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Without a Trace - Season 3, Episode 9

#56 Trials


事件概要

失踪者:ピーター・デューセック

殺人事件の裁判で、陪審員を務めるピーター・デューセックが失踪。公判中に陪審員がいなくなった場合、補充陪審員がいなければ審理無効になるおそれがあった。その裁判では、審理中に被告人が興奮して証人や陪審員を脅すような言動をしたことがあり、72歳のデューセックは体調を理由に陪審員を辞めたいという意向を漏らしていた。

デューセックは失踪前に弁護士に連絡して遺言状を書き換えようとしていた。変更内容は、500万ドルと1枚の絵をある女性に遺すこと。弁護士は必要な変更を加え、あとは女性の氏名を聞いて書き加えれば良い状態にしていた。

ピーターの息子ロイは父の家でその絵を見ていた。ピーターはその絵について何も話したがらない様子だったが、ロイが画家の名と特徴を覚えて画商に問い合わせた結果、その絵は盗品のデータベースに入っていたという。第2次大戦中にユダヤ人の家からナチスの将校に奪われた絵だったのだ。その将校はクラウス・ラインハルトという人物で、戦後アメリカに移住したことがわかっていた。ピーター・デューセックも1950年代にチェコスロヴァキアからアメリカに渡って来ていた。ピーターがクラウス本人ではないかという可能性が浮上する。ピーターはまだ72歳(戦時中は子どもだった)なので、だとすれば年齢を偽っていることになる。

失踪する前、ピーターの家に配管工を名乗る怪しい人物が来たことがわかる。調べてみると配管工事などは行われておらず、自称配管工はナチスの戦犯を探すグループの一員で、以前にも戦犯を誘拐した前歴があった。ロイが画商に電話した後、画商から情報が漏れてピーターに捜索の手が及んだのだ。昔の写真から、ピーターがかつてヒットラー・ユーゲントの一員であったこともわかる。

だが、絵の元の持ち主の娘グレタ・コーエンを探し当て、状況は一変する。グレタは一家で収容所に連れて行かれ、ただひとり生き残って現在はNYに住んでいた。ピーターの正体はクラウスではなくグレタの幼友達で、前日に絵を持って訪ねて来ていた。一家が連行された後、ピーターは彼らの部屋で絵を見つけ、返すつもりでずっと保管していたのだ。最初は遺言を書き換え、自分の死後に絵が渡るようにするつもりだったが、気が変わって許しを請いに来たのだという。なぜなら、グレタの一家の隠れ場所をクラウスに教えてしまったのはピーターであったから。まだ子どもで、何もわからずにしたことではあったが、真相を知ったグレタは「許すことはできない」と言った。

グレタの話から、60年前のクラウス・ラインハルトの写真が判明する。その画像を加工して60年後の顔を作成してみると――それは、デューセックが陪審員を務めていた裁判に出廷した証人だった。現場で被告人を見たと証言し、その時デューセックは証人の正体に気づいたのだった。

現在はアルバート・メイヒューと名乗るクラウスの自宅に踏み込むと、そこにはデューセックがいた。クラウスに自首を勧めに来たが馬鹿にして取り合わないため、ナチの戦犯を追う組織に連絡し、彼をイスラエルへ連行させたのだった。ただちに空港に手配されるが、クラウスを乗せたと思しき飛行機はすでに飛び立ち、アメリカの領空外へ出た後だった。

裁判の審理無効は避けられない状況となった。再起訴して裁判をやり直すにしても、決め手となる証人がいなくなってしまったため、検事は「勝ち目がない」と判断する。


感想

公判中に姿を消した陪審員。陪審員が欠けたことにより、裁判は審理無効になる可能性が高くなる。被告人の素行は悪い。当然、裁判の審理無効を狙って被告側が何かしたのではないかと疑われるわけだが、息子の話から意外な事実が浮上。そこからさらに捻りが加わり、少しずつ真相が明らかにされていく、このストーリーはとても面白いと思った。「失踪する理由は失踪者の人生の中にある」という、久しぶりにこのテーマに沿った骨太の話で満足満足。

正義には時間がかかることもある――最後のヴィヴィアンの言葉。ならばそれを逆にして、たとえ時間がかかっても正義は行うべきである、と言うことは可能だろうか。

しかしそれにしても、第2次大戦が終わってから60年(初回放映は2004年だから59年か)。「オデッサ・ファイル」の頃に比べると隔世の感がある。21世紀の今になってナチの戦犯? と、最初は違和感を感じなくもなかったのだが、関連資料をめくってみて、そういえばまだ戦犯の追及は現実に行われているのだっけ、と思い出した。

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上に掲げたのはワルシャワ・ゲットー解体の有名な写真だが(スピルバーグは「シンドラーのリスト」の1シーンでこの写真の状況を再現していたはず)、この右端で銃を持っている若い兵士がごく最近になって戦犯として逮捕された、という話を聞いたことがある。最近になって逮捕される「戦犯」というのは、当時はまだ若い下っ端の兵士だった人ばかりであるせいか、それほど厳しい処遇を受けないことが多いらしいのだが、密告屋はどうなのだろう。

それと一緒に聞いた話では(ちょっと記憶が確かでなくてはっきりしたことが言えないのだが)、90年代にドイツや東欧で「実は自分はナチスの一員だった」あるいは「戦争犯罪に手を貸した」と告白する人々が次々に現れ、一種の告白ブームみたいな現象になったのだそうだ。そのような現象が起きたのには、いろいろな理由や背景事情があるのだと思うが、このエピソードもその延長線上にあったのだろうか。

あ~でもピーターおじさん、引き渡すのはもうちょっと待ってほしかった。せめて公判が終わるまで……時間のかかる正義も大切だけれど、今ここで行うべき正義も大切よ! あの被告人(有罪の可能性がひじょうに高い)を野に放ってしまうことの影響をもう少し考えてほしい。

でも被告人のあの様子では、評決が有罪でも絶対に控訴しそうだからなぁ……何年かかるかわからない、と焦ったのだろうか。

それにしてもこの殺人事件の方、何でこんなにギリギリの状況だったのだろう。陪審員が欠けた場合に備えて補充陪審員(alternate jury)が何人か選ばれているはずなのだけど。被告人が脅しまくったせいで陪審が何人も交代して補充員がいなくなり、ぎりぎりの人数しか残っていないという状態だったのだろうか。

検事は、メイヒュー(クラウス)が出廷できないので勝ち目はないと思っているようだけれど、彼はすでに宣誓して証言しているわけだから、その証言内容は次の裁判で(判事が許可すれば)証拠として使える可能性があるはず。証人が死亡、病気、州外への転出などで出廷できなくなった場合に備えての規定があると、Law & Order では言われていた。反対尋問ができないから証拠能力が限られてしまうということなのだろうか。それにしてももう少しねばってほしい。

Yoko (yoko221b) 2007-12-31