静嘉堂文庫美術館「歌川国貞展」

投稿者: | 2018-01-26

静嘉堂文庫美術館(東京・世田谷区)で開催中の「歌川国貞展~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~」のトークショー&ブロガー内覧会に参加させていただきました。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!


静嘉堂文庫美術館

まずはトークショーから。太田記念美術館の主席学芸員・日野原健司さん、静嘉堂文庫の主任司書・成澤麻子さん、そしてナビゲーターとして美術ブロガーのTakさんの御三方による、国貞作品の魅力と今回の展覧会の見どころについてのお話を伺いました。(写真右端は静嘉堂文庫の河野館長)

歌川国貞(三代豊国)は、歌川派を代表する絵師のひとりであり、幕末期には名実ともに浮世絵師の中でナンバーワンの地位を誇っていました。今でこそ知名度ではイマイチですが、それでもここ数年、没後150年を契機に注目が集まってきているように思います。人気があって筆も速いので、とにかく作品数が多い。20代の頃から79歳で没するまでずっと、50年以上も続けて第一線で描き続けてきたので、作品数は1万を超えるとも言われていますが、多すぎて正確には把握できないようです(北斎より多いらしい)。

今回の展覧会は、副題に「江戸の粋な仲間たち」とあるように、「美術品」として鑑賞するよりも、江戸の生活を垣間見るような、身近な人の日常の暮らしが描かれた作品が多数展示されています。特に女性のファッション。季節、身分、年齢による違いがあるのがわかります。また、背景のデザインが縞模様の見本帳になっていたり、絵の中に白粉の広告が描きこまれているところも注目点です。

ここで展示されている作品は、三菱(岩崎家)の女性たちがファッションカタログとして収集していたものと思われます。収集が行われたのは明治に入って洋風化が進められていた時代。急速な近代化に対する反動、あるいはノスタルジックな気持ちから、江戸の風俗を描いた国貞作品が好まれていたのですね。

そういう事情で収集されていたためか、作品の多くが画帖仕立てになっています。蛇腹式になっているのを広げて展示しているわけですが、展示期間や構成などの事情で「後期展示」用の作品が白い紙で覆われています。後期になると逆にその部分が展示され、前期展示作品が隠されてしまうのですね。浮世絵は光に弱く、あまり長期間展示できないので、展示期間や作品のバランスを考えての展示方法です。その代わり、画帖だと普段は閉じておけるので、保存状態は良好。退色しやすい紫色などもしっかり残っていてとてもきれいです。

以下、会場の展示風景や印象に残った作品などを写真でご紹介。(特別に許可を得て撮影しています)

展示室の入口近く(入ったところ)に、錦絵制作現場や売り場を描いた作品が展示され、錦絵そのものの紹介とともに、お江戸の世界への導入部になっています。作品では彫師も摺師も女性で「美人画」として描かれていますが、これは見立の一種であり実際には男性の仕事でした。

錦絵は版画ですから、絵師が描いた下絵のとおりに彫師が彫り、絵師の指示に従って摺師が色を付けて摺るわけです。そして企画段階から制作を指揮するプロデューサーが版元。美術作品としては絵師に注目が集まるわけですが、実際には分業体制によるマスメディアです。この展覧会ではその点も重視して、彫師・摺師・版元の名前もわかる範囲で記載されています。


(展示風景)

特に面白いなと思ったのは↓これ。鏡を一種の「枠」としてさまざまな年齢・階層の女性のさまざまな姿を描いた物ですが、手習中に他のことを考えて遊んでいる女の子とか、歯磨き中の女性とか、見ていて「きれい」というより「面白い」と感じてしまう等身大の女性たちが生き生きと描かれています。お歯黒をつけようとして失敗しちゃった所なんてのもあります。

写真には撮っていませんが、この近くに江戸時代の鏡台やお化粧道具も展示されていて面白いです。

その他、文学作品に取材した作品や役者絵も。芝居小屋の内部を描いた、珍しい肉筆画もあります。

後期もぜひ拝見したいと思います。


歌川国貞 これぞ江戸の粋


「歌川国貞展」開催概要

静嘉堂文庫美術館
〒157-0076 東京都世田谷区岡本2-23-1
TEL.03-5777-8600(ハローダイヤル)

会期:2018年1月20日(土)~3月25日(日) 休館日:月曜日(2月12日は開館)、2月13日(火)
開館時間:午前10時~午後4時30分(入場は午後4時まで) 入館料:一般1,000円、大高生700円、中学生以下無料
※団体割引は20名以上 ※リピーター割引:会期中に本展示の入館券をご提示いただけますと、2回目以降は200円引きとなります。

1月20日から、「せたがや3館めぐるーぷ」というバス(有料)が運行しています。これは、五島美術館・静嘉堂文庫美術館・世田谷美術館をつなぐ便利なバスなのですが、この3館が同時に展覧会を開催している時期にしか走らないそうです。詳しくは以下のページをどうぞ。

【玉35】二子玉川エリアの美術館を巡る『せたがや3館めぐるーぷ』運行開始について