国立西洋美術館「シャセリオー展」

投稿者: | 2017-03-05

国立西洋美術館で開催中の「シャセリオー展」、開幕前日に内覧会に参加させていただきました。

シャセリオー展
シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才

内覧会というと、今までは「ブロガー内覧会」といって閉館後に特別に見せていただくというイベントが多かったのですが、今回は「プレス内覧会」です。プレス関係者以外は先着順だったのですが、平日昼間(しかも月末)の開催だったせいか、運よく応募に間に合いました。

さてこの展覧会、主人公はテオドール・シャセリオー。19世紀前半のフランスで活躍したロマン主義の画家です。11歳でドミニク・アングルへの入門を許されたという早熟の天才で、「美術界のナポレオンになるだろう」と言われつつも、37歳という若さで病死してしまいました。

シャセリオーという画家の存在を知ったのは、2013年に東京都美術館で開催した「ルーヴル美術館展」が最初でした(その時の記事はこちら)。この観賞会でいただいたクリアファイルがシャセリオーの作品で、今も愛用しています。

今回の展覧会は、次のような5章構成。

  1. アングルのアトリエからイタリア旅行まで
  2. ロマン主義へ 文学と演劇
  3. 画家を取り巻く人々
  4. 東方の光
  5. 建築装飾 寓意と宗教主題

以下、順番に内容をざっとご紹介したいと思います。会場内の写真は、展覧会主催者様からご提供いただいた公式写真です。


I アングルのアトリエからイタリア旅行まで

ここは、シャセリオーの自画像、アングル先生の指示で描かれた習作など。自画像は1835年の作品ですから、当時16歳ですね。シャセリオーの自画像はほとんど残っておらず、貴重な作品とのこと。その近くにはシャセリオーのパスポート(1856年)が展示されています。当時のパスポート、当然ながら写真はなく、身体特徴は文章で書かれています。「禿げている」なんて書かれていてお気の毒。まだ37歳だったんですよ。

II ロマン主義へ 文学と演劇

このコーナーは神話・伝説や文学を題材にした作品が中心です。神話ではアポロンとダフネの物語や、ウクライナの英雄マゼッパを描いた作品など。文学ではシェイクスピアを愛好していたとのことで、『ハムレット』や『オセロ』を題材にした連作版画もありました。版画好きな方は、観賞前にあらすじをおさらいして行くと良いかも。

この系統は、やがてギュスターヴ・モロー、オディロン・ルドン、シャヴァンヌなどの象徴主義へと受け継がれていきます。

泉のほとりで眠るニンフ

↑この《泉のほとりで眠るニンフ》は、舞台装置を思わせるレイアウトで御開帳。神話に登場するニンフを題材としつつも、身体の下に敷かれたドレスや体毛の表現などがリアルというか生々しく、当時としてはかなりきわどい表現だったようです。モデルのアリス・オジーは当時シャセリオーの愛人でもあり、現実でも何やらスキャンダラスな話があったとか……。

III 画家を取り巻く人々

メインビジュアルとなっている《カバリュス嬢の肖像》他、画家と親しい人々の肖像画。有名どころでは『アメリカのデモクラシー』等の著書で知られるアレクシ・ド・トクヴィルの肖像がありました。家族ぐるみで親しくされていたそうです。

カバリュス嬢は確かに美しいし、メインビジュアルにふさわしい素晴らしい作品ですが何だか完璧に美しすぎる気がして(モデルご本人も評判の美人だったそうなので、これはこれで写実なのでしょうが)、肖像というより神話の女神像のよう。肖像画として見るなら、上記のトクさんや外交官のドサージュさんなど男性モデルの方が、特徴が個性的に表されていて面白いなと感じました。

カバリュス嬢の肖像

ランシクール伯爵夫妻

IV 東方の光

1846年のアルジェリア旅行でのスケッチと、帰国後にこれらを基に制作した作品、そしてドラクロワやルノワールなどの「オリエンタリスム」絵画の作品が展示されています。以前にシャセリオー作品を見た「ルーヴル美術館展」は地中海をテーマにした展覧会で、ここにあるようなエキゾチックな作品が展示されていました。

コンスタンティーヌのユダヤ人街の情景

V 建築装飾 寓意と宗教主題

ここでは会計検査院の壁画や教会の装飾、そして晩年の宗教画など。壁画は1871年のパリ・コミューンで破壊されてしまい、現物を見ることはできません。習作やタペスリー、そして廃墟の中から作品(の一部)を救出した過程や壁画の位置などを解説する映像資料など。


↓これは「シャセリオー展」の観賞ノートです。展示会場はB2Fのみで全体にコンパクトな感じでしたが、入り口を入った所の壁に「窓」があって教会を思わせるような作りになっており、向こう側(「V」のコーナー)にある宗教画パネルがちらりと見えるような仕掛けになっていました。上に述べたような「舞台装置」もあり、レイアウトが凝っているな~と感じました。

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時間の限られた内覧会ではゆったりと拝見できなかった所もあり、また新館で開催中の「スケーエン」展も見たいので、近々自腹で再訪したいと思います。