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lola:12_el_sereno

#12 El Sereno

  • 邦題:「エルセリーノ」/「ラテン系不動産射殺」
  • 脚本:Peter Blauner
  • 監督:Jean de Segonzac
  • 初回放映:2011-06-20

事件概要

アルマンド・ベラ他5名

住宅ローン仲介業者のオフィスが襲われ、社長のアルマンド・ベラと社員5名が死亡。社員の財布や時計が盗まれていたが、盗品は捨てられており、強盗目的ではないと思われる。ローンの申請書類に虚偽があり、銀行とトラブルがあったことがわかり、犯人の本当の目的はその隠蔽ではないかと思われた。生き残った社員を調べるため、アル・ヘイズという社員の恋人が勤める保険会社聞き込みに行った刑事たちは、そこで故障したシュレッダーに注目する。ベラのオフィスで使われているファイルと同じ色の紙片が中に詰まっていたのだ。

アル・ヘイズはベラの会社で唯一のアフリカ系で、社内で孤立していたという。最近は業績を上げていたというが、ローン詐欺の疑いがあり、告発か解雇を恐れて事件を起こしたのではないかと思われた。また、ヘイズは以前に勤めていた会社が強盗の被害にあってからPTSDを訴え、護身用の銃を欲しがったこともわかる。ヘイズの自宅からは、事件に使われた物と同じ9ミリ弾が発見される。

その後、ヘイズが元妻の家で子どもを人質にして立てこもる。ウィンターズの説得に応じてヘイズは子どもを解放し、その場で逮捕される。

ヘイズは起訴され、デッカーが事件を担当する。弁護側は人種差別を主張し、捜査員の個人情報の閲覧を求める。デッカーは「向こうが差別を主張するなら、こちらは『差別が彼を犯行に駆り立てた』と主張しよう」と決める。

だがゴンザレス警部補が黒人に乱暴な取調べをして「権力を感じ、全能になった気がした」と述べている動画が公開されて事態は一変。弁護側は、ゴンザレスが証拠を一時保管していたことを指摘し、信用性に欠けると主張。判事は人種差別を糾弾する世論を意識し「この事件では差別的な汚点はいっさい許されない」として、書類片も、それに基づいた捜索で得られた証拠もすべて排除する。

刑事たちは他の証拠を探すため、ヘイズが立ち寄った公園を大々的に捜索して、9ミリ弾の弾倉を発見。ヘイズの指紋が検出される。これは独自に得られた証拠であるため採用が認められるが、同時に弁護側の主張に応じて、警部補の映像も証拠として採用される。

ゴンザレスは映像が事実だと認めるが、それは編集されたものであり、彼女が自分の行動を悔いて謝罪したこともちゃんと述べたと言う。だが、いつどこで話したものかについては一切語ろうとしなかった。デッカーは、証言の予行演習に来たウィンターズから事情を聞きだし、ゴンザレスの自宅に出向いて頼み込む。

ゴンザレスはデッカーの説得に応じ、ようやく証言台に立って事情を話す。それは同性愛者の会合で新人警官たちに対して行ったスピーチだった。彼女は、偏見に立ち向かうには、まず自分自身の偏見と向き合わねばならないということを言うために、あえて自分の汚点を公表し、その後後悔して上司に報告し、謝罪したことも述べていた。黙っていたのは、同性愛を公表していない警官のプライバシーと、彼女自身の幼い息子を守るため。だが、母親が差別主義者であると言われれば、結局はいじめにあってしまう。それならば、同性愛者と言われる方が良いからと公表に踏み切ったのだった。

編集前の動画でゴンザレスの話は裏付けられ、ヘイズは有罪となり死刑判決を受ける。


感想

不正を暴かれそうになった社員がそれを隠蔽するために殺人事件を起こし、逮捕されたら「人種差別」を持ち出してごまかそうとする――という話は本家にもあった。また警部補の動画が取りざたされるのはO.J.シンプソン事件が元ネタかと思わせる。なので、話の流れ自体にはそれほど新鮮味は感じられない。だが面白い。今までのところ、私にとってはこれがLOLAのベストエピソードだ(「バローナ川」が僅差で2位)。

普段あまり表に出てこない警部補の個人的なストーリーが描かれ、また珍しく検事が2人とも登場し(メインはデッカーだが)、地方検事のハーディンもいい人の役回り。LOLAがフルシーズン採用されず、当初の予定どおり13話で終わっていれば、これがシーズンフィナーレになったのではないだろうか。そしてそうなっていればシーズン2や3があったかも……と、見た時はそう思ったのだが、フルシーズン採用が決まったのは10月なので、その時点でここまで脚本が書かれていたかは微妙かも。どちらにしても今さら言うことではないが、やはり惜しいことは惜しい。前回の「プラマーパーク」もそうだが、閉店セールで放出するには出来が良すぎると思う。証言台で真摯に語る警部補の姿には胸を打たれたし、尋問するデッカーも目が潤んでいた。

米国ドラマでは、人種問題は避けて通れない問題なのだろう。“Murder One” で弁護士が「ここはLAだ、何でも人種問題になる」と言っていたことを思い出す。本家の警部補も人種的マイノリティで女性だが、こちらはヒスパニック、女性、同性愛者という三重のマイノリティ性を抱える存在だった。そしてその警部補を信頼している部下のウィンターズが白人男性で既婚という対照的な配置なのも面白い。ウィンターズももうすっかり馴染んで、コンパスさんには見えなくなった。

タイトルのエルセリーノは、事件の舞台になった会社がある地区かな? 位置はダウンタウンの北東。

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Yoko (yoko221b) 2013-12-01

lola/12_el_sereno.txt · Last modified: 2024-03-09 by 127.0.0.1