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Law & Order - Season 7, Episode 22

#156 Past Imperfect


事件概要

People v. Sonja Harland (判事: Elizabeth Yee)

往年の人気モデル、クリスティン・サンドラーが自宅で殺害される。その日は彼女の誕生日で、隣に住むカメラマンのクレイグがパーティの準備をしていた。彼女が現れないので自宅を見に行って遺体を発見したのだった。

現場の血溜まりからは2人ぶんの血液が検出され、片方は被害者でもう片方はその血縁者であることがわかる。クリスティンと血縁があるのは息子のダグを除くと母親だけ。母親はアルツハイマーを患い療養施設にいた。

ブリスコーとカーティスは、クリスティンの金銭記録を調べ、2500ドルの小切手が現金化されていることを知る。処理を担当したのはソーニャ・ハーランドで、彼女は誰に支払いをしたか「身元は確認したはずなのに記録するのを忘れた」と言う。だがその後、クリスティンの母親の面会記録を調べたところ、ソーニャが面会に来ていたことがわかる。改めて事情を聞くと、ソーニャはクリスティンの娘だという。クリスティンは18歳で彼女を産み、養子に出していたのだ。

銀行の防犯カメラを調べてみると、ソーニャは犯行時刻に外出し、戻って来た時にはクリスティンのバッグを持っていた。彼女はそのバッグを、恋人で貸付担当のシルバーマンに渡していた。ソーニャの自宅からはクリスティンの衣服が発見され、彼女は殺害容疑で逮捕される。シルバーマンも事情を聞くため署に同行を求められる。

ソーニャは犯行を否定し、弁護士を要求。シルバーマンは開業こそしていないものの弁護士資格を持っており、ソーニャの弁護士であることを認める。シルバーマンはブリスコー刑事に対して「ソーニャから渡されたバッグには血まみれのブラウスが入っており、彼女は『母親が事故に遭った』と言った」と認めていたが、それは弁護人と依頼人の秘匿特権によって守られることになり、証拠から排除される。ソーニャ本人が「シルバーマンを弁護人だと意識していた」ことが重要であると認められたのだ。

ソーニャの所持品を調べた結果、前年に死亡した大富豪のハロルド・ランサーに関する大量の切抜きと、ランサーが死亡した病院からの手紙が発見される。ランサーは火葬されて灰はロングアイランドに撒かれていたが、シルバーマンは病院が彼の組織サンプルを保存しているかどうかを知ろうとしたのだ。おそらくクリスティンは、ソーニャの父親がランサーであると告げたものと思われる。ランサーは遺産をチャリティと妻と「子どもたち」に遺すとしており、どの子どもとは特定していなかった。ソーニャは親子鑑定を求め、病院に組織サンプルを提供してもらうためにクリスティンの宣誓供述書を必要としていた。

ソーニャは公判で自ら証言し、「遺産を要求するのは母が言い出したこと。母はまずダグに話し、理解してもらってから宣誓供述書にサインする予定だった」つまり自分に殺害の動機はないと述べる。

マッコイは、弁護人が依頼人の共犯者だった場合は秘匿特権の例外になることから、まずシルバーマンを逮捕させ、殺人の共犯ではなく軽犯罪に落とす代わりに証言を要求。シルバーマンは「ソーニャは母親がサインしないことですさまじい怒りを抱えていた」と認める。

ソーニャはようやく取引をのみ、真相を語る。彼女は施設に入れられたが、母親にてんかんの持病があったため誰も養女に欲しがらなかった。クリスティンはモデルになる前にコールガールをしており、ランサーは彼女の客だった。クリスティンはその過去を息子のダグに知られたくないために、言を左右にしてサインしようとしなかったのだ。ダグは両親が離婚した時に母親より父親を選び、母親とは親密にしていなかったというのに、クリスティンはダグのことしか気にしていない。ソーニャを娘と認めず、誕生パーティにも呼ばずに追い返そうとした。それで彼女を殺害したのだった。

鑑定の結果、ソーニャはラーソンの娘であることがわかり、彼女は5000万ドルを相続。シルバーマンは手数料としてそのうち1700万ドルを得ることになる。しかしダグが母親の不法死亡で2人を訴えることになるであろう。


感想

冒頭で「ナポレオン・ソロ」のイリヤが登場したので「キャーもしかして犯人?」とか思ったら、遺体の第一発見者だった。第一発見者が怪しいという原則もあるけど、それにしては演技過剰。案の定、被害者の親友で事件とは無関係。イリヤの時代からはさすがにかなりの年月を感じさせるが、NCISのダッキーよりはまだ若いな。

被害者は往年の人気モデル、クリスティン。現場の血液を分析した結果、クリスティン本人ともうひとり、彼女と血縁関係のある人間のDNAが検出される。現代のCSIならば「被害者のDNAプロファイルを差し引いて」となる所だが、ここでは「血縁関係があること」しかわからない。そして該当するのは被害者の母親(アルツハイマーで施設療養中)と息子(離婚時に別居して疎遠、関係修復中)だけ。というわけで息子に疑いがかかるのだが、この「血縁者のDNA」って当時の技術では男女の区別もできなかったのだろうか。犯人は女性だったので、男女の区別がつけば息子が疑われるはずがないと思うのだが……。

クリスティンはまだ十代の時に娘のソーニャを産んで里子に出していた。娘の父親は大富豪だったが、昨年に亡くなり、「自分の子ども全員」に遺産を残す(どの子どもに残すかは特定せず)という遺言を残していた。大富豪がこんな曖昧な遺言を遺して火葬されてしまったら、自称・息子や娘がわらわら沸いてくるのは目に見えているというのに。

その親子鑑定のためにクリスティンの宣誓供述書が必要になり、それをめぐる争いでソーニャが母親を殺してしまったというのが事の真相だった。クリスティンが供述書にサインしようとしなかった本当の理由を聞くと、ソーニャへに同情すべき所はあるなぁと思ってしまう。もちろん、だからって殺していいとは言わないけど。

トップモデルの母親と大富豪の父親という華やかな両親の間に生まれながら、施設を転々とたらい回し。養親に恵まれなかったのも、ソーニャ本人ではなく母親の持病への偏見のため。クリスティンは「一時期はドラッグにおぼれてどん底を味わったが、苦労してそこから立ち直った」という「負け犬ストーリー」を売り物にしているのに、本当に都合の悪い事実(コールガールをしていた過去)はひた隠し。息子の父親はDV男で、息子本人もあまりクリスティンを好いているようではないのに、クリスティンはいつも息子・息子・息子。ソーニャは存在すら認められず、誕生パーティにも呼んでもらえない。これはいくらなんでもひどすぎる。何年も前のクリスマスカードや、ケースワーカーからのバースデーカードを大切に保存していたという描写からは、ソーニャの孤独が痛いほど感じられた。

さて、今回も「弁護士と依頼人の秘匿特権」を理由に証拠が排除される場面があったが、毎回手を変え品を変えていろいろ考えるなぁ。今回はソーニャの協力者が実は弁護士だったという設定。正確に言うと司法試験に合格して法曹資格を得たものの、弁護士にはならず銀行に就職したということらしい。そういう状況なので本人も「ソーニャの弁護士」という自覚なしに取り調べに応じていろいろ話してしまったのだが、その内容が秘匿特権を理由に全部排除されてしまう。そんなのあり? と思わないでもないが、判事は「ソーニャがどう考えていたか」が重要であると判断する。何だかもう、うっかり取調べもできないよね。

Yoko (yoko221b) 2012-08-20