて出会ったなんて言われても、あまりにも唐突だし、リンジーもわざわざNYまで来させることはないと思う。むしろ、遠く離れたモンタナで皆がどうしていたかを聞きたかった。そして、本人の登場は無理でもステラとエイデンの名前だけでも出してほしかった。

エグゼクティブプロデューサーで今回の脚本を担当するザッカリー・ライター氏は、このエピソードのラストシーンで、マックがクレアへの思いに区切りをつけて新しい関係に踏み出す可能性を示唆している。

上掲記事にある「過去にいくつかあった関係」というのは、ペイトンとかオーブリーのことだと思うのだが……あれは「マックの方から自分の周囲に壁を巡らせていた」のだろうか。私にはそうは見えなかったけど……まぁあの2人はキャラとしてあまり好きじゃなかったので、このまま消えるのならそれでもいい。で、新しい恋人が登場? まぁ、ウザくならなければそれも良いとは思うものの、今までの描写を考えると……うーん、ちょっと安心できない。

それはさておき。エピソードの内容に戻ろう。

記念式典の場面に登場する記念碑は、事件後の初動出動で命を落とした警官や消防士たちを追悼するための、実在する記念碑(The Brooklyn Wall of Remembrance)。この場面は実際に記念碑の前で撮影され、出席しているのも本物の遺族の方とのこと。ゲイリー・シニーズはこの記念碑の建立に大きく関わっており、ラストのスピーチなどは、シニーズが現実の式典で述べたとしても通じる内容になっている。

個人的には、俳優の活動や私生活とドラマの設定が重なりすぎるのは反対。俳優は俳優、役柄は役柄できちんと区別して世界観をしっかり作ってほしいと思う。だからマックが実はミュージシャンでもある、という設定(シーズン2「釘づけ」)も実は好きではなかった。

ただ今回のエピソードを見ていると、ゲイリー・シニーズとマック・テイラーはすでに不可分の存在になっているのではないか、とも感じられた。シニーズは主演俳優だけでなくプロデューサーでもあるので、ある程度役柄に侵食する部分があるのは避けられないのかもしれない。今回の追悼のように、役柄と矛盾せず広く受け入れられるものであれば、それも良いだろう。

さて、今回事件は一応発生しているものの、割と単純な事件でほとんど重みがなく、付け足し感が否めない位置づけ。マイク・ホワイトとマイク・ブラックという紛らわしい名前の2人組が登場するが、せっかくの設定もあまり活かされていなかった。もっと面白く利用できるはずなのに、惜しい。もういっそ事件なしでも良いのではないかと思ったくらいだ。

次回からは通常営業でマックもCSIに復帰するようだ。ダニーが巡査部長になり、今まで画面の背景にしかいなかった制服組にもスポットが当たるようになるのだろうか。今シーズンは話数が少なく、あまり派手な展開もなさそうだが、その分じっくりと楽しめるシーズンであってほしいと思う。


使用楽曲

Yoko (yoko221b) 2014-06-27