Law & Order: UK - Season 2, Episode 5 ====== #18 Survivor ====== * 邦題:「克服」 * 脚本:Emilia Di Girolamo * 原案:Matt Witten, Richard Sweren * 監督:Andy Goddard * 初回放映: 2010-10-07 ---- ===== 事件概要 ===== ==== Crown v. Jackson Marshall and Tamika Vincent ==== 刑務所の看守、チャーリー・タイナーが射殺される。 職業柄、犯罪者から恨まれているという動機が考えられたため勤務先で事情を聞いたところ、タミカ・ヴィンセントという受刑者が薬物検査を拒否して独房に入っているらしいとわかる。服役する前は、現場に近い団地にし生んでいた。 以前にタミカを起訴したのはアリーシャだった。タミカは麻薬入りのコンドームを飲み込んで国内に持ち込もうとした運び屋だったという。取引を拒否し、運搬を指示した売人の名前を言わなかったため、初犯にしては長めの刑期を言い渡されていた。警察はその黒幕を長年追っており、ジャクソン・マーシャルという人物であることもわかっていたが、タミカはマーシャルを愛し、証言しようとしなかったのだ。 マーシャルは麻薬にからむ複数の事件の容疑者になっていた。事件の数日前、タミカがマーシャルに電話したことがわかる。タミカの母親は、弁護士費用だと思ってマーシャルに多額の現金を渡していた。タミカがマーシャルに依頼し、タイナーの殺害を依頼していたという状況が浮かび上がる。 マーシャルの自宅からは9mm弾が発見され、マーシャルは逮捕されるが「タミカに殺人を依頼されたことは認めるが、断った。金を受け取ったのは借金があったからだ」と主張。 別の囚人に話を聞いたところ、タイナーは麻薬の売人であり、刑務所内に麻薬を蔓延させていたらしい。そしてタミカは「電話で誰かに助けを求め、了解を得ていたような話しぶりだった」という。だが実際に証言を――となると、報復を恐れて口を閉ざしてしまう。家族に危害を加えると脅されているのだ。 タミカが報酬を払ったことは母親の供述で明らか。マーシャルの車のハンドルには火薬の残渣があった。さらに、別件で逮捕されたクロアチア人ギャングが、改造銃を撃ったと供述し、その相手がマーシャルらしいとわかったため、タミカとマーシャルは同時に起訴される。 その後、タミカが妊娠10週で流産したばかりだったことがわかる。殺害の動機は麻薬ではなくレイプだったのだ。タミカはタイナーの精液をこっそり保存し、刑務所長に訴えようとしていたが、タイナーが部下に命じて家族を脅させていたらしいとわかる。 スティールはタミカの起訴を取り下げ、マーシャルを追及しようと決意するが、マーシャルの弁護人は銃を証拠から排除するよう求める。逮捕されたギャングが釈放されたい一心で供述したことなど信用できないというのだ。判事はそれを認めて銃を排除する。 銃が排除されると重要な証拠を欠いてしまうことになる。スティールはタミカを証人保護して証言させようとしてキャッスルと対立。キャッスルはあくまで「殺人犯を自由にするわけにはいかない。タミカを有罪にしろ」と命じる。スティールはそれを無視して、タミカを説得するようアリーシャに指示。タミカと同じ貧しい地区に育ち、苦労して検事になったアリーシャは「マーシャルのような男は、誰かが止めないと犯行を繰り返す。10年後、娘があんな男にだまされていいのか。今後20年を無駄にしたいのか」と言って説得し、証言に同意させる。 タミカは法廷に立ち、タイナーに脅されてレイプされたこと、家族を脅されたと知り、「協力者を見つけて」殺害を依頼したと認めるが、マーシャルが傍聴席に現れ、彼女は「実行犯の名前は知らない」と言う。スティールは、タミカが逮捕された麻薬事件のことを尋問し、マーシャルがタミカを囮として利用しただけだと タミカはマーシャルの関与について「知らない」と言い続けていたが、次第に激昂し、ついにマーシャルの関与に対して「Yes」と答える。 陪審員は「評決不能」という結果に達するが、再起訴の道は残されている。アリーシャは性犯罪被害者の支援活動をしていると話し、「レイプは誰にでも起こり得る犯罪だけど、立ち直って、より強くなることができる」とタミカを励ます。 ---- ===== 感想 ===== 本家エピソードはシーズン9の「過ちが生んだ悲劇」だが、こちらはまだ未見。 冒頭、女の子2人が銃を拾って遊んでいたので、これが暴発するんじゃないかと思ってヒヤヒヤしながら見ていたが、そういうことはなく無事に(?)被害者発見。それにしても演技うますぎじゃないか。演劇部所属? さて、殺人事件ということで捜査を進めていくと、その背景に大掛かりな不正事件があったことがわかってくる。誰を何の罪で裁くのか? と、見ていて少々混乱させられる。 看守のタイナー殺害事件では、実行犯はマーシャルで依頼した主犯がタミカ。 刑務所内のレイプ事件ではタイナーが主犯でタミカが被害者。そしてタイナーは新人の若い看守を脅して協力させていた。 そして、そもそもタミカが刑務所に入るきっかけを作ったマーシャルの麻薬商売。 これはそもそもタイナー殺害事件であり、形式的に罪の重さを考えれば、殺人の主犯であるタミカが最も重いのかもしれないが、背景事情全体を考え合わせれば、そのタミカがいちばん気の毒に感じられる。しかし、だからといって殺人を見逃しても良いのか? 検察内でも意見は分かれるが、スティールはタミカと取引をして証言させる道を選ぶ。誰を罰すれば社会的な利益が大きいかを考えたのだと思う。タイナーは悪質な看守だったかもしれないが、本人は死亡していて罰することはできない。タミカを罰すれば本人はさらに20年(ぐらい?)受刑することになり、状況は何も変わらない。タミカの証言がなければマーシャルを罰することはできないので(銃が排除されたから)、マーシャルは何の障害もなく麻薬商売を続け、別の女性たちを次々に食い物にしていくだけのことになる。 ではマーシャルを罰すれば? そうしても新たなマーシャルが出現するだけかもしれないが、多少なりとも被害を防ぐことができるのではないか。そう考えると、スティールの結論も納得できるように思う。 とはいえ、いざ公判となるとうまくいかないもので……。マーシャルはタミカを囮に使い、彼女が調べられている間に別の運び屋が通れるようにしたという極悪非道な奴なのだが、タミカは法廷でマーシャルを裏切ることができなかった。しかし、マーシャルに利用されていたことを知ってようやく関与を認める。具体的な描写はなかったが、刑事が意味ありげに見ていたので、あの後マーシャルは逮捕されたのだろう。 結果は評決不能だったが、再起訴の可能性はある。そこでフィリップスがタミカを励ます場面で、シーズン1の「アリーシャ」が思い出される。ここではアリーシャ自身がレイプ被害を受け、その後の公判でもさんざん辛い思いをさせられたわけだが、現在は性犯罪被害者の支援活動に参加しているとのこと。おそらく彼女自身もそこで支援を受けたのだろう。だがアリーシャがタミカに対し「レイプは誰にでも起こり得る犯罪」だと言いつつも、自分自身の被害については口にしなかった点が、精神的な問題の複雑さを思わせる。 それにしてもフィリップスは、アフリカ系で治安の悪い地域で育ち、苦労して検事になったところはロビネット、優等生的なところはキンケイド、そしてレイプ被害に遭った経験はオリヴェットと、本家キャラの属性をいろいろ背負わされているのだな。 --- //Yoko (yoko221b) 2015-10-11// [<>]