3月17日(金)
Episode 2013 – 1/19/90
脚本: ハーレー・ペイトン
監督: トッド・ホランド
朝
-夜空/星の海の映像からフェード・イン。カメラ、ゆっくりと右にパンする。
声: (ささやく) クーパーー……
バックグランドでカタカタいう音。黄色い3つの正三角形を頂点で少し重ねた形の記号(放射能の記号のような形)が、画面の中心で回転し、叫ぶようなノイズとともにカメラに向かって来る。その記号がカメラにぶつかり、画面に炎が燃え上がる。
少佐 (声のみ): 私は炎の中から出て来た。暗闇の中のぼんやりした形。そして……無。
炎からゆっくりと、ガーランド・ブリッグス少佐の映像。ジャングルの中で、石の玉座に座っている。カメラ、ゆっくりと彼に近づく。
少: 次に気がついたら、たき火の消えた後に座っていた。2日たっていた。
ヘイワード (加工された声): 少佐、新しい治療方法を試したら、記憶が戻るかもしれませんよ。
少: 私の記憶には免疫ができている。私は、まだそれを感じている……。
背後で狼がうなり始める。
少: ……感覚も、匂いも、知覚もある。すべてわかっているが、なぜか思い出せない。
クーパー (加工された声): 他に思い出したことは?
少: ほとんどない。巨大なふくろうが羽を広げる、奇妙な映像だけだ。
狼がうなり続ける。
クーパー (加工された声): 巨大なふくろう?
強い光が閃き、飛んでいくふくろうの影の短い映像。続けて少佐の首の映像。前のシーンにあった3つの三角形と同じ赤い傷がある。ブリッグス少佐の顔。光はドク・ヘイワードがインスタントカメラで傷口の写真を撮っているフラッシュだった。カメラがゆっくりとブリッグスから引く。そこは保安官事務所の会議室で、時刻は午前中。ブリッグス少佐、クーパー捜査官、ドク・ヘイワード、トルーマン保安官がいる。
ク: 巨大なふくろう? 大きさは?
少: (指を動かしながら) 意識と記憶を覆い隠すほどの大きさだ。
ヘイワード: (インスタントカメラで撮った写真をクーパーに手渡し)右耳の後ろに同じ大きさの三角形の傷が3つ。
トルーマン: ブリッグス少佐……少佐の任務は何なんですか?
少: 私の任務は……何度も繰り返し言っているが……機密事項だ。だが、秘密を守ることは……重要でないようにも思える。(間。少佐、神経質そうな動き。)世の中には、人間の知略を超えるほど重要なこともある。それほどに重要な情報とは……(間。少佐、気持ちを抑えられない様子。)……神よ……それは魂のことか!? 私の魂の!?
ク: 少佐、最初から話していただけませんか。
少: プロジェクト・ブルーブックのことは知っているかね。
ク: 知っています。未確認飛行物体に関する空軍の調査活動のことですね。
少: 公式には、1969年に中止されたが、調査は「非公式」に続いていた。継続して天体を調べ……ここツイン・ピークスでは地上を調査している。
クーパーとトルーマン、顔を見合わせる。
少: ホワイト・ロッジを探索しているのだ。
M.P.が入って来て、ブリッグスは口を閉じる。
M.P. #1: ブリッグス少佐
少: 来たか
トルーマン: ちょっと待ってくれ
M.P. #1: ライリー大佐の命令です
トルーマン: 誰の命令だろうと、ここはおれの事務所だし、ブリッグス少佐はおれの友人だ。
少: ハリー(立ち上がる)、続きは後で話そう。
トルーマン: 本当にいいんですか?
