三菱一号館美術館「フィリップス・コレクション展」

投稿者: | 2018-11-07

三菱一号館美術館(東京・丸の内)で開催中の「フィリップス・コレクション展」のブロガー内覧会に参加させていただきました。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!

フィリップス・コレクションは1921年に米国の首都ワシントンに開設された美術館です。近代美術の美術館としては、ニューヨークの近代美術館(MOMA)よりも早い米国初の設立とのこと。その名のとおり、実業家のダンカン・フィリップス氏のコレクションが中核となっており、また美術館自体もフィリップス氏の旧私邸を増改築したものであり、色々な意味でフィリップス氏のプライベートな要素の多い美術館です。

このフィリップス・コレクションと、今回の開催地である三菱一号館美術館とは浅からぬ縁があり、今まで開催されてきたシャルダンやルドンの展覧会で作品が展示されてきました。また、19世紀に建てられたレンガ造りの外観や展示空間など共通点も多く、今回はその点を活かしてフィリップス・コレクションそのもの、ダンカン・フィリップスが作り上げた親密な空間を再現するような展覧会になっています。

まずは、例によって担当学芸員さんと「青い日記帳」のTakさんとのギャラリートーク。展示構成や作品紹介などの話をお聞きしました。

こういう展覧会って、通常は年代や流派や国で作品を分類して展示しますよね。しかし、フィリップス・コレクション側からそういう展示は「ダメ」と言われたのだそうです。代わりに言われたのは「エンジョイ(=楽しもう)」という言葉。

コレクションを作り上げたダンカン・フィリップス氏は、自分の気に入った、審美眼にかなった作品を購入して飾っていました。何派の作品を充実させようとか、有名作家の作品を入れようとかではなく、何より自分が楽しむこと。作品を愛すること。そういうコレクションを展示するための最良の方法は何でしょうか。

それは「ダンカンさんが購入した年代順」に展示するという方法。これはびっくりと同時に納得ですね! 今までそういう展示方法ってあったのでしょうか。ちょっと記憶にないです。

  1. 1910年代後半から1920年代
  2. 1928年の蒐集
  3. 1930年代
  4. 1940年代の蒐集
  5. 第二次世界大戦後
  6. ドライヤー・コレクションの受け入れと晩年の蒐集
  7. ダンカン・フィリップスの遺志

という7部構成で、順番に見て回るとダンカン・フィリップス氏の人生とコレクションの構築を追体験できるようになっています。内覧会では時間が限られていて、そのへんをじっくり味わえなかったので、ぜひとも再訪しようと思っています。ショップ(後述)も利用したいし……。

今回フィリップス・コレクションからは、ダンカンさんを直接ご存知のキュレーターさんが来られて展示方法にもあれこれ口を出された独特のこだわりが見られます。なぜ、これとこれが隣り合っているのだろう? と考えてみるのも面白そうです。

展示のキャプションには、下の写真のように番号が2つあります。斜体の番号(下の写真では39番)はカタログ番号、〇の中の数字(同20番)は展示番号(推奨される鑑賞順序)です。

普段ですと、展示構成に沿って見どころをご紹介するのですが、今回はこういう事情ですからそのへんは省略して、印象に残った作品をいくつかご紹介しようと思います。

まずはボナールですね。ギャラリートークもほとんどがボナール作品についてでした。ダンカンさんはかなり早い段階からボナールに注目していたようです。ボナールといえば、現在国立新美術館でも展覧会を開催中です(これも早く行かねば…)。新美術館から三菱一号館へは東京メトロの千代田線で1本なので(乃木坂→二重橋前)ハシゴされても良いのでは。

《棕櫚の木》(上の3人並んでいる写真の背景)では逆光になった人物の色使い、目のような形の棕櫚の葉が面白い。《開かれた窓》(写真上)では、右下の方でマルトさんがネコとハイタッチしています!

↑ジョルジュ・スーラの《石割り人夫》。最初期の、点描を始める前の作品です。こんな作品もあったのですね。

↑ジャン・シメオン・シャルダンの《プラムを盛った鉢と桃、水差し》は、何年か前の「シャルダン展」でも展示された作品。その時と同じ場所に、同じ高さで展示されているとのこと。

↑ドミニク・アングル《水浴の女(小)》とアメデオ・モディリアーニ《エレナ・パヴォロスキー》

これの隣にこれって、普通並べませんよね。

今回見た中でいちばんのお気に入り作品、カンペンドンク《村の大通り》(写真上、右端)です。可愛くて、色使いもきれい。カンペンドンクはドイツの画家で、カンディンスキーやマルクとともに「青騎士」に参加していました。昨年のカンディンスキー展やオットー・ネーベル展を思い出します。表現主義や「青騎士」周辺、もうちょっとよく知りたい時代です。

