横浜美術館「モネ それからの100年」

投稿者: | 2018-07-21

横浜美術館で開催中の「モネ それからの100年」特別夜間観賞会に参加しました。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!

この展覧会、タイトルは「それからの100年」ですが、どこからかというと、晩年のモネが大作《睡蓮》に着手したのが「ほぼ」100年前とのことです。Wikipediaを見てみると、モネが当時のクレマンソー首相に睡蓮の装飾画を寄贈すると約束したのが1918年なのですね。まぁそれから紆余曲折あったようなので、100年というのはメモリアルイヤーというよりも、時間を捉えるざっくりとした単位と考えた方が良さそうです。

タイトルは「モネ」ですが、モネ本人の作品は全体の4分の1程度。全体を通じて、モネの作品と現代作家の作品を比較するように並べて展示されています。現代作品は、明らかにモネの影響を受けたものやオマージュ作品から、「なぜこれを?」と作家さん本人から驚かれるようなものまで、さまざま。写真・版画・映像など技法もさまざまで、年代は100年全体にわたっています。

意識的に模倣したり技法を取り入れたりすることだけが「それから」ではないのですね。植物の種子が鳥に運ばれ、見知らぬ土地で芽を出すところを想像しました。その土は鳥のことも、種子がどこから来たかも気にしてはいないけれど、植物はしっかりとそこに根を張りその一部となっていく。意識しない所でも、モネが遺した何かが、あるいは間接的に息づいている。それを探してみるのも面白いのではないでしょうか。それがキャッチコピーにある「わたしがみつける新しいモネ」なのかなと思いました。

展示は4章構成。モネ作品は日本初公開の作品もあり、初期から晩年までほぼ時系列に沿って展示されています。

(会場内の写真は、夜間観賞会のために特別に許可をいただいて撮影・掲載しています)


1章「新しい絵画へ―立ちあがる色彩と筆触」では、色彩の物質性や筆触に着目します。対する現代アートはルイ・カーヌ、ウィレム・デ・クーニング、ジョアン・ミッチェルなど。カーヌの作品は金網の上に樹脂絵具を乗せるという手法で制作されており、物としての立体感や色彩の明るさが印象的です。

2章「形なきものへの眼差し―光、大気、水」は、光や大気などを表現する色彩表現について。光や大気は人間と風景の間に介在していて、見え方に大きく作用するけれども、それ自体を見ることはできません。形も色もないものを、色彩を使ってキャンバス上に「形」として表現するというのは、何だか禅問答のようでもありますね。形なきものとして、もうひとつ付け加えるとしたら「時間」でしょうか。ここでは色の塗り重ねやグラデーションがテーマです。現代勢はモーリス・ルイス、マーク・ロスコ、スティーグリッツなど。

3章「モネへのオマージュ―さまざまな『引用』のかたち」、この章だけは当然ですが、モネの作品がなく現代作品のみです。リキテンスタインの睡蓮、ルイ・カーヌの睡蓮、堂本尚郎の睡蓮、その他さまざまな睡蓮が展示されていました。光の反射やモチーフの連続。オマージュを見ることで、改めてモネの世界を知る――そこにモネの作品はないのにモネの存在を強く感じる、ある意味でこの展覧会のエッセンスのような部屋だと感じました。

4章「フレームを越えて―拡張するイメージと空間」で、モネの作品はいよいよ晩年の《睡蓮》の時代に入ります。前章で「オマージュ」として見たモチーフの連続や重なり合いをモネの作品の中に発見していく感じ。展示室内に丸い空間を作り、片側にモネの《睡蓮》、もう片側に現代アートを配した部屋は、それ自体がオランジュリーの空間を模したものとなっています。現代勢は鈴木理策、福田美蘭、サム・フランシスなど。反復と増幅といえば忘れちゃいけないウォーホルさんもいました。

最後の4章まで来て全体を振り返り、個人的に印象に残った要素は何かというと「反射」と「反復」でした。作品で言うと福田美蘭の《睡蓮の池》(下の写真左)が印象深かった。夜のレストランの窓ガラスにテーブルが映っているところですが、ガラスの向こうにある実際の夜景とガラスに映るテーブルの像、その境界にあるかのような照明の輝きが混然一体として混じり合い、反復され、増幅し、浮遊する。リアルでありながらとても幻想的な風景でした。

さらに、その隣には連作として違う時間帯を描いた《睡蓮の池 朝》も! 何でもこの展覧会の直前に完成したとのことで、急きょ特別出品になりました。連作になっている点がニクいというか何というか「してやられた」感があります。

「反射」という点では上に挙げたリキテンスタインの《日本の橋のある睡蓮》も興味深いと思いました(3章の写真の右端に写っている作品)。金属板を使っていて、光がきらきらと反射するのです。光を使って光を表現するなんて、思いつきそうでなかなか思いつかない表現方法ではないでしょうか。

こちらは児玉靖枝《深韻》。実は私、モネの作品は雪景色を描いたものが好きなのですが、今回の展覧会では見られなかったので、代わりにこちらを撮影しました。(そんな理由かいっ)

ロスコの作品はもっと余裕のある時にじっくり見るべきかなと思いました。内省的というか精神性の強い作品だと思うので、終了時間を気にしたり写真を撮影したりの内覧会では落ち着いて見られません。とはいえ、普段もかなり混雑しているようですが……。

全体として、モネよりも現代アートの方にいろいろと心ひかれた展覧会でした。時間がなくてじっくり見られなかった部分やコレクション展があるので、もう一度行かねばと思っています。


モネ それからの100年

  • 公式サイト:http://monet2018yokohama.jp/
  • 会期:2018年7月14日(土) ~ 9月24日(月・休)
  • 会場:横浜美術館
  • 開館時間:午前10時~午後6時
    ※ただし9月14日(金)、15日(土)は午後8時30分まで
    ※入館は閉館の30分前まで
  • 休館日:木曜日(8月16日は開館)
  • 主催:横浜美術館、東京新聞、テレビ朝日
  • 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
  • 協賛:トヨタ自動車、三井住友海上火災保険、光村印刷
  • 協力:日本航空、FMヨコハマ、みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン、首都高速道路株式会社