上野の森美術館「怖い絵」展

投稿者: | 2017-11-25

昨年の若冲ほどではありませんが、大混雑が話題の「怖い絵」展に行って来ました。混雑状況や内容について少しレポしたいと思います。

 ■ 「怖い絵」展 公式サイト

行く前に公式ツイッターをチェックして空いている時間帯を調べようと思ったのですが、結局空いている時間は「ない」ということがわかりましたので、まぁいつでもいいやと午後イチで。いちばん混んでいる時間帯だったかもしれませんが、並ぶのは屋外なので晴れた日の昼すぎが良いだろうと思ったんです(でも寒かった)。

行ったのは11月21日(火)で、上野に到着したのが午後1時くらい。「待ち時間60分」の札が立っていましたが、実際に館内に入るまでもう少し時間がかかったと思います。

チケット売り場で並びたくなかったので、事前にネットで買っておきましたが、見たところチケット売り場には行列なし。これだったら現地で買った方が良かったかな。

さて内容。2階の展示室から見るレイアウトになっています。

どの展覧会でも大抵そうですが、入り口のあたりがいちばん混むんですよね。この時もそうで、「空いている場所からご覧ください」と言われるのですが(特に順番通りに見なくても良い構成なので)、でもやはり最初の部屋がいちばん混んでいたように思います。1章「神話と聖書」では《オデュッセウスとセイレーン》が良かった。セイレーンの歌声を聞いて目がイッちゃってる感じのオデュッセウス、怖かったです。


Herbert James Draper (Wikipedia)

2章「悪魔、地獄、怪物」はタイトルのわりにあまり怖くなかったですね。怖いというより「面白い」と感じた絵が多かったかな。ギュスターヴ=アドルフ・モッサの《彼女》とか、作者不詳のボス風の絵とか。怖さでいえば仏教の地獄絵図の方がよっぽど怖いですよ。

3章「異界と幻視」のあたりで少々の違和感を感じ始めます――「何か違うな」という感じ。ゴヤ、ルドン、クリンガーなどの版画作品がいくつか展示されているのですが、連作版画の中から数点を選んで展示しているという構成が違和感のもとのような気がします。連作全体を過去に見ているせいかもしれませんが、作品が「あるべき場所にない」感じがしたんですよね。この違和感も「怖さ」のうちなんでしょうか?

その後、階段を下りて1階の展示室へ。4章「現実」ではホガースの版画作品が良かったですね。《娼婦一代記》は連作6点が全部展示されていました。ストーリーを追って行けるのはやはり良いです。セザンヌの《殺人》も注目作品。


Paul Cézanne (Wikipedia)

次の5章「崇高の風景」で再び違和感。風景の「崇高さ」があまり感じられなかったというか……なぜかこの部屋で、見世物小屋というかフリークショウを見ているような感覚に襲われたのですよ。何が原因だったんだろう。

気を取り直して次の部屋へ行き、6章「歴史」を鑑賞。いちばんのお目当てだったドラローシュの《レディ・ジェーン・グレイの処刑》は文句なしに素晴らしいですね。この部屋も混んでることは混んでるのですが、しばらく待っていれば絵の前に行けるし、絵が大きいせいか混雑もあまり気になりませんでした。

この部屋では、死体裁判の様子を描いた《フォルモススの審判》や《死せるナポレオン》も印象深い。ナポさんは少し前に東京富士美術館で絶頂期のドヤ顔肖像を見ていたので、それとの落差が……怖い絵というより「諸行無常」な感じではありましたが。そういう点ではマリー・アントワネットもそうですよね。作者不詳の肖像があり、そばにダヴィッドのスケッチ(処刑直前の姿)がパネル展示で紹介されていました。

解説の分量は、覚悟していたほど多くなかったです。音声ガイドは借りていないのでわかりませんが、パネル解説は、この程度なら他の展覧会でもあるのでは?と思いました。また、ただ絵を見るだけではなく、時代背景や主題についての知識を頭に入れて見ると面白さが増すというコンセプトのはずなのですが、その割に「背景も主題も不明」な作品があったりするのが謎。本の方の『怖い絵』はとても面白かったのですが……。

そんなこんなで全体をまとめると、

  • 《レディ・ジェーン・グレイの処刑》は傑作
  • しかし展覧会全体としては微妙
  • 『怖い絵』は本の方が面白い

という所でしょうか。


『怖い絵』シリーズは何冊も出ていますが、発行日の新しい角川文庫版は、朝日出版社版(単行本)の文庫化ですね。ただし、文庫版の方にはそれぞれ2編ずつくらい加筆があり、順番も組み替えられているみたい。単行本の1、2、3が文庫の『怖い絵』、『泣く女篇』、『死と乙女篇』に対応していますね。また、昨年には角川から単行本で『新 怖い絵』というのも出たようです。何だかたくさんあるので、どれを読んだのか、まだ読んでないのかわからなくなってきた。

 

 

 

(向かって右側が文庫版)