少: (うなずく) いいんだ。 (クーパーに) それでは。
M.P. #1: 少佐
クーパーの持っている写真に、スプリンクラーからの水滴が落ちる {2020で「手が震える」時の音がする}。
-デニースとクーパー、アーニーに電話させ、ジャンに取引の準備ができたと言わせる。
-ディック、アンディにニッキーの記録が封印されていると告げ、孤児院に戻る。
-クーパー、ルーシーに、新聞にアールからのサインが出ていないかを訊ねる。
-エド、RRでノーマに「話がある」というメモを渡す。
-シェリー、レオに食事をさせ、出かけようとするボビーの顔をはたく。TVでは
「愛への招待状」が放送されている。レオの目がピクピク動く。
-ジェームズ、エドに電話をかけ、自分のお金を全部($12)「ウォリーズ」に送るよう頼む。
-イヴリン、ジェームズの恋人のことを聞き、彼の助けを求める。
9:25 am (壁の時計)
-マイク、RRでネイディーンを振ろうとする。
-ハンク、ノーマにどこへ行くのかと訊ねる。
-ジョシー、玄関に出る。来たのは、彼女をあきらめきれないトルーマンだった。
-オードリー、ベンの「戦場」に来てジェリーに電話をする。
-エド、玄関に出る。ノーマだった。
-ホーク、アーニーに隠しマイクを取り付ける。
(ホーク、粘着テープでアーニーに「ワイヤー」を貼り付けている)
ア: いて! 胸毛のことを考えてくれよ!
ホ: ひどい汗だな、ナイルズ。
ア: そりゃどうも。気が昂ぶってるせいさ。多汗症でね。ガキの頃からそうだったんだが、戦争までは気づかなかった。朝鮮戦争だぜ、知ってるか? ん?49 度線まで部隊を率いて行ったんだ。皆ガキみたいな連中だったぜ。あんな地獄だなんて知らなかったさ。
ク: アーニー! 現代の、この場所に戻ってくれ。もう一度、段取りをひとつひとつ説明してくれ。
ア: わかった。デニースを……デッド・ドッグ・ファームに案内する。そこで彼女をルノーに紹介する。
ク: そう。
ア: そこでルノーに商売をさせ、終わったら出て来る。そうだろ?
ク: よろしい。ハリー、そこで君の出番だ。 (トルーマン、頷く) うーん……ぼくも行きたいが、今は停職中で権限がない。
ア: そうだな
ト: ああ……そのことは考えてた。 (クーパーにバッジを投げる) 保安官補に任命する。FBIの損失はおれがもらったよ。
(クーパー、バッジを見る。番号は13だった。)
ク: (嬉しそうに) がんばるよ
ホ: (ワイヤーの取り付けを終え) できた。出かける前に汗を吹いた方がいいな。 (手を拭いて去る。)
ア: ええい、ちくしょう! (クーパーとトルーマンに) えーと……どれくらいかかるんだ、えーと、その、取引を終えてからあんたらが農場に入るまで。
ク: (バッジを留めながら) 君が出て来たらすぐに入る。
ア: ちょっと、聞いていいか?
ト: 何だ、アーニー?
ア: やっぱりこんなことイヤだ! おれの仕事じゃねぇぜ! おれは臆病者なんだ! やりたくない! おれは公認会計士だぞ!
ト: アーニー
ク: アーニー
ア: (神経質に笑う) ちょっとあわてただけだよ。おれは……おれはクールだぜ。さて、行くか?
ク: デニースは?
ト: そういえばいないな
(ドアが開く。デニス、男性の服装で登場。髪は後で結んでいる)
デ: (得意げに) 今日はデニスと呼んでいいぞ。あ、いや……この方が合ってると思って。 (クーパー、明らかに喜んでいる様子)
どう思う?
(トルーマン、口笛を吹く)
-アンディとディック、ドリット孤児院にいる。
デ: 我々の調査活動は「内密に」行わねばならない。まず、鍵を開ける。ちょっとした技術が…… (アンディ、ドアを開ける。鍵が開いていた) やったな ! 入ろう
ア: 皆はどこだろう?
