通算29話「5つの大罪」
写真投稿サイトのユーザー全員に遺体の写真が通知される。メタデータで位置を調べて行ってみると遺体は本物。身体にはQRコードが貼付され、謎めいたメッセージが残されていた。
- 脚本:Matt Whitney
- 監督:Rob Bailey
- 初回放映:2016-03-06
QR (quick response) code:カメラで読み取ると情報が得られる図形パターン
写真投稿サイトPiCTHREADのユーザー全員に死体写真が送られる。位置情報によると場所はボストンの教会。行ってみると、牧師のエイデン・ハリソンが写真どおりの状況で死亡していた。舌を切り取られ、身体にはQRコードが貼り付けられていた。
調べてみるとPiCTHREADのユーザー全員がいつのまにかハリソンをフォローしていた。ハリソンは長年SNSで伝道を行っており、最近は同性婚や妊娠中絶に反対するメッセージを多数投稿し、「ヘイトスピーチ」として削除されていた。フォロワーは、先週まで8万人程度だったが、現在は2億人以上。PiCTHREADのシステムがハッキングされた可能性がある。
ハリソンは開いたラップトップの上に倒れ込んでいたが、そのマシンは新品同様でファイルは1つだけ。」If you can’t say anything nice, don’t say anything at all.(良いことが言えないなら何も言うな)」と繰り返し書かれていた。ところどころ間違いがあるので、コピペではなく何回も手作業で入力したものと思われる。
ネルソンは、QRコードから解読したURLにアクセス。「Some things are better kept behind closed doors.(扉を閉じて隠した方が良いこともある)」というメッセージが表示され、その直後、それがトリガーになったようにPiCTHREADに通知が入り、ベッドに横たわる若い男女の写真が投稿される。ハリソンの投稿と同じハッシュタグが付けられていた。
今度の被害者は学生のニコール・ホーガンとグレッグ・ロバーツ。犯人はまずニコールの頭部を撃ち射殺。そしてグレッグに自撮り棒を握らせて写真を撮らせ、その後グレッグも射殺した。今回も被害者の体にQRコードがあった。
PiCTHREADのプログラムには強制フォローのバグが埋め込まれており、ハリソンのページを開くだけでフォローする仕組みになっていた。さらにそのユーザーのフォロワーにも同じコードがコピーされて高速で拡散し、48時間後にはユーザー全員がフォロワーになるという仕組みになっていた。
ニコール・ホーガンは「セックス・セルフィー」の投稿マニアらしく、さまざまな男性と裸でベッドにいる写真を何枚も投稿していた。ハリソンはヘイトスピーチ、ホーガンはヌード写真で「SNSの規約に反する投稿を多数行っていた」という共通点がある。SNSでの禁止項目は、ヘイトスピーチ、ポルノの他に、暴力、ドラッグ、荒らし行為があった。
だが2人の投稿は規約違反で削除されているので、一般ユーザーの目に触れる機会は少ない。クラミッツは、PiCTHREADで削除を担当する部門の端末情報を収集する。投稿がPiCTHREAD社内の端末から送られたことはわかったが、発信元が偽装されており特定できない。そこで、音声ファイルを送ってスピーカーから出力させてみたところ、端末を使用したのは、エイヴリーに削除部門を案内した責任者のサーシャ・ボイドであるとわかる。
ネルソンは犯人のサイトを調べて次の標的はドラッグであることを知る。写真を発見し、メタデータから位置情報を割り出してみたところ、該当する場所ではドラッグユーザーのライアン・キルマーが倒れていた。キルマーは致死量の薬物を打たれていたが、危ないところで救出される。
PiCTHREADに新規投稿が通知されるが、今回は写真がない。ラッセルはサーシャのプロフィール画面を出し、「知り合いかも」のアカウントを調べるよう指示。ここには、そのユーザーと物理的に近い位置にいるユーザーが表示される仕組みになっている。そこで、サーシャの近くにいて荒らし行為を行ったユーザーを絞り込んでみると、該当するトビー・アレンが閉鎖された劇場にいることがわかる。エイヴリーらは劇場に突入してトビーを保護するが、サーシャは被害者らを非難し「投稿を削除しても何の解決にもならない」と言い、手にしていた銃で自殺してしまう。
サーシャの遺体にはQRコードが添付されていた。彼女は「暴力」の罪で最初から自殺するつもりだった。コードの送り先はPiCTHREADのサーシャ自身のプロフィールページだった。
SNSでの禁止行為。挙げられている5項目は「ヘイトスピーチ、ポルノ、暴力、ドラッグ、荒らし行為」だが、これは実際の基準なのだろうか。SNSでの削除対象としては、他にも著作権侵害やデマ(フェイクニュース)、プライバシー侵害などがあると思うのだが。
このエピソードの放映は2016年3月。この年は6月に英国の国民投票でEU離脱が決まり(Brexit)、11月に大統領選挙でトランプが勝利した。その両者でSNSが果たした役割を考えると、ネットの危うい状況がいろいろ可視化された年だった。このエピソードはその先取りではなく、この時点で既にSNSの危険性は十分に周知されていたのだと思う。
それから9年経った2025年現在。X(旧Twitter)を所有するイーロン・マスクのフォロワー数は2億人を超えている。最初の被害者が「全ユーザーにフォローされてフォロワー2億人」だったのとほぼ同程度というのが偶然だが面白い。それだけネットの規模は拡大し、ユーザーの依存度も大きくなり、状況はさらに悪くなっているように思える(良くなった点もある)。
このシリーズの事件全体に対して言えることだが「9年前はこういうことが問題だったんだね、今じゃ考えられないね」「9年前ってまだこの程度だったんだ?」と思うことがほとんどない。9年間私たちは何をしてきたんだろうと思わされる。
ところで終盤でのサーシャの遺体、銃をくわえて自殺したにしては顔がきれいすぎな気がした。
使用楽曲
- Can U Feel That by Stranger
- Way from You (feat. Tirzah) by baauer
2025-06-15