三菱一号館美術館「レオナルド×ミケランジェロ展」

投稿者: | 2017-07-15

三菱一号館美術館で開催中の「レオナルド×ミケランジェロ展」のブロガー内覧会に参加させていただきましたので、今回はそのレポです。主催・運営の皆様ありがとうございました!

公式サイト: http://mimt.jp/lemi/

※会場内の写真は、許可を得て撮影・掲載しています。

三菱一号館美術館といえば、明治時代に建てられた洋風建築(の復元)が有名で、展覧会も同じ時代のヨーロッパや日本の美術作品が中心という印象がありましたが、今回は時代をぐっと遡ってルネサンスです。イタリア・ルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティの作品を並べて比較してみるという展覧会。

この両者を並べて比較するという展覧会は意外にも珍しく、日本では初めて、また世界的にもあまり例がないとのこと。ライバルとして有名なお二人だった割には……と、そのへんはちょっと意外でした。確かにお二人とも、壁画などの「動かせない」作品が多いなどの事情があるのでしょうか。今回は素描作品が中心ですが、それでも何点かはファクシミリ版(複製)です。

まずはギャラリートークで素描を見る観賞ポイントなどのお話を伺います。

絵を描かない人間にはピンとこない部分もありますが、素描というものはそれ自体が重要な創造的行為であり、絵画でも彫刻でも着想の起点部分なのですね。そういえば、昨年の「ミケランジェロ展」(パナソニック汐留ミュージアム)でも「最終的な作品が失われても、素描が残っていればかなり正確に復元できる」というような解説があったように記憶しています。

また、レオナルドにしてもミケランジェロにしても大勢の弟子を持っていました。先生の素描はお弟子さんたちの「お手本」でもあり、現代にも受け継がれている技法を確立するものであったとのこと。

当時の素描は、地塗りをした紙に金属の尖筆でひっかくようにして描かれています。鉛筆で描くのとは違って、失敗してもやり直しがきかない(不可能ではないけれども難しい)らしい。左利きのレオナルドは左上から右下への線で、右利きのミケランジェロは線を交差させながら重ねていく「クロスハッチング」という方法で陰影や立体感を表現しています。ハイライト部分には鉛白を使用します。

今回の展覧会では、人間の顔と身体、馬、建築などモチーフ別に両者の素描や習作を比較し、また弟子や追随者による模写作品などを並べて展示するという構成になっています。

有名なヴェッキオ宮殿の壁画のために描かれた素描もありました。レオナルドが《アンギアーリの戦い》、ミケランジェロが《カッシナの戦い》を受け持って競作するはずだったのですが、諸事情で制作は中断され、現在では習作と模写だけが残されています。

《アンギアーリの戦い》は馬の描写が真に迫り迫力満点ですが、《カッシナの戦い》は水浴び中に敵襲を受けたという場面ですから、完成していればむせかえるような裸祭りになっていたはず。

下の写真は、どちらもオリジナル作品が現存せず、追随者の模写だけが残されている《レダと白鳥》。

制作の過程を謎解きのようにひもといていくという点で興味深くはあるのですが、私などから見ると正直「かなりマニアックじゃないですか?」という感じがしないでもないです。

などと思っていたら!

最後にビックリする展示がありました。

2階の端の展示室に「終章」がありますが、これで終わりではなく1階にミケランジェロの彫刻作品が展示されています。正確には、ミケランジェロが着手し、途中で放棄されたものを後世の彫刻家が仕上げたキリスト像です。

何でも、彫っている途中に大理石に黒い疵がある(それもキリストの顔面に)ことがわかったため、途中で放棄されたとか。その後ミケランジェロは別の石で制作をやり直し、それが現在「第2バージョン」としてローマに残されています。こちらは放棄された後に注文主が引き取り、その後行方不明になっていました。どうやら、後に別の彫刻家が仕上げて修道院の聖堂に納められたようです。

疵が見つかった顔の部分は当然ミケランジェロが彫っているはずですよね。それ以外では脚と左腕がミケランジェロによるもので、右腕のあたりは後世に彫られたのではないか? とのお話でした。重要なポイントは、キリストが全裸であること。あの時代、キリストを全裸で表現できたのはミケ親方くらいではないかということで……なるほどな~と思いました。

別に傷があっても良いじゃないか、むしろワイルドな感じでかっこいいのでは? という気もしますけれども。でも360度ぐるりと回ってみて、個人的に好きなのは斜めから見たこの角度。崇高なたたずまいを感じます。

何せ貴重な彫刻作品なので、運ぶのも大変だったそうです。二重の木箱に入れて厳重に梱包し、いざ設置しようとすると箱のどちらが前なのかがわからない。随行してきた人に「多分こちらだろう」と言われて置いたものの、いざ開けてみたら逆だった――という苦労話もお聞きしました。向きを変えるのもいちいちフォークリフトが必要だそうで、本当に大変な作業なのですね。

そういう、ちょっと動かすのも大変な作品なので、今回は特別に1階に展示されています(いつもは特設ショップになっている部屋)。そして、普段は閉めきっている窓も開放して、自然光で観賞ができるようになっています。内覧会は夜だったので照明がついていますが、昼間にもう一度見に来たいなと思いました。

この彫刻は普段でも撮影OKだそうです。ただし、混雑状況などによって中止になる可能性もあります。

「レオナルド×ミケランジェロ展」は、東京・丸の内の三菱一号館美術館にて9月24日まで開催。

  • 開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
  • 休館日:月曜休館(但し、祝日は開館)
  • 主催:三菱一号館美術館、日本経済新聞社、テレビ朝日
  • 後援:駐日イタリア大使館
  • 協賛:損保ジャパン日本興亜、大日本印刷
  • 協力:アリタリア-イタリア航空