静嘉堂文庫美術館「明治からの贈り物」

投稿者: | 2018-07-22

明治からの贈り物 ポスター

静嘉堂文庫美術館で開催中の「―明治150年記念― 明治からの贈り物」のブロガー内覧会に参加しました。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!

内覧会の開催は前回書いたモネ100年展の2日後。このような内覧会は希望者が多いと抽選になり、はずれることもあるので「どちらか当たれば良いな~」なんて思いながら応募したら両方当たってしまいました(汗)。

内覧会の前に、河野元昭館長、主任学芸員の長谷川祥子さん、人気ブロガーのTakさんのトークショーがありました。

明治からの贈り物 トークショー

以下、お話の内容なども織り交ぜながら内容をご紹介したいと思います。ちなみに館長の「ベスト3」は、橋本雅邦《龍虎図屏風》、黒田清輝《裸体婦人像》、濤川惣助《七宝四季花卉図瓶》とのこと。

(会場内の写真は、内覧会のため特別に許可をいただいて掲載しています。ロビーの作品は通常も撮影OKです)


この展覧会ではタイトルのとおり、明治時代の絵画や工芸品が展示されています。今年は明治150年ということもあり、また最近明治工芸の「超絶技巧」にも注目が集まっていますが、今回ここならではの特別な点を挙げるなら、やはり静嘉堂自体が明治に建てられたものであるという点でしょう。静嘉堂のコレクションの基礎を築いたのが、三菱の第2代社長だった岩﨑彌之助さんです。

明治からの贈り物 岩﨑彌之助

↑この方が岩﨑彌之助さん。

展示室に入ると、明治期の岩崎邸を飾っていた作品がまず目に入ります。

黒田清輝《裸体婦人像》は発表当時、公序良俗に反すると問題視され、下半分を布で覆って展示されるという、いわゆる「腰巻事件」を起こした問題作。岩崎邸では「紳士の場」であるビリヤードルームに飾っていたそうです。作品と並べて、当時の写真がパネル展示されています。

明治からの贈り物 裸婦

こちらは、菅原直之助による刺繍額《羽衣図》と《鞍馬天狗図》で、貴賓室に飾られていました。

明治からの贈り物 刺繍額

内覧会は写真撮影ができる所が魅力ですが、通常1点撮りというのはできないのです。「展示風景」として2点以上を撮るとか、周囲の鑑賞者やキャプションなどを入れなければなりません。作品の一部をクローズアップして撮るということも通常はできないのです。

しかし今回は、静嘉堂文庫さんの御好意により1点撮りOK、一部をクローズアップした接写もOKでござるという太っ腹な許可をいただきました。この刺繍額は細部をじっくりと見てほしいからということなので、お言葉に甘えて思い切り大きく撮ってみました。

明治からの贈り物 刺繍クローズアップ

間近で見るとすごいんですよ、この糸の重なり具合が……。糸の色や刺し方なども厳密に計算されているそうです。これで着物や扇のリアルな質感が表現されているのですね。

次に「幕末・明治の美術」があります。

ここでまず目に入るのが菊池容斎の《呂后斬戚夫人図》(前期展示)で、残酷なので写真は小さくしておきますが(クリックすると拡大されます)、漢の呂后が夫の死後に寵姫の戚夫人を嬲り殺しにした場面が描かれています。

明治からの贈り物 グロ

無残絵というと月岡芳年などが有名なので、やっぱり明治ってそういう時代よね~と思っていたら、この作品は江戸時代(天保14年)に制作されたものでした。幕末期といってもまだ黒船が来る前ですから、時代性というわけでもなさそうです。

異時同図法で、戚夫人が手足を切られる場面が真ん中のあたりにあるのですが、ここで足がちょっと気になりました。左足を切断されているのに、下に落ちているのが右足のように見えるのです(左側に親指がある)。う~んどうなんだろう、としばらく目を凝らした(←危ない人っぽい…)結果、おそらく落ちている部分は、左足を足裏から見たところだろうという結論に達しました。

