BONES - Season 1
砂漠で休暇を過ごしているアンジェラからブレナンに連絡が入る。1年のうち3週間だけ一緒に過ごす恋人で、写真家のカークが案内人のダニー・ウェバーとともに砂漠へ出たきり戻らず、現地の保安官のもとへ人間の頭蓋骨が届けられたという。ブレナンは休暇を取って砂漠へ向かい、その頭蓋骨を調べる。白人男性でカークと同年代。頭には銃弾の痕があった。ブレナンは頭蓋骨を研究所へ送ろうとするが、保安官の許可が得られないため、ブースを呼び出して協力を要請。
ダニーは先住民族の娘だが、保安官のベンとは異母兄妹。ダニーの現在の恋人はやはり先住民のアレックス・ジョセフという若者で、暴行や麻薬売買の前歴があった。一方、DNA鑑定により頭蓋骨の主はカークと断定される。頭部切断はコヨーテによるものと思われたが、噛み跡に特徴があり、アゴが変形している可能性があった。そして毛髪からはメスカリンという薬物が検出される。
メスカリンはペヨーテ(サボテン科の植物)から採れる薬物で、先住民の儀式での使用は認められている。カークは地元のアーティスト、ウェイン・ケロッグから薬物を得ていた。ウェインに売っていたのはアレックス。
砂漠に住むコヨーテはGPS信号により生息地が把握されていた。ジェファソニアン研究所で専門家が調べたところ、アゴの変形したコヨーテの存在が確認される。現地では大々的な捜索が行われ、カークの遺骨とカメラが発見される。ダニーの姿はなかった。
アンジェラはカークのフィルムを現像。大半は感光してしまっていたが、ダニーと砂漠を写した写真がかろうじて現像できた。保安官はその写真をアレックスに見せて場所を割り出し、ブース、ブレナン、アンジェラを伴ってその場所へ向かう。そこは遺体発見現場とは別の場所で、血痕と何かが引きずられた痕、ケロッグが所有する軍用車のタイヤ痕と飛行機の滑走路らしき平地が発見される。
ケロッグは表向きは彫刻家だが、ベネズエラの紙幣の原版を彫り、偽札作りで財を成していた。事件当日、顧客に「商品」を引き渡したところをカークとダニーに見られてしまい、カークを殺害。遺体を飛行機に乗せて、発見現場に投げ落としたのだった。ダニーはその場を逃れたが、まだ行方はわからない。ケロッグは偽札作りを認めることと引き換えに殺人罪の免責を要求。何としても妹の行方を知りたい保安官は、取引に応じることを考えるが、ブースはもう一度事件現場に戻り、ダニーを捜索しようと提案。
現場へ戻ったアンジェラは、歩いて行くダニーの幻を見る。果たしてその方角でダニーは発見され、無事に救助される。カークを殺害したのがケロッグであることも判明した。
砂漠、ネイティブ・アメリカン、ペヨーテ。ちょっとスピリチュアルな雰囲気を感じさせるエピソード。こういう舞台にはやはり、ブレナンよりアンジェラが向いているようだ。
とはいえ、ペヨーテ売買に偽札作りとは、全然スピリチュアルじゃない真相。夢が壊れるっちゃ壊れるんだけど、それはこっちが勝手に夢を見ていただけだから。その昔カルロス・カスタネダを面白がって読んだこともあるが、彼らの世界には、学問や情報として得られる知を超えた「ここにはない何か」「私たちが失ってしまった大切なもの」がある、と思わせる神秘的な魅力があった。でもそれは、結局のところ「私たちの憧れ」を投影するのに適していたというだけなんだろう。カスタネダも『リトル・トリー』も結局は創作だったらしいし、現実は世知辛くていやーね。
1年に3週間だけ砂漠で一緒に過ごす恋人、というと何となくロマンチックだけど――アンジェラにとって、カークはどういう「恋人」だったのだろう。3週間だけ、仕事も悲惨な殺人事件もすべて忘れて、周囲に何もない砂漠で過ごす「非日常」の恋人。他の49週の間は、存在しないも同然の恋人だった? 「1年に3週間しか愛せないのは私の方だった」というのは、そういう意味だったのだろうか。初期エピでは他の男性とデートしていたしね……その設定がまだ有効なのかどうか知らんけど。