通算104話「天使のささやき」
脳腫瘍を患う建築家が失踪。前日に白血病を患う知人のお別れパーティに出席していたが、その後の足取りがわからない。彼女は勤務先の建築事務所の経営者と揉めていたらしく、口論するところを見られていた。
WITHOUT A TRACE/FBI 失踪者を追え! 5thシーズン 前半
- 脚本:Gwendolyn M. Parker
- 監督:Scott White
- 初回放映:2006-12-03
失踪者:オードリー・ウェスト
脳腫瘍を患い余命1ヶ月と診断されている建築家のオードリー・ウェストが失踪。白血病を患うゲイブのお別れパーティに出席した後、「ライアン」と名乗る若い男の車に乗って帰った後の行方がわからない。ゲイブはその後、薬物の過剰摂取で死亡していた。
オードリーは、有名建築家のブライアン・ゲイガンが経営する建築事務所を休職していたが、利益配分に関してゲイガンと争い、ファイルを勝手に持ち出したと非難されていた。
「ライアン」は、オードリーを担当する看護師の恋人ライアン・レナードであると判明。パーティーの招待客ではないが、勝手にやって来て、客のコートのポケットから処方薬を抜き取っていたようだ。
ライアン・レナードが事故を起こし病院に収容される。ライアンはオードリーに頼まれて車で送り、どこかで車を停めた。その場所は「野原の近くで、白いドレスの女性がガラスを投げてきた」と言うが、現実の光景とは思えず薬物の影響と思われた。
現場付近を調べてみると、その光景は、画廊に飾られていた絵画に描かれたものとわかる。画廊では窓ガラスが割られており、修理している作業員の話では、女性がオーナーともめて彫刻を投げたという。オーナーとは建築家のゲイガン。ゲイガンの評価を高めた建築は、実はオードリーが設計していたのだ。オードリーは見返りに金銭を要求し、断られて激昂し、その場にあった絵を持って立ち去っていた。
オードリーはサポートグループを通じてカーラ・ネルソンという女性と知り合い、彼女から民間療法を勧められていたようだ。
オードリーはカーラ・ネルソンに大金を払っていた。カーラは「自分はこの薬草で治った」と言って草を売りつけていたが、実際は最初から病気でも何でもなかった。カーラは独自の「セラピー」を行い、オードリーから少女時代に「汚されたと感じた」出来事の話を聞き出し、回復のために「僧侶に寄付すること」と「彼に会って清算すること」を勧めていた。
当時カーラが在籍していた寄宿学校は、現在は廃校になっているが、22年前に何かの事件が起き、理科教師のジェームズ・コーウィンが職を失っていたらしいとわかる。
コーウィンに事情を聞くと「オードリーが突然会いに来た」と話す。22年前、オードリーはコーウィンと2人で天体観測に出かけたことがあった。その当時コーウィンは大口の寄付者から嫌われ、校長は解雇の理由を探していた。校長はオードリーの親が経済的な問題を抱えることを知って奨学金をちらつかせ、コーウィンからわいせつ行為を受けたと言わせたのだった。オードリーは自分のせいでコーウィンが教職を追われたことをずっと気に病んでおり、コーウィンの人生を修復すれば自分も救われると思って訪ねて来たのだった。オードリーはコーウィンと話して吹っ切れた様子になり、次のバスで帰ったという。
バスプールで話を聞くと「若い男性と一緒だった」とわかる。付近を調べると、オードリーが血を流し路上に倒れていた。強盗に襲われたらしい。オードリーは病院に搬送され無事に手当てを受ける。
余命いくばくもないことを知り、怒りや苛立ちを抱える失踪者。過去と向き合い清算しようとする試み。そして家族のもとへ帰る失踪者。WaTのエピソードとして悪くはないのだが、やはり何か不足している気がする。ハリケーンの話の時にも思ったのだが、WaTならもっと心に染み入るような話にできるはずだ。オードリーの心情をもっと丁寧に描写することはできなかったのだろうか。
その代わりにと言っては変だが、病気に関してヴィヴィアンの回想が入る。家庭円満、子育てをしながらも仕事に邁進しているさなかの宣告――ということで、ヴィヴィアンと共通する要素はある。それはそれで良いのだけど、失踪者はヴィヴィアンじゃないので!
オードリーが画廊から持ち出した絵、あれは結局どうなった?
2025-06-28