実はこれ、キャサリン・ドライヤーさんという別のコレクターの蒐集品です。キャサリンさんが亡くなった後、フィリップス・コレクションに寄贈されることになりましたが、ここでもダンカンさんはご自分のポリシーを貫き、気に入った作品だけを選んで受け入れました。それまでフィリップス・コレクションで「青騎士」系はかならずしも主流ではなかったそうで、そう言われてみると確かに、今までの部屋では見かけなかったタイプの作品だと思います。

その他アンリ・ルソー、セザンヌ、オノレ・ドーミエ、ゴッホ、ドラクロワなど、すごい作品ばかりです。「全員巨匠」といううたい文句も納得です。

でもダンカンさんは、別に彼らが巨匠だから蒐集したわけではないのですよね。今は巨匠でも当時はまだ注目されていなかった画家もいました。ただただ自分の審美眼にかなう作品を集め「エンジョイ」していたのだなぁ、ということが展示室全体から何となく伝わってくる気がします。

さて、今回はショップも大注目です。まずはこちらをご覧ください。

わざわざこのショップのために特注したドールハウスです。ダンカンさんの生前のフィリップス・コレクションを、モノクロ写真を元に1/12スケールで再現したものだそう。ショップに置いてあるのですが(これ自体は売り物ではありません)、これ「参考作品」として展示室にあってもおかしくないですよ。

このドールハウス、制作にかなり苦労されたそうです。ソファの生地も、写真を見て同じ模様を描き起こして布地を作るところから始めるのです。さらに、壁に飾る絵画も1/12スケールで作るのですが、絵の素材はあっても額縁の形がわからない! ダメもとでフィリップス・コレクションに問い合わせてみたところ、向こうの方がこの企画を大いに気に入り、夏休み返上で倉庫にこもって撮影して下さったのだそう。何かもう、そういう話を聞いていると胸が熱くなります。

このミニチュアキャンバスは、商品にもなっており、フィリップス・コレクション公認の最小サイズの複製画ということになります。この1/12というのはドールハウスの規格なので、別のドールハウスにも違和感なく飾れてしまうということですよね(持ってないけど)。

上の写真が、元になったフィリップス・コレクションの写真です。ドールハウスと見比べてみてください。

近くに寄って撮影するとドールハウスの「額縁」が消えて、より本物ぽくなりますが、撮影者や人の姿が写り込んでしまい、心霊写真風味に。

ドールハウスの写真は美術館公式のインスタグラムでも公開されています。

https://www.instagram.com/p/Bplv18iArR1/

ポストカードもすごいです。展示されている絵画作品68点のうち、何と64点(94%)がポストカードになっています。残りの4点が何だったのか、ちょっと探してみたくなりますね。内覧会で撮影禁止だった作品が15点ほどあるので、その中の作品ではないかと思っていますが。

※追記:ショップの写真と出品リストを突き合わせた結果、ポストカードにならなかった4点はドラクロワ《パガニーニ》、クールベ《ムーティエの岩山》、ドーミエ《蜂起》、セザンヌ《自画像》であると判明。内覧会での撮影禁止とは無関係でした。

ポスカが64種類もあるところで十分すごいショップになっていますが、何とこのポスカ64枚をセットにした「コンプリートセット」もあります! さっきから「何と」とか「すごい」の連発でアレですが、だって64枚入りでお値段が5000円+消費税なんだそうですよ。バラで買うと1枚150円ですから、ほぼ半額なんです(なので1日5セット限定)。何でも、64枚すべてお買い上げになった方がおられたそうで、それで急きょセット作成、ということになったのだそう。

何かもう、書いていてわけわかんなくなってきました。こだわり方がすごすぎて。ていうか、このショップ変ですよ。こんなショップ見たことないです。

他はマグネットやノートなど。「平面で絵をそのまま持ち帰れる」商品に限定し、セザンヌせんべいとかゴッホまんじゅうみたいなお土産品は作っていないみたいです。

会期は来年2月までですが「まだ時間あるから」と思っているとアレしてしまうので、早めに再訪して来ます。

フィリップス・コレクション展

  • 会期:2018年10月17日(水)~ 2019年2月11日(月・祝)
  • 開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
  • 休館日:月曜日(但し、祝日・振替休日の場合、会期最終週とトークフリーデーの10/29、11/26、1/28は開館)
    年末年始(12/31、1/1)
  • 主催:三菱一号館美術館、フィリップス・コレクション、読売新聞社、日本テレビ放送網
  • 後援:アメリカ大使館
  • 協賛:大日本印刷
  • 協力:全日本空輸、日本貨物航空
  • お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

※会場内の写真は、内覧会のために許可をいただいて撮影・掲載しています。