三菱一号館美術館「ラファエル前派の軌跡展」

投稿者: | 2019-04-19

三菱一号館美術館(東京・丸の内)で開催中の「ラファエル前派の軌跡展」ブロガー内覧会に参加させていただきました。主催者・運営者の皆様いつもありがとうございます!

最近内覧会は日程が合わないことが多くて、これが2019年初めての内覧会になります。

さてこの展覧会、タイトルこそ「ラファエル前派」ですが、ラスキン生誕二百年記念ということで、実際には「ラスキンとその周辺展」ではないかと思います。ジョン・ラスキンは19世紀に活躍した英国の社会思想家であり、美術評論家でもあり、また今回の展示にあるように自分でも素描やスケッチを制作していました。

ラスキンは、当時斬新すぎて評価が分かれていたターナーを擁護し、ラファエル前派の活動を支援し、夏目漱石、青木繁や民芸運動などにも影響を与えています。日本人にとっても重要な存在であるはずなのですが、いつしか忘れられた存在になってしまったため、展覧会タイトルとしては「ラファエル前派」を前面に出すことになったようです。でも展覧会としては、ラスキンを中心に考えると全体がしっくりまとまる感じなんですよね。

ラファエル前派の運動はその後のアーツ&クラフツ運動につながっていきますが、社会思想家でもあったラスキンの存在は、ここにも大きく関わっています。当時の英国は産業革命を経て大きく発展し、都市化・工業化が進んだ時代。そこでラスキンは自然の美を賛美し、大量生産ではない「手仕事の重要性」を主張しました。都市と自然、機械化と手仕事、発展と懐古。近代社会の抱える相克ですね……。

展覧会は以下の5章構成。

  1. ラスキンとターナー
  2. ラファエル前派
  3. ラファエル前派周縁
  4. バーン=ジョーンズ
  5. ウィリアム・モリスと装飾芸術

ラスキンの素描論には、何よりも「自然をよく見よ」というメッセージがあります。確かレオナルド・ダ・ヴィンチも同じようなことを言っていたはず。葛飾北斎も「師造化」つまり造化(自然)を師とするという銘を入れていました(先月見た北斎展の解説ビデオにそんな話がありました)。洋の東西を問わず、自然はあらゆる絵描きの師匠なのですね。

ラファエル前派の章では、写真の撮影ができます(3階のいちばん大きな部屋)。でも屏風のような壁面が作られていて、うまく画面に収めるのが難しい。


↑向かって右側は、メインビジュアルになっているロセッティの《魔性のヴィーナス》。果物や花など「自然の美」が配置されていますが、ラスキン先生は「花の描き方が雑」と批判されたとのこと。厳しい!


↑これはミレイが描いたラスキンの妻エフィ。エフィは後に離婚してミレイと再婚するというドラマがあり、ラファエル前派とその周辺はけっこう男女関係が華やか(というか、ドロドロ?)です。


三菱一号館のインテリアとの調和も、いつもながら素晴らしい。


今回初めて見て、とても気に入った作品です。ジョン・ウィリアム・インチボルトの《アーサー王の島》。海の描写がとてもきれいですね。


版画作品と共に、版木も展示されています!珍しいですよね。


アーツ&クラフツ運動は、家具や日用品にも芸術を取り入れ、美しい物に囲まれて暮らそうというものですから、このような作品も。こういう椅子に腰かけて絵を眺めてみたいですね(展示作品には座れません!)


モリス商会の「イチゴ泥棒」ですよ皆さん!(って誰)


ショップも美しく設えられています。椅子も売ってるんですよね~買えるお値段じゃないけど。

ラファエル前派の華やかな作品を目当てに行くと、少々地味に感じられるかもしれません。けっこう玄人好みというか、19世紀英国の文化や芸術、そしてそれらを取り巻く世界全体に目を向けさせられる内容でした。昨年が明治150年で盛り上がっていましたが、明治日本の文化の源流のひとつは、確実にここにあったと思います。

ところで冒頭の画像にある「美しい、だけじゃない」という煽り文句、数年前に同じ三菱一号館美術館で開催された「ザ・ビューティフル―英国の唯美主義」展の「唯、美しく」と対になっているのでしょうか。そんなところも気になってしまいました。


ラファエル前派の軌跡展

  • 会期:2019年3月14日(木)~6月9日(日)
  • 開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで(祝日を除く金曜、第2水曜、6月3日~7日は21:00まで)
    4月27日(土)~5月6日(月・祝)は、10:00〜18:00まで開館します。※最終入館は17:30まで※5月3日(金・祝)の開館時間は18:00までです。ご注意ください。
    4月6日(土)は、開館9周年のため、21:00まで開館します。
  • 休館日:月曜日(但し、4月29日、5月6日、6月3日と、トークフリーデーの3月25日、5月27日は開館)
    トークフリーデーは、声の大きさを気にせず鑑賞できる日です。
  • 主催:三菱一号館美術館
  • 共催:産経新聞社
  • 企画協力:インディペンデント、アルティス
  • 後援:ブリティッシュ・カウンシル
  • 協賛:大日本印刷
  • お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)


※会場内の写真は、内覧会のために許可をいただいて撮影・掲載しています。