三菱一号館美術館「パリ♥グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」

投稿者: | 2017-11-14

丸の内にある三菱一号館美術館で開催中の「パリ♥グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」のブロガー内覧会に参加させていただきました。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!

明治時代に建てられたレンガ造りの洋風建築を復元再建した建物がとても美しいこの美術館。オリジナルの建物と同時代である19世紀末の美術品を中心にロートレックやヴァロットンなどの作品を収蔵し、今までも何度かこの時代をテーマにした展覧会で展示されています。

そして今回も、19世紀末~20世紀初頭にパリで流行した版画やポスターの展覧会なのですが、ちょっと変わっていて面白そうと興味を惹かれたのは「From Elite to the Street(エリートからストリートまで)」というサブタイトル。エリート(知的階級)の人びとが愛した版画作品と、ストリート(大衆)にアピールしたポスター作品が対比的に展示されています。

それを象徴する《版画とポスター》という作品が冒頭にあります。タイトルそのままに、版画とポスターをそれぞれ擬人化した女性2人の姿。

このような構成に関するお話を、最初のギャラリートークで伺いました。

大衆向けのポスターは街角に掲示し、宣伝であることが使命ですから、とにかく大きい。そして万人にアピールする、わかりやすいメッセージを乗せるメディアとして機能しています。

有名なロートレックの《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》(下記)は紙を3枚貼り合わせています(当時の技術では1枚の紙で制作できなかった)。近くで見ると、たしかに継ぎ目が2ヶ所あります。何でもこの作品、ロートレックが最初に手掛けたポスター作品なのだそうです。お隣は同じく人気ポスター作家だったスタンランの作品。これも有名ですよね。

《メイ・ベルフォール》と《メイ・ミルトン》は大きさが同じで色彩的にもペアになった作品。このお二人はプライベートでもパートナーだったそうです。

他方、エリート向けの作品は、書斎などのプライベートな空間で、個人的に楽しむための作品。ですからサイズは小さく、コレクター向けで内容もちょっと謎めいていたり、ヴァロットンの《アンティミテ》に代表されるような「ひそやかなメッセージ」を発しています。ポスターもありますが、サイズは小型。室内に飾ったり紙ばさみ(ポートフォリオ)にはさんだりして鑑賞したとのこと。

この時代は、版画が独立した表現手段として油彩画に並ぶ地位を得た時代でもありました。それ以前の版画は「油彩画のコピー」であり、「地位が下」という位置づけでした。しかしここにきて、版画ならではの表現を楽しむという鑑賞方法が生まれました。摺りの色や紙を少しずつ変えて、量産品だった版画に「希少性」を持たせることもありました。

その背景にあったのは、まずリトグラフの誕生。これは石板に絵を描いて写し取るという手法なので、彫り師がいません。絵描きが描いた線が直接紙に印刷されます。ギャラリートークでも、ロートレックの線に注目するという話が出ていましたね。

石板の現物も展示されています。今でも摺ろうと思ったら摺れるものだそうで、担当の学芸員さんも「やってみたい」と仰っていました。さすがに、借り物の貴重な資料でそういうことはできないのですが……。

いつの時代でも、新しいメディアが生まれるとそこには若い才能がどっと流れ込みます。絵描きになるデビュー方法もこの時代に大きく変わっています。受け手もそうでしょう。版画を愛した「エリート」たちの中には、近代以前であればエリートになれなかった階層の人々も多かったはず。

異なるステージを比較したものや、摺りの色を変えたバージョンもあります。

展示方法も凝っています。「ストリート」部のポスター作品は、パリの街路のようにセッティングされた空間に展示――というより「掲示」され、音楽も流れていて雰囲気満点です。三菱一号館のアンティークなインテリアもばっちりはまっていますね。

ポスターそのものだけではなく、ポスターのある風景を描いた作品なども。

最後の部屋では、ゴッホ美術館に収蔵されている浮世絵にも注目。ゴッホが集めていた作品だそうです。色が全然褪せていなくてビックリです。

内覧会では時間が限られていてゆっくり鑑賞できなかったので、再訪予定です。

※会場内には、一部撮影OKの部屋がありますが、上掲でそれ以外の写真は内覧会で特別に許可を得て撮影・掲載しています。


■ パリ♥グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展

  • 公式サイト:http://mimt.jp/parigura/
  • 会期: 2017年10月18日(水)~2018年1月8日(月・祝)
  • 開館時間: 10:00~18:00(祝日を除く金曜、11月8日、12月13日、1月4日、1月5日は21:00まで)※入館は閉館の30分前まで
  • 休館日: 月曜休館(但し、1月8日と、「トークフリーデー」の10月30日(月)、11月27日(月)、12月25日(月)は開館)
    年末年始休館 2017年12月29日~2018年1月1日
  • 主催: 三菱一号館美術館 アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館、朝日新聞社
  • 後援: オランダ王国大使館
  • 協賛: 大日本印刷
  • 協力: ヤマトロジスティクス(株)、エールフランス航空、KLMオランダ航空
  • お問い合わせ: 03-5777-8600(ハローダイヤル)

それにしてもこの展覧会タイトル、説明的でわかりやすいのは良いですが長いですね。