Law & Order - Season 7, Episode 10 ====== #144 Legacy ====== * 邦題:「名残」 * 脚本:Ed Zuckerman, Jeremy R. Littman * 監督:Brian Mertes * 初回放映:1997-01-15 ---- ===== 事件概要 ===== ==== People v. Estelle Muller ==== プリントTシャツの製作会社を経営するジム・シェパードが自宅の近くで銃撃され、頭を撃たれて重傷を負うが一命を取り留める。妻のロビンは最初の夫を亡くし、夫の親友だったジムと子連れで再婚。夫婦仲は良く、ジムはロビンの連れ子を養女にするつもりだったという。 使用された銃弾は、2年前に起きた別の銃撃事件のものと一致する。2年前の事件では、殺し屋を雇っての犯行が疑われており、また今回の事件とよく似た男が目撃されていた。 その男は自称コンサルタントのハワード・フィリップスと判明。さらに、殺し屋がジムの行動を事前に知っていたらしいという状況がわかり、ロビンの前夫の母親であるエステル・ミュラーの存在が浮上する。エステルの亡夫は刑事弁護士で、依頼人の中には2年前の銃撃事件の関係者がいた。そこからエステルに殺し屋を紹介した仲介者がわかり、ブリスコー刑事が囮捜査を演じてエステルを逮捕。実行犯のハワード・フィリップスも逮捕され、2人は第1級謀殺の共同謀議、謀殺未遂、第1級暴行罪で起訴される。 フィリップスは大規模な犯罪組織の仕事を請け負っていたため、連邦検事が身柄を要求。結局フィリップスを連邦で、エステルを州で裁くことになる。 マッコイはエステルが高齢であることから「謀殺未遂を認めるなら共同謀議は外してもよい」と取引を持ちかける。エステルは「私の息子を殺した件でジムを訴追するなら、何でも言うとおりに答弁する」と言う。 ロビンの前夫リック・ミュラーは5年前に崖から落ちて死亡。その場にはジムが一緒にいた。エステルは「息子は高所恐怖症だったので、そんな事故はありえない」と言ったが、2人とも飲酒していたこともあり、事故と判断されていた。エステルは、ロビンとジムが愛人関係になり共謀してリックを殺したと確信し、息子の忘れ形見がジムの養女になることをどうしても許せず、犯行を決意したのだった。 リックは事故死として扱われ、正式な検死は行われていなかった。そこで棺を掘り起こして改めて調べたところ、頭部には2箇所の打撲傷があり、高所からの転落と思われるのはその片方だけであるとわかる。もう片方はそれより深く、ちょうど野球のバットで殴ったような大きさだった。それで殺人と判断され、ジムは逮捕される。 ==== People v. Jim Shepherd ==== 公判が始まり、ジムの友人が証言する。ロスと事前に話した時、彼は「ジムにはロビン以外に交友関係はなかった」と言っていたが、いざ証言台に立つと前言を翻し「ジムには他に恋人がおり、ロビンが特別だったわけではない」と言い出す。友人として庇っているのは明らかだった。 そこでマッコイとロスは他の証人を探し、ロビンが一度同窓会のためペンシルヴェニアのハリスバーグに行ったことを知る。ジムもその時ハリスバーグにおり、同じホテルに泊まっていたのだ。ジムは「自分は出張で行ったのであり、ロビンがいることも知らなかった、本当に偶然だった」と主張する。実際、ロビンはジムと現地で出会ったものの、それ以上行動を共にすることもなく、ずっと他の友人と一緒だったことがわかっていた。 マッコイは反対尋問に立ち、ハリスバーグへの旅費が経費として計上されていないという事実を突きつける。ジムは偶然を装ってハリスバーグで鉢合わせするようお膳立てし、ロビンを誘おうとした。だがロビンが誘いに乗らなかったので失望し、「別の方法で」ロビンを手に入れようとしたのだった。 その証言を聞いたロビンは検察側の証人となり、リックの生前からジムから高価なプレゼントを贈られたり、キスされたりしたことを証言する。その時は特別な意味があるとは思わず、あるいは酔っているだけだと思い込み、冗談で収めようと「私が結婚してさえいなかったら」と言ったのだった。 ジムは有罪の評決を受け、ロビンは離婚を申し立てる。 ---- ===== 感想 ===== ごく平凡な、円満家庭のマイホームパパを暗殺する理由とは? ……なんていう副題が頭に浮かんでくる冒頭場面。実行犯はどうやらプロの殺し屋で(やり損ねたけど)、依頼人の黒幕は娘のお祖母ちゃんだった。 まず時系列に沿って事件と人間関係を整理してみよう。まず、リックとロビンが結婚して娘が生まれる。その後リックが崖から転落して死亡。その時一緒にいたのは親友のジムで、ジムは責任を感じてロビンを支え続け、半年後にロビンはジムと再婚。2人の間には息子が生まれるが、ジムはロビンの連れ子も我が子同然に可愛がり、近々養子縁組をする予定になっていた。しかしリックの母エステルは、ジムがリックを殺したとずっと疑っており、息子の忘れ形見である孫娘がジムの養女になることに耐えられず、殺し屋を雇ってジムを殺そうとしたのだった――それが冒頭場面。ジムが運ばれた病院で、ロビンは「最初の夫の時もこの病院に来たの」と涙を見せる。 リックは崖からの転落死で事故と判断されていたが、目撃者はジムひとりだけ。エステルは、ロビンとジムが愛人関係になって、邪魔者のリックを殺したと疑っていた。エステルの夫は刑事弁護士で、その筋の人とコネがあったようだ。そこで殺し屋になりすまして囮捜査をするブリスコーさんがチャーミング。カーティス刑事は若い女性に、ブリスコー刑事は年配の女性にモテモテですね! リックの棺を掘り起こして調べ直す場面。CSIならご遺体が映る所だが、ここでは最後まで布で覆った状態のままだった。で、事故でなく撲殺されたとわかり、次に何をするのかと思ったら、ジムがリックの生前からロビンに横恋慕していたという証拠を探す。撲殺されたとわかった以上、普通に考えて犯行が可能なのはその場にいたジムだけだと思うのだが、それでも動機の立証が必要なのは、動機がないと「謀殺」にならないからだろうか。 ジムにしてみれば、リック殺害後はもう思うままだったろう。夫を失い、赤ん坊を抱えて途方にくれる彼女を何かとサポートする。リックが「事故死」した時に一緒にいたのだから「彼を助けられなかったことに罪悪感を感じて」ということで過剰なサポートも言い訳ができる。ロビンはジムの誠実さに打たれ、いつしか2人は……という、まるでドラマのような展開になった。ドラマだけど。 リックの生前にロビンが言った「私が結婚してさえいなかったら」という言葉。 結婚しているから、他に好きな人がいるからダメよ、というのは一般的には効果的な断り方だが、ストーカー相手にこれを言ってはいけない――と何かで読んだことがある。そう言われると普通は「自分の入る隙はないんだな」と思うものだが、ストーカーな人だと「そいつさえいなければいいんだ!」と思ってしまうことがあるようで……この場合のジムはまさにそのパターンだったわけだ。 ジムは有罪の評決を受け、ロビンは離婚の申立を始める。離婚するのは良いが、2人の子どもが本当の事情を知ったら、と思うと怖い。弟のパパがお姉ちゃんのパパを殺害し、お姉ちゃんのお祖母ちゃんは弟のパパを殺そうとして刑務所行きになり、ママの証言が決め手になって弟のパパが刑務所行きになったわけだから……。 --- //Yoko (yoko221b) 2012-06-18// [<>]