損保ジャパン日本興亜美術館「シャルル=フランソワ・ドービニー展」

投稿者: | 2019-04-27

西新宿の東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で、4月20日から「シャルル=フランソワ・ドービニー展」が開催されています。今回はプレス内覧会にブロガー枠で参加させていただきました。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!

まず最初に、担当学芸員さんのギャラリートークに参加。展覧会の構成や、ドービニーの画業について、お話を伺いました。

ドービニーはバルビゾン派としてミレーやコローなどとともによく名前が挙がる画家ですよね。画風も何となくイメージできるので、わりと有名な画家さんだと思うのですが、ドービニー個人に焦点を当てた展覧会としては、何とこれが国内初らしいです。意外ですね。

今回この展覧会を観て、ドービニーが単にバルビゾン派の風景画家というだけでなく、「現場主義」的な制作スタイルを実践し、美術史的にも重要な役割を果たしていることがわかりました。

展覧会構成は、ほぼ時系列に沿ってドービニーの作品を紹介する形式。序章だけはドービニーではなく、コローやクールベなど、バルビゾン派を中心に同時代の画家の作品が展示されています。

  • 序章:同時代の仲間たち
  • 第1章:バルビゾンの画家たちの間で(1830~1850)
  • 第2章:名声の確立・水辺の画家(1850~1860)
  • 第3章:印象派の先駆者(1860~1878)
  • 第4章:版画の仕事

ドービニーは1817年生まれ。お父さんと叔父さんも画家で、自然に絵を描くようになっていったようです。当時フランスの画壇はまだ伝統的なアカデミズムの時代。ドービニーもドラローシュに弟子入りし、「位の高い」歴史画や宗教画に挑んだものの、入選せず。しだいに風景画を描くようになっていきました。1章には初期の、歴史的風景画(風景を大きく描きつつ、中に歴史や神話などのモチーフを取り入れたもの)が展示されています。

その後、ドービニーは風景画家としての名声を得て、水辺の風景を多く描くようになります。緻密に描く古典的な手法ではなく、スピーディな筆跡を用いたため、「タッチが粗い」と批判されることもあったそうです。後の印象派の誕生を予感させるようなエピソードですね。

さらには船の上にアトリエを設えて旅をしながら制作することも。当時の制作環境や、また船が揺れることを考えると、どこまで屋外で描けたのかよくわかりませんが、しかし船だと重い画材を積み込んで楽に移動できますから、写生旅行には便利な手段だったのですね。また一日中、納得のゆくまで自然と向き合い、時間と共に変化する情景を観察することもできました。

3章には、その船の模型や、旅の様子を描いた版画集なども展示されています。版画作品には、油彩画には描かれないようなユーモラスな場面もあり、お茶目な人柄を思わせます。

晩年の作品はさらに「粗さ」を増し、印象派に近づいていきます。ドービニーは1878年に61歳で亡くなりますが、その前年まで旅をしながら描いていました。

ドービニーが船旅をしていた1850~70年代、パリではジョルジュ・オスマンが都市の大改造に大ナタを振るっていました。都市の景観は急速に変わっていったはずですが、ドービニーはあくまで十年一日のごとく水辺の自然を描き続けます。

画家としてのドービニーはバルビゾン派という位置づけになると思いますが、実際に長期間暮らしていたのは、それより北の方にあるオーヴェル=シュル=オワーズです。ここは他にも、ピサロ、ゴッホ、ヴラマンクなど大勢の画家に愛された土地であり、ゴッホはドービニーを慕い、彼の死後にアトリエを訪れてその情景を描いています(ひろしま美術館にある《ドービニーの庭》ですね)。ドービニーのアトリエは、子孫の手によって今も保存されているとのこと。

また、タイトルに「バルビゾン派から印象派への架け橋」とあるとおり、印象派の誕生に関して重要な役割を担っています。当時画壇で酷評されていた彼らの作品をいち早く評価し、画商に紹介するなど積極的に支援しました。

彼自身は「写実主義の風景画家」としてサロンに出品して入選し、伝統的な画壇に地位を築きますが、同時に「粗い」と言われた斬新なタッチの持ち主。印象派の画家たちに大きな影響を与え、同時に彼自身のタッチも印象派風に変わっていくという双方向の影響関係があったようです。

油彩画だけを見ると、正直似たような作品が多いかな? と思わないでもないのですが、逆に似ているからこそ、タッチの変化や細部に注目してみる面白さがあるのではないでしょうか。また、上に挙げた模型や版画(銅板もあります!)などの面白い展示作品もあります。ドービニーは版画作品も大量に制作しており、これもドービニーの人気を高めた重要なメディアでした(大量に刷って廉価で販売する版画は当時のマスメディアですから)。

※会場内の写真は、内覧会のため特別に許可を得て撮影しています。


シャルル=フランソワ・ドービニー展 バルビゾン派から印象派への架け橋

  • 会期:2019年4月20日(土)~6月30日(日)
  • 休館日:月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館、翌火曜日も開館)
  • 会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
    〒160-8338 新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
  • 開館時間:午前10時-午後6時(ただし6月25日(火)~30日(日)は午後7時まで)
    ※入館は閉館30分前まで
  • 観覧料:一 般:1,300円(1,100円)
    大学生:900円(700円)※学生証をご提示ください
    ( )内は20名以上の団体料金および前売料金
    高校生以下:無料 ※生徒手帳をご提示ください
    ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を提示のご本人とその付添人1名は無料。被爆者健康手帳を提示の方はご本人のみ無料。
  • 主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞東京本社

損保ジャパン日本興亜美術館では、現在新しい展示館を建設中。42階での展示もあとわずかです。