また、最近人気急上昇の河鍋暁斎《地獄極楽めぐり図》も要注目。これは小間物問屋の主人が娘の供養のために暁斎に依頼した作品で、画帖になっているため期間中に展示替えがあります。4回に分かれているので全場面コンプリートするのは大変そうですが、次のような予定になっています。他の展示品の区切り(前期:~8/12、後期:8/14~)とは微妙にズレているようなので、ご注意ください。

  • 7/16(月・祝)-7/26(木)・田鶴の臨終と来迎、羅人宮、三途の川の渡し舟に乗る等
  • 7/27(金)-8/9(木)・賽の河原、旅館はりやま到着、田鶴の身支度等
  • 8/10(金)-8/23(木)・家族との再会、芝居小屋、盛り場等
  • 8/24(金)-9/2(日)・地獄見物、閻魔大王、極楽行きの汽車、極楽往生等

工芸品では、濤川惣助《七宝四季花卉図瓶》に注目。七宝焼きは通常、金属の「仕切り板」で釉薬を区切って図柄を作りますが、濤川惣助が考案した無線七宝では、工程の途中でその線を取り外すので、釉薬が混ざり合って絵画的な表現になります。下絵を描いた渡邊省亭も展覧会が予定されている(場所は失念)そうで、今後の注目株になりそうです。

明治からの贈り物 会場内

さて、明治28年に開催された第4回内国勧業博覧会には、岩﨑彌之助が出資して屏風が10点出品されました。描いたのは東京から6名、京都から4名選ばれた当時の一流の画家たち。現在静嘉堂には出品された10点のうち8点が所蔵されているとのこと。今回展示されているのは、橋本雅邦《龍虎図屏風》、松本楓湖《蒙古襲来・碧蹄館図屏風》、鈴木松年《群仙図屏風》の3点です。

明治からの贈り物 龍虎図

屏風って展覧会に2~3点あるだけでも存在感が強いのに、それが10点ですよ。どうやって並べていたんでしょう……。静嘉堂所蔵の8点は、《群仙図屏風》が8曲1双で、それ以外が6曲1双なんですよ。他の2点も同じくらいの大きさだったでしょうね。うーん、壮観。

博覧会としてはもうひとつ、明治37年に米国セントルイスで開かれた万国博覧会への出品作品もあります。ただしこちらは、現物が事故で焼失してしまったため、最近制作された再現作品と、当時制作に使われた織下絵と模写画。題材は伊藤若冲《動植綵絵》の1点である《池辺群虫図》です。実物大だと織物にすることができないため、かなり拡大して織られています。模写画は画工さんが何人かで手分けして行ったそうですが、細密描写で知られる若冲ですから、模写も大変だったでしょうね……。そして若冲人気は明治時代からだった!という点も注目点かと思います。

明治からの贈り物 若冲

明治の物をただ集めただけでなく、当時の状況やお屋敷の様子など、時代性が強く感じられる展覧会だと思います。

展覧会は9月2日まで。今回のトークショーの他にも、講演会、コンサート、庭園ツアーなど企画が盛りだくさんです(詳細は公式サイトをご覧ください)。

静嘉堂文庫は世田谷区の閑静な住宅街の中にあり、最寄駅(二子玉川)からちょっと遠いのでバスを利用することになるのですが、トークショーの当日は三連休の最終日だったためか、道路が激混みでバスがまったく動かず、普段は10分ぐらいのところが30分以上かかってしまいました。そこで、いつもの停留所「静嘉堂文庫」ではなく、1つ手前の「民家園」で降りて裏口から入るというルートで行きました。坂道が急なので上るのが大変ですが、正門からなだらかな道を来るよりも10分ぐらい早く着けるんじゃないかと思います。ご参考まで。

明治からの贈り物 ロビー展示

  • 会期:2018年7月16日(月・祝)~9月2日(日)
  • 会場:静嘉堂文庫美術館
  • 休館日:月曜日(ただし7月16日は開館)
  • サマータイム開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
  • 入館料:一般1,000円、大高生700円、中学生以下無料
    ※団体割引は20名以上
    ※リピーター割引:会期中に本展示の入館券をご提示いただけますと、2回目以降は200円引きとなります。