#37 Mission Accomplished

"We fight on the lie." - Slim Charles

 ストリンガーの殺害現場。グレッグスとマクノルティは力なくストリンガーの遺体をただ見つめるばかりだった。その後、マクノルティはストリンガーの自宅に入り、美しく整えられたインテリアや、本棚に並んだアダム・スミスの著作を見て驚く。ストリンガーの部屋からは不動産の書類や大学の論文とともに、大量のチップが発見された。ストリンガーは電話機のチップを交換することで、次々に番号を変えていたのだった。

 バークスデイル組の者たちは、マーロの仕業と思い「やり返そう」と息巻いていた。エイヴォンは「これはマーロとの抗争とは無関係のことだ」と言い、縄張り争いの抗争は間違いだったと気づくが、スリム・チャールズは「戦争が始まったらもう後へは引けない。誰が何をやったかは問題じゃない。嘘なら嘘のために戦うまでだ」と言う。

 マクノルティはコルヴィンから呼び出され、エイヴォンの潜伏先の住所を受け取る。コルヴィンは明言しなかったが、通話の痕跡から情報源がストリンガーであることは明らかであった。ストリンガーが組織を裏切ったのであれば殺害も説明がつく。エイヴォンは電話を使わないので、盗聴で尻尾をつかむことは困難と思われた。ダニエルズは、できる限り盗聴を続ける一方で、同時に隠れ家の捜索令状を取っていつでも強制捜査できるよう準備を整える。

 ハムステルダムに取材用ワゴンが乗りつけ、レポーターとカメラクルーが降り立つ。市議会のカルケッティとグレイはマイクを向けられ「市議会は何も知らされていなかった」と市長のリーダーシップを糾弾。その模様はTVで生中継されていた。市長は窮地に立たされ、バレルは、市長の立場を守る代わりに自分の総監としての地位保全を要求する。

 市長はその要求をのみ、バレルからロールズへ指令が伝えられ、ロールズの指揮のもと「ワルキューレの騎行」を鳴らしながら警察の大部隊がハムステルダムへと押し寄せる。その場にいた売人や客たちは根こそぎ逮捕。誰もいない廃屋には、過剰摂取で死亡したジョニー・ウィークスの遺体がネズミとともに残されていた。

 スリム・チャールズはマーロを発見し、それをエイヴォンの側にいるシャムロックに伝える。その通話はもちろんモニターされており、MCUは直ちに体制を整え、エイヴォンの隠れ家を急襲して全員逮捕。マクノルティはエイヴォンに捜索令状を見せる。そこには情報提供者としてストリンガーの名が記されていた。

 コルヴィンはバレルの横槍で天下り先を失い、さらに警部に降格されて職を退く羽目になった。市長はバレルを更迭しない代わりに、自分の盟友であった市議パーキンスを手放さねばならなくなる。そのことは、対立候補マーラ・ダニエルズの市議への道を開き、ダニエルズはもはや「夫」としてマーラに協力する必要もなく、警視に昇進したうえにパールマンとも堂々と交際できるようになった。

 市議会ではグレイとカルケッティが「ハムステルダム」問題を追及。バレルは全責任をコルヴィンに負わせ、ハムステルダムの存在が発覚してすぐに動かなかったのは、盗聴によるMCUの捜査を妨害しないため、と言い逃れて市長を擁護した。だがカルケッティは「誰が何をしたか、誰が責任を取るかが問題ではない。問題は、我々が西ボルティモアの犯罪や貧困といった現実から目を背けてきたことだ」と大演説をぶつ。グレイはカルケッティもまた自分と同じく市長になるつもりだと気づく。

 ハムステルダムは解体され、バークスデイル組の主だったメンバーは軒並み逮捕されてしまったため、マーロはストリートでの商売を再開する。そのため、デニスのジムに来ていた少年たちも売人の仕事に戻ってしまう。マクノルティはビーディー・ラッセルの元を訪れる。ダニエルズはマクノルティにチーム残留を申し出ようとするが、マクノルティはそれを断り、ウェスタン地区の警らに異動。オマーはストリンガーを射殺した武器を港に投棄。エイヴォンの公判にはマーロが傍聴に訪れる。そして瓦礫の山となったハムステルダムの跡地では、新しいパートナーを得たバブズがコルヴィンと言葉を交わしていた。

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 ハムステルダムの処遇をめぐるパワーゲームの描写がすごく面白い。終盤のエピソードは、ただ「すごい」「すごい」と思いながら見てしまった。市議会と市長と警察の三つ巴(三すくみ?)の駆け引きがすごい。その余波がマーラへ、さらにダニエルズとパールマンに及んでいくところもすごい。少しずつ進めて来たストーリーが転機を迎えて一気に展開していく怒涛のスピードが、くどいようだが本当にすごい。

 ハムステルダム解体の指揮をとるロールズさんは、意外と言っては失礼だが意外にかっこいいですな! ここで「ワルキューレの騎行」を鳴らしつつ大部隊で押し寄せるというのは、もちろんコッポラ監督「地獄の黙示録」の隠喩であろう。そういえば何年か前、「地獄の黙示録」に影響を受けた警官(アメリカのどこか)が同じように「ワルキューレの騎行」を鳴らしながら犯人を追跡している――という話を、海外ニュースか何かで見た記憶があるのだが。ただしそのニュースの映像は、白バイ1台だけで音楽を鳴らしているので、単に変な警官にしか見えなかったが。

 今シーズンのストリートは本当に戦争状態だった。このエピソードのタイトル "Mission Accomplished" もイラク戦争を意識したものとか。エピグラフになったスリム・チャールズの台詞もそうだよね。

 そしてマクノルティには何やら転機が来ているようだ。これは3話くらい前のエピソードでも、フリーモンとの会話で少し示唆されていたかな。目前の事件だけを追いかけて俺様街道まっしぐら、事件を追っていない時はただの飲んだくれだったマクノルティ。ドラマの主人公にありがちな主張(暴走)キャラかもしれないが、周囲のフリーモンやプレッズが着実に変わっていったのに比べて、マクノルティはどうも成長しないキャラだなぁという印象だった。だが、長年の敵だったストリンガーを失い、エイヴォンも収監されたことで何か感じるところがあったのだろうか。制服姿で街を歩き、住人たちと談笑するマクノルティは、前回のタウンミーティングの場面で言われていた「地域に密着したお巡りさん」になろうとしているようにも見える。制服はいまいち似合っていない感じだけど。

 その横でキーマ姐さんが入れ替わるようにマクノルティ化現象……今シーズン、ダニエルズに対してストリンガーの捜査を強硬に主張する姿もそうだったが、今回はシェリルの目を盗んで女と浮気とは。次シーズンはどうなっちゃうんでしょうか。

 そしてプレッズは……実はHBO公式サイトのキャストのページを見た時にどうなるかわかってしまった。他にもネタバレ要素があるので(市長選挙で誰が勝つか、とか)このページは要注意ですわよ。

 それはそうと冒頭の死体役の人(ストリンガーのボディガードの方)、息しすぎ……あんなに胸が上下してもNGではないのね。

2008-01-22
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