2003.08.28

■ 字幕と吹き替え/ノーマの台詞


 TIMELINE(年表)を翻訳するために、DVDとLDでドラマを通して見た。最後まで通して見たのは、本当に久しぶり。第1シーズンはDVDを買った時に、初めて吹き替え版を見た(ビデオとLDは字幕しかないので)。

 字幕版と吹き替え版。両方見たのは第1シーズンだけだし、詳細に見比べたわけではないのだが、微妙に違う点があることに気づいた。以下、第3話のネタバレが多少あり。

 まず気になったのが、ノーマ・ジェニングスが夫ハンクの仮釈放について話し合うシーン(第3話)。ノーマは美人で、ダイナーの経営者でもある。言い寄る男を何と言って追い払っているのか、と聞かれ、彼女は次のように答える。吹き替えでは「殺人的に嫉妬ぶかい夫がいると言ってやります。過失致死で服役中だけど、まもなく社会の有能なメンバーとして復帰すると」だが、DVDの字幕は「人を死なせて服役中」となっていた(過失致死という言葉は出て来ない)。さらに、LD版の字幕も微妙に違っていて「殺人で服役中」だった。

 最初に吹き替えを聞いた時に「過失致死」というのが少々ひっかかった。この部分、原文は「manslaughter」である。辞書や英米法辞典を見てみると「故殺」と訳されている。過失致死も殺人も含まれる罪だが、殺人の方は、一時的な激情で思わず殺してしまったというような場合に適用するらしい。計画殺人などの「謀殺(murder)」とは区別されている。

 ハンクは自動車で人をはねて死なせてしまったようだ。殺意はなかったので、日本の刑法なら過失致死に該当するのだろう。という意味で、吹き替えは正しいと思う。しかし、言い寄ってくる男を撃退する言葉としては少々刺激が足りないような気がする。善人だって過失はあるのだから。ここで "manslaughter" を使ったのは、「一時的な激情による殺人」を連想させて相手を脅かそうという意図があったのだと思う。なぜならその前に「嫉妬ぶかい」とわざわざ言っているからだ。一方で LD 版の「殺人」というのも、脅しとしてはともかく、その後にハンクの罪状を聞くと違うよなと思う。

 そういうわけで、DVD 版の字幕が最も適切かな、と思う。「嘘は言ってないわよ」てな感じで。



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