2003.08.28

■ 字幕と吹き替え/デニースの台詞


 字幕と吹き替えで、もうひとつ気になったことがあった。今回は後半の第19話(2012)の台詞で、ネタバレあり。

 主人公のクーパー捜査官は、ローラ・パーマー殺人事件を解決した後、麻薬事件に関わっているという容疑をかけられ、FBI を停職処分になってしまう。その操作のため、連邦麻薬捜査局からデニス・ブライソンという捜査官が派遣されるのだが、現れたデニスは何と女装してロン毛のカツラをかぶり「デニース」(女性名)と名乗る。どうも捜査のために女装してから、それが癖になったらしい。ちなみに、この女装捜査官を演じたのは、後に「X-ファイル」で主人公のモルダー捜査官を演じるデイヴィッド・ドゥカヴニー。

 さて、デニースとクーパーが事件の話をしていると、そこに美人女子高生(美少女と言うには色っぽすぎる)のオードリーが登場する。彼女はクーパーに恋をしているので、彼が女性(に見える)と話しているのを気にしている様子。オードリーが去った後、デニースがクーパーに「彼女、いくつ?」と聞く。クーパーが「女性に興味があるのか?」と聞くと、デニースはこう答える。

I may be wearing a dress but I still pull my panties on one leg at a time, if you know what I mean.

 このデニースの台詞だ。直訳すると「私はドレスを着ているかもしれないが、パンティをはくのは、一度に片足ずつだ。意味わかるかな」てな感じだろうか。意味わからないよ。

 この部分、LD で字幕を見ると「女の服を着ているけど 普通の男よ」となっていた。うーん、まぁ状況的にそういうことなんだろうな。女装は服装だけのことで、中身はストレートの男性ってことなのだろう。だがそれは、一度に片足ずつ云々という記述から導かれることなんだろうか?

 吹き替えについては掲示板で、「女の服を着てはいるが、パンストが引っ掛かって脱ぎにくいこともあるんだぜ」だったと教えていただいた。これは、最初面白いと思ったが、よく考えると意味不明である。パンストが引っ掛かって脱ぎにくいことくらい、女にだってあることだ。それに、原文は "pull on" なのだから、脱ぐではなく「はく」方ではないか。象徴的に解釈するなら、女性特有と言って良いパンストを脱ぐというのは、むしろ女性としての属性を脱ぎ捨てる行為ではないのか。「脱ぎにくい」のはむしろ、「女性の服を捨てて男性に戻ることが難しい」のではないかということを想像させる。

 というわけで、英語に詳しい方に聞いてみた。

 まず聞いたのは、スラッシュ君。アメリカを中心とした英語圏のスラッシュ(日本でいう「やおい」、つまり同性愛要素のある女性向けファンフィクション)を紹介されている方だ。アメリカのお知り合いに聞いてくださったところによると、"one leg at a time" というのは「ズボンと同じように片足ずつ入れる」という意味ではないかということだった。アメリカ人にとってもわかりやすい表現ではないらしい。デニースはずっとスカート姿だったので、下着をはく時にズボンを思い出していたのだろうか。

 次に、某友人(本人の希望により匿名)。彼女は、「"one leg" というのは、両脚の間にある第三の足のことでは?」というチン説を披露してくれた。それはそれで面白いけど、ちょっと違うような気がする。

 で、結論。意味的には字幕が正しい。ただし、ニュアンス的にちょっと物足りないってところかな。

 ご参考までに、スラッシュ君のサイトは「アメリカンやおい」。「やおい」や「スラッシュ」をご存知ない方(特に男性)には、ちょっとお勧めできないが、スラッシュ対訳が多数あり、ドラマなどで使われるような口語的な会話の実例など、役に立つ情報も多い。



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