Spiral (Engrenages) ====== Episode #1.5 ====== * 脚本:Paul Berthier, Laurence Diaz, Guy-Patrick Sainderichin * 監督:Pascal Chaumeil * 初回放映:2005-12-27 ---- ===== 事件概要 ===== ==== エリナ&ソフィア・アンドレスク ==== 食肉の冷凍倉庫の中で、エリナの妹ソフィアの遺体が発見される。ジルはその情報をミシェルに伝え、薬物を得る。遺体には、縛られた後何度も性的暴行を受けた形跡があったが、死因は手首からの失血。指先にはカミソリを使ったような傷跡があったため、自殺と思われた。 ブノワは、ソフィアのことはエリナから話を聞いただけで面識はないと言う。クレマンは「ブノワは無関係」と判断するが、ロバン判事はまだ納得しかねる様子。ラボルトを捜査しようにも、手帳の現物がなくては根拠に欠ける。ロバンは手帳の盗難に関してクレマンの件を伏せる。 ソフィアが美術館で本を買った時のカード明細を調べたところ、そのカードはブノワの物だったとわかる。クレマンは怒り、尋問中にブノワにつかみかかる。 ==== ゴンカルベス事件 ==== 十代の少女が父親にレイプされたと訴える。母親はアルコールに溺れ問題を理解していない様子。娘は「私が告訴したと知られたくない」と言うので、ロールらは「隣人からの通報」ということにして聞き込みを行うが、父親は犯行を否定。 娘は「父さんは私をレイプし、黒人の作業員を殺した」と言う。ある日窓から銃を撃ち、建設現場で働いていた作業員を殺していたというのが。銃声は現場の騒音にかき消され、工事中の事故として処理されていた。ロールは、その作業員の遺族を訪ねる。妻は遺体を清めた時に頭部の穴を発見して殺人だと気づいていたが、警察は取り合わず事故死の扱いで終わったという。 作業員死亡の件を突きつけられた父親は暴れ出し、「黒人は殺したが娘はレイプしていない」と口走る。 ==== アンドルー事件 ==== 赤ん坊殺害事件で、カールソンはジスレンヌとともに取材を受ける。カールソンは、取材は依頼人を見世物にするだけだと反対するが、ルロワの目的はむしろカールソンをメディアに出すことだった。ジスレンヌは記者の質問から、自分が責められているように感じる。 ジスレンヌはロバン判事のオフィスに乱入し、ナイフを首に突きつける。判事は「裁判で無実が立証されるから」と説得。 ジスレンヌは、保護責任の怠慢により有罪の判決を受けるが、刑罰は免除。カールソンは「有罪は形式だけ。刑罰はないのだから勝ったのよ」と言う。告訴した祖父母は、実刑のないことが不満だが、検事は「有罪は有罪ですから」と言う。ジスレンヌはその後、陸橋から飛び降りて自殺。ルロワはカールソンに「有罪は依頼人にとって良い結果ではないと学んだだろう」と言う。 ---- ===== 感想 ===== 全8話なので、もう折り返し点を過ぎて後半に入ったことになる。事件は相変わらず暗い。娘をレイプして従業員を射殺する父親、アルコールに逃避する母親。娘は修道女を目指している、と父親が言うその口調は娘の信心深さを自慢しているようだが、そのわけを理解していないんだろうか――と思うと、何だか寒々とした感覚にとらわれる。 赤ん坊が殺された事件は今回で終了かな。有罪だけど刑罰は免除する、ということで何だか双方の「顔を立てた」判決みたいだ。裁判が日常である法律家たちは「ただの判決」と割り切って、それぞれに「自分たちが勝った」と言っていれば良いのだろうけれど、被告人にとってはその判決が一生を左右する。ルロワがこの事件を持ってきたのは「メディア受け」する事件でカールソンを売り出そうという意図だったようだ。ジスレンヌの死すら、カールソンへの教訓をもたらす材料に過ぎなかった。 メインのエリナ事件では、ソフィアの遺体が発見されて新たな展開となるか。クレマンは友人(ブノワ)に甘いと思ったが、判事も意外なところでクレマンに甘い。 ラストではモロー美術館でクレマンとラボルトがニアミス。その後、絵の中の女性の姿とエリナのフラッシュバックが重なっていく場面が印象的だ。 その絵と裏側にあった絵は、ウィキメディア・コモンズのモローのページで参照できる。横たわる女性の姿は、モローの絵に繰り返し登場するモチーフでもある。背後の壁もドラマと同じだったけど、本物の美術館で撮影したのだろうか。 * [[http://commons.wikimedia.org/wiki/Gustave_Moreau|Gustave Moreau]] --- //Yoko (yoko221b) 2009-08-18// [<>]