映画「ピエロがお前を嘲笑う」

投稿者: | 2015-11-10

このところ、ドイツ映画を続けて見る機会がありました。「ピエロがお前を嘲笑う」「顔のないヒトラーたち」「ヒトラー暗殺、13分の誤算」です。まとめて感想を上げようかと思いましたが、今回は「ピエロ」だけにしておきます。これはネタバレしないと感想を書きにくいですから。

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内気で目立たないがハッキングの才能はピカイチの青年ベンヤミンが、好きな女の子のために不正アクセスを試みて逮捕され、それがきっかけで仲間と出会ってサイバースペースにのめり込んでいく。次々に「難関」を落とし、最後に難攻不落のユーロポールに挑むが……。

ありがちなキャラ設定とストーリーだな、主人公の成長物語になっていくんだろうな……とか思っていると、途中でどんでん返し。それ自体は面白かったと思いますが、「二転三転する驚愕の結末」とか「トリックは100%予測不可能」とか、宣伝文句が煽りすぎ。そこまで言われると、見る方も身構えてしまいますから、「もう1回ぐらいひっくり返されるんじゃ?」と思っているうちにエンディングが来てしまいました。

以下、ネタバレを交えつつ感想とツッコミを書いておきます。結末までネタバレしていますので、ご注意ください。

映画館で一度見ただけなので、記憶違いや見落としがあるかもしれません。これはDVDで細部に注目しながらじっくり見た方が良い作品かもしれないですね~。Huluに来ないかな。


良かった点は、「ハッキング」の描写が面白かったところかな。この手の話は「キーボードでカタカタ」やるだけで何でもできてしまう、というのがありがちですが、ここではマシンルームへの「物理的な侵入」と、アクセスできる人間をだます「詐欺の手法」が重視されています。まぁ、そんなにうまくいくかな~? と思う所もありますけど(警備員をだます場面とか)。しかしどんなに高度なセキュリティシステムを組んでも、ウィークリンクはやはりアナログな、低水準の(よりハードウェアに近い)部分にあるのだという所は説得力があります。

気になった点は、やはりまずラストですね。いったんは「ベンヤミンは解離性同一性障害(DID)で、彼の言う『仲間』たちは彼自身の別人格」ということになったものの、それは捜査官ハンネをだますために仲間と仕組んだ芝居。まんまと別の身元を手に入れた彼は、姿を隠していた仲間たちと合流して船の上――というラストでした。

この「仲間たち」の登場がすごく唐突だったので、「本物? それともまだDIDのままで他人格たちが復活したのか?」と思ってしまいましたが、それ以上の種明かしもなく終了。

このあたり、わざとハッキリさせないまま観客に「投げた」のかもしれませんが……どちらにしても「だから、何?」と思ってしまうような終わり方で。仲間たちが本当に実在するなら、警察のベテラン捜査官を騙しおおせた! という痛快さがもう少し欲しいと思うのです。

(ハンネがベンヤミンを逃す時、背後に小さくピエロの姿があったらしいですが、それは見逃がしました。)

ハンネたちの捜査も、何だか中途半端です。マリには聞き込み捜査をしていましたが、マックスや仲間たちの身元をしっかり調べたのでしょうか? ベンヤミンは「マックスとは社会奉仕活動で出会った」と話したのですから、当然その記録は洗っていると思うのですが……。

彼女がベンヤミンに同情して逃亡させた理由もよくわかりません。昔流産した子が、生きていればベンと同じ年だとか、そういう事情があったのでしょうか。この時、ハンネはベンヤミンがDIDであると思っていたわけですよね? その彼を治療もせず放り出してしまうって、何だかすごく無責任な行動に思えます。なので、何か裏の意図(泳がせて仲間や別グループと接触させるとか)があるのかなとも思っていました。

ベンヤミンの憧れだった「MRX」の正体も「あれで終わり???」って感じですよ。あまりにあっけない。どうせならMRXもベンヤミン自身だったとか、MRXというのは警察が作り上げたバーチャルな潜入捜査官だったとか、実はベンヤミンのお祖母ちゃんだった!! とかいうオチがほしかったと思います。

そんなこんなで。これはやはりトリックやどんでん返しを賞賛する煽り文句でやり過ぎてしまったのが良くなかったのではと思います。ハリウッドリメイクが決まっているそうですが、オチとかどうするんでしょうね? オリジナル作品をすでに観ている観客が多いわけですから、まったく同じオチにはしないのではないか……と期待していますが。