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Law & Order - Season 1

#21 Sonata For a Solo Organ


事件概要

People vs. Philip Woodleigh

公園のベンチで、腹部に傷を負った男ドリュー・マクダニエルが発見された。その傷はきれいに縫合してあったが、被害者は手術を受けたおぼえがないという。調べてみると、腎臓がなくなっていた。摘出してまだ24時間以内、手術の腕はかなりのものだったが、腎静脈が接合されていないため、発見が遅れていれば手遅れになっていた。

腎臓移植を希望する患者は透析を受けながら待機し、それは移植ネット(Organ Transplant Network)が全国的にモニタしている。また、ドナーは死亡した人間に限られるので、金で腎臓を売買するなどありえないという。また、移植後に拒否反応が出ても通常は薬で抑えられる。ただし、医師は薬で抑えられないほど強い反応が出る可能性も示唆する。その場合は、完全に適合する臓器が必要となる。

マクダニエルが襲われた後に行われた腎臓移植手術を調べると、臓器の出所が不明な手術が1件あった。その腎臓を移植されたのはグラマシー病院で、患者はメアリー・メリット、担当医はジェームズ・レバティだった。医師は、いつも通りに連絡を受けて手術を行ったと言う。「メアリー・メリット」は本名ではなく、匿名の患者(有力者の娘や人気スター)を扱う際の暗号だった。ローガンはこっそりと患者の口紅を持ち出し、薬物所持の前歴があることを知る。本名はジョアンナ・ウッドリー。不動産王フィリップ・ウッドリーの娘だった。ジョアンナは以前に2回移植手術を受け、前回は拒否反応で死にかけていた。

マクダニエルは別居中で、親権獲得の訴訟のため血液検査を受けていた。その検査を実施した機関では、患者は全員番号で管理され、名前はわからないはず。だが、被験者のファイルへのアクセス記録は、通常2回のはずだが3回あった。3回目のアクセスは、グラマシー病院の看護士エレイン・ヘイルの依頼だったという。ジョアンナの状態は相当悪く、一刻も早い移植が必要だった。マクダニエルの腎臓は、それ以上望めないほどの適合値を示していた。摘出手術に必要な麻酔機の業者に問い合わせると、レバティ医師が借り出していたことがわかる。連絡を行ったのはエレイン・ヘイル。グリーヴィとローガンは、ヘイルのアパートのゴミ箱から、大量の血のついたコットンを回収。2人は捜索令状を持っていたが、それは室内限定であり、ゴミは屋外にあったことから、ロビネットは難色を示すが、起訴を決意。

レバティ医師は、摘出はヘイルが行ったもので自分は無関係と主張するが、ヘイルはレバティ医師が摘出したと主張。レバティが縫合している間、ヘイルは腎臓を容器に入れていたので、腎静脈のことには気づかず、マクダニエルを死なせるつもりはないという言葉を信じて車椅子で公園に運んだという。ロビネットはレバティ医師の背後を探り、彼が何件も投資に失敗し、財産が差し押さえ寸前であることを知る。マクダニエルを運んだ車椅子には、マクダニエル、ヘイル、レバティの指紋があった。レバティはウッドリーの関与を証言することを条件に取引を申し出るが、ウッドリーはあくまでも、暴力的な手段を取るとは知らなかったと主張。さらに、レバティが逮捕された直後に、ウッドリーが彼の家を異常な高値で買い取っていたこともわかる。

検事はレバティがまだ何か隠していることを知り、取引は白紙にすると詰め寄る。すると、レバティはテープを出して再取引を申し出る。そこには「必要ならそいつを殺せ」というウッドリーの声が録音されていた。


感想

めずらしく、現実の事件ではなく都市伝説が元ネタになっている話。ブルンヴァンの “Encyclopedia of Urban Legends”によると、この都市伝説 “The Kidney Heist” の典型的なバージョンは「ある男が旅先で美女に誘惑され、モーテルで一晩をともにするが、目が覚めるとベッドは血だらけで腹部には新しい縫合の跡があった。病院へ駆け込んで調べてもらうと、腎臓が片方なくなっていることがわかる。摘出と縫合はプロの仕事で、腎臓はおそらくブラックマーケットに売られてしまったのだろう」というようなもの。

同書228ページには “The Kidney Heist furnished the plot of a televised thriller in 1991”(Kidney Heist は1991年にTVのスリラー番組にプロットを提供した)とあるのだが、それってこのエピソードのこと? この話が生まれたのは1991年(227ページ)だそうだが、このエピソードが放映されたのは1991年4月。脚本が書かれたのはいつなんだろう。都市伝説が元ネタなら、かなり早い段階で脚本に採用されたことになるが、むしろこのエピソードが元ネタでもおかしくないくらいのタイミングだなと思う。

【2012-05-06 追記】今回の脚本を書いた Joe Morgenstern が New York Times 紙に寄稿した記事によると、このエピソードは「誰も実物を見たことがない新聞記事」が元になっているそうなので、やはり都市伝説を取り入れたということで間違いなさそうだ。

刑事2人がゴミ箱から証拠を得たことで、検事が「令状が……」とか言っているのがちょっと意外な感じ。CSIなどを見ていると「ゴミは令状なしで持ち帰って良い」というのが当たり前みたいなので。ゴミは所有権を放棄した物であるし、ゴミ箱は屋外にあるから住居の侵害もしていないということだろうと思うのだが。これはネバダ(フロリダ)州とNYの違いなのか、それとも90年当時と現在の時代の違いなのだろうか。CSI:NYではどうだったかなぁ。

Yoko (yoko221b) 2007-05-14