三菱一号館美術館「オルセーのナビ派展」

投稿者: | 2017-02-15

先週のことですが、東京・丸の内にある三菱一号館美術館(長いので以下「MIMT」)で開催された「オルセーのナビ派展」ブロガー内覧会に参加させていただきました。ここの内覧会はいつも人気で、抽選に外れることもあるのですが、今回は運よく当選。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!

「ナビ派」の名前と時代は何となく知っていましたが、では「ナビ派」って具体的にどういう派? ……という疑問が解けて近代の西洋美術史の流れがしっかりと「つながる」感触のあった展覧会でした。まだ2月ですが今年のベストテン入りは確実な予感がしています。

オルセーのナビ派展
オルセーのナビ派展(公式サイト)

さて今回の内覧会は、ショップの紹介から始まりました。

MIMTの特設ショップはいつも展覧会に合わせたテーマで内装も凝っているのですが、今回は「ナビ派入門」あるいは「ナビ派の学校」をイメージして黒板が使われています。

ナビ派ショップ1

黒板にはこの展覧会を監修されたオルセー美術館のギ・コジュヴァル館長のサインがあるのですが、そこに長年のお友達であるMIMT高橋館長のサインが加わりました。生サインです。

ナビ派ショップ_サイン1 ナビ派ショップ_サイン2

注目商品は「塗り絵バージョン」とセットになった2枚組のポストカード。1枚は作品をそのままポスカにしたもので、もう1枚はモノクロの線画です。これは、セリュジエがゴーガンの教えに従って大胆な色使いの《タリスマン》を制作したことにちなんでいるとのこと。後のお話に出てきますが「色彩」はナビ派を説明する重要な要素です。

ナビ派ショップ3

ポスカの他にも、ワインやフランスの食材、古い版画など。食材の使い方(レシピ)の説明がパネルになっています。これを写真に撮って見ながら使えば良いわけですね。

ナビ派ショップ2 ナビ派ショップ4

写真を撮っているうちに閉店の時間になってしまいました。この後は「青い日記帳」TakさんとMIMT高橋館長のギャラリートークです。

ギャラリートーク

お話のポイントは展覧会の観賞ノートにメモっておきました。

@yoko221bが投稿した写真

今回は「ナビ派」を中心に取り上げた国内初の展覧会ですが、世界的にも「ナビ派展」はあまり例がなく、近年になってようやく再評価されてきたとのこと。なかでもオルセー美術館のコジュヴァル館長はナビ派・ヴュイヤールの専門家で「ナビ派age」の推進者だそうです。そしてこの展覧会は、コジュヴァル先生が自ら作品を選定された、トップレベルの「ナビ派」展! オルセーとMIMT、両館長の長年の交流があって実現した展覧会なのですね。

「ナビ派」作品の特徴はまず、「斬新な色使い」と「平面的な空間構成」。絵画を構成するこの二大要素(色と空間)において、西洋絵画の伝統を打ち破る革命的な作品を彼らは次々に発表していきました。それには、遠近感を排して平面的に表現された浮世絵の影響が少なからずあったとのこと。

今まで立体を平面上に、あくまで「立体的に見えるように」再現してきた西洋絵画。当時としては斬新だった印象派も、この伝統の延長上にあるものでした。ナビ派は、そのような空間の制約を脱し、絵画が「平面である」ことに向き合い、やがて装飾性を重視するようになっていきました。

そして「日常と不条理」。作品の多くは家族や子どもといった身近な生活風景をモチーフにしています。それに上記の要素が加わると、絵本のような「ほっこり」した可愛さを感じさせる……のですが、作品によっては「何か変だ?」と観る者を不安にさせるものも。特にヴァロットンです。室内の調度品が微妙に歪んでいたり、何かの予兆のような暗い影が迫っていたり……。

これらのナビ派作品は、後のフォービスム、キュビスム、そしてシュルレアリスムの出現を予感させるものでした。先行する印象派とこれらのムーブメントの間にナビ派を置いてみると、流れがつながって「パズルのピースがはまる」感覚が!

印象派なら印象派、キュビスムならキュビスムだけ注目して見ていてもなかなか気づかないことですが、ナビ派には動いていく「時代の流れ」を感じさせる要素があるような気がします。

そして日本の浮世絵などから影響を受けた画面構成は、日本的な感性ともよく親和するのではないか? というお話でした。

この後は、順番に展示風景などをご紹介します。

展示は

  1. ゴーガンの革命
  2. 庭の女性たち
  3. 親密さの詩情
  4. 心のうちの言葉
  5. 子ども時代
  6. 裏側の世界

の全6章構成。

展示風景1

ナビ派の特徴である「色彩」はゴーガンから始まったのですね。ゴーガンといえばタヒチ、という知識しかありませんでしたが、昨年の「ゴッホとゴーギャン展」で他の作品も見て印象が改まりました。しかし「ゴーガン」と「ゴーギャン」どちらかに統一したいのですがどちらが良いのでしょう。

展示風景2

浮世絵など日本美術の影響も受けている彼らのこと、その周辺の資料も展示されています。

展示風景3

日常の平穏な風景と、そこに隠された不穏な気配。ヴュイヤール《エッセル家旧蔵の昼食》(向かって右)は日常の何気ない食事風景のようですが、人物の間の微妙な距離感や視線を合わさないところなどに現実の彼らの亀裂が表現されているそうです。ヴァロットンの室内も、何だか変な感じに歪んでいて、後の時代のシュルレアリスムを連想させます。この向かい側にかかっているボナールの裸婦も、暗い影のようなものが忍び寄っていて不気味。

展示風景4

三菱一号館のレトロな洋風インテリアにぴったりですよね~。

展示風景5

最後から2番目の部屋では、ヴュイヤールの《公園》の展示方法に注目。周囲をぐるっと囲むような展示方法ですが、これがヴュイヤールが目指していた「本来の」展示の仕方なのだそうです。風景の中に立っているような気持にさせられます。

展示風景6

屏風を使った作品もあります。空間構成を重視している彼らのことですから、平面でありながら立体的な要素を持つ屏風という素材を用いたのは、むしろ当然のことかもしれません。単なる物珍しさや日本趣味ではなかったと思います。

そして写真は撮っていませんが、ルドンの《グラン・ブーケ》も展示されています!

5月21日(日)まで。

図録は電子版もあります。