デ: 昼食だよ。さて、ファイルはここだな……N、N、Nと……(別のファイルキャビネットを探す) Nだ! ナイルズ……ネスター……ネザビー……、ニードルマン、ニコラス……ニードルマンか、これがニッキーのだな。
ア: 車の中で読もう
デ: まぁ待て、アンドリュー
ア: (イラついて) ディック!
デ: シッ! 普通の記録だな……ふむ……出生地……最初の養子縁組……何回も里子になっているんだな。
ア: ディック!
デ: (アンディを無視して) うーん、ややこしいな。どこに秘密をかくしてるんだ、ニッキー?
(ブリュースター夫妻が扉のところに現れ、手を振る。アンディ、2人に気付く。)
ア: ディック!
(ブリュースター夫妻、入って来る。ディック、驚いて跳び上がり、あわてて
ニッキーのファイルをトレンチコートに隠す)
ブ: どうも!
(アンディ、固まったまま部屋を横切ってディックの横に立つ。)
ブ: ブリュースターです。 (笑う) ちょっと早いかと思ったんですけど。1分でも早く坊やに会いたかったもので……。会えます? ドニーはどこでしょう。
デ: えーと、ドニー君はですね……ええと、死んでます。 (ブリュースター夫妻、ショックを受けた様子。) あ、えーと、つまりですね、死ぬほど疲れてるんです。ちょっと具合が悪いようでして。
ブ: 昨日は元気でしたのに。
(ディック、口ごもる。)
ア: ディック!
デ: ちょっと待て……ウッディ。まずお客様の用事を済ませてからだ。で……何でしたかな?
午後
-エド、玄関に出る。ドナがジェームズを探していた。ドナ、自分がジェームズに金を届けると言う。
-ノーマが帰り、ネイディーンがハンクからエドを救う。
-ボビー、ベンに、次いでオードリーに会う。 オ: パパには治療が必要だわ。
-キャサリン、ベンを訪ねて来る。
-ジェームズ、修理した車をイヴリンに見せる。イヴリン、マルコムの見ているところでジェームズを誘惑する。
車のシートからシャンペンの瓶が消える。
-デッド・ドッグ・ファーム。アーニーのシャツから煙が出て、囮がばれる。ホーク、応援を呼ぶ。クーパー、アーニーとデニスと引き換えに人質になる。
夕方 (半月)
-イヴリン、ジェームズのいるベッドから出てマルコムと会う。
-ジャンと騎馬警官とクーパーが中央の部屋にいる。
ク: おれが死んで何の役に立つ?
ル: 弟が2人死んだ……おまえのせいだ
ク: なぜだ?
ル: おまえが来るまでは、ツイン・ピークスはただの田舎町だった。弟はガキやトラック野郎にヤクを売っていた……『片目のジャック』はビジネスマンや旅行客で賑わい……みな平和な生活を送っていた。女が死に、おまえが来た……それですべてが変わった。弟のベルナールは撃たれて森の中で……死んだ。もう1人の弟は、女の親父に枕で窒息させられた……。誘拐に殺人……この街に平穏はもうない。平和な夢は突如として悪夢になった。そこでだ。おまえが死ねば、もう殺人は起こらない。悪夢を運んで来たのはおまえだろう。だから……悪夢は、おまえとともに死ぬ。
-デニス、RRの制服で食事を運んで来る。クーパー、デニスのストッキングから隠してあった銃を抜き、ジャンを撃つ。デニス、騎馬警官の尻を蹴る。
-シェリー、断続的な停電で目を覚まし、レオを見つける。
-保安官事務所が停電する。ルーシー、火事が2件と爆発が起きたと言う。クーパー、チェス盤を指差している死体を発見する。
ク: チェス・ゲーム……ウィンダム・アールの次の手だ。
[チェス盤の図の見本の次に、この場面のボードを示す。チェス盤や駒の描き方は米国のものを採用。ヨーロッパとは方式が違うので注意されたい。]