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CSI - Season 4, Episode 5

#74 Fur And Loathing


Oh, hey, Warrick, it's Vegas. People come here to be animals.

事件概要

アライグマ殺人事件

グリッソム、キャサリン、ウォリック、ブラス警部担当。郊外のフリーウェイで、車を運転していた女性が何かを轢き、それに気を取られた瞬間、対向車と正面衝突して死亡した。現場には急ブレーキをかけた跡と、大型の動物の足跡。その足跡をたどっていくと、アライグマの着ぐるみを着た男が倒れていた。

運転していた女性はリンダ・ジョーンズ。彼女の死因には、特に不審な点はなかった。

着ぐるみ男の氏名はロバート・ピット。アルコール依存症患者の自助グループの会員証を持っていた。背中に貫通銃創があり、着ぐるみの中に血が溜まっていた。口に毛玉がついていたが、動物ではなく人工の青い繊維。血液検査ではイピカック(吐剤)とジャコウ油が検出された。ピットの住居には大量のアライグマグッズがあり、カレンダーには「PAFコン」の予定が書かれていた。

PAFコンとは、Plushies & Furries(毛足の長い毛皮とふわふわの毛皮?)コンベンションの略。グリッソムとキャサリンはPAFコン会場で青い着ぐるみを着た「セクシー」という雌猫(?)を発見し、署へ同行させる。その着ぐるみからはイピカックとジャコウ油の匂いがした。「セクシー」の中身はバド・シモンズという中年の男性。毛玉があった理由は、セクシーに「スクリッチング(動物が毛皮をこすり合わせる行為)」していたためだという。だがセクシーの着ぐるみにはピットの精液も付着していた。これはスクリッチングから、より性的なイッフィングへ移行した結果だった。

スクリッチングパーティの会場へ行き、その場にいた全員の着ぐるみを押収。リーという男の狼の着ぐるみからは、イピカックとジャコウ油の匂いがした。リーは、去年のCONでピットに恋人を取られた経験があり、下等なアライグマのくせに狼の自分を侮辱するとは許せん! と怒り、「セクシー」の着ぐるみにその匂いをつけたのだ。だが、イピカックとジャコウ油を使ったのは殺すためではなく、ピットが気分を悪くして家に帰れば良いという程度のことだった。リーの恋人のフルネームは、リンダ・ジョーンズ。ピットを轢いた後でトラックに激突した女性だった。リンダの件は事件性がなかったために車を調べていなかったが、トランクを開けると羊の着ぐるみが入っていた。

現場付近を捜索すると、土にめり込んだ弾丸が発見された。弾道から判断して、かなり上方から撃たれたもの。高台に住む犬のブリーダーに話を聞くと、事件の夜にコヨーテを見かけて撃ったという。ピットはリーのせいで気分が悪くなり、それを飲酒と勘違いしたリンダと口論になり、車を降りて嘔吐しているところをコヨーテと間違われて撃たれ、必死で道路の真ん中へ這い戻ったところへ、戻ってきたリンダの車にはねられて死亡した。リンダはその衝撃で車線を外れてトラックと正面衝突。一見異様な要素に包まれた事件の真相は、実は単なる三角関係と痴話喧嘩と誤射だった。

フリーザー殺人・窃盗・誘拐事件

ニック、サラ、ベガ刑事担当。冷凍室の中で、男性が散弾銃で撃たれて殺されていた。被害者は警備員のアル・セスト。外へ出ようとして力尽きて死に、そのまま凍りついたと思われた。外の自販機が壊され、600ドルが盗まれていた。近くに、犯行に使われたと思しき銃床の破片が落ちており、それには粘着性の物質が付着していた。犯行時、たまたま職場を離れていた警備員ピーティの話によると、直前に日勤のジョージが来たという。

ジョージは車を残して姿を消していたが、突然警察署に現れ、誘拐されたと訴える。日勤のジョージがその場にいたのは、彼が消費期限の切れたアイスクリームを売っており、アルに分け前を渡すためだった。ジョージの話によると、二人が休憩室にいる時に、スキーマスクをかぶった何物かが自販機を壊し、二人を冷凍室に追い立て、その場でアルを射殺した。それからジョージを殴って車のトランクへ引きずり込み、1時間ほどあちこち運転した。ジョージはタイヤに使う工具でトランクをこじあけ、走る車から脱出したという。サラがジョージの身体検査をすると、ズボンの折り返しのところに血痕があり、ジョージはそのまま勾留。

ジョージのズボンに付着した血痕がアルのものだとしても、外側に血が付かないのはおかしい。ニックとサラは、冷凍室と同じ温度で血痕の飛び散り方を実験する。血は空気中で凝固し、凍った状態で床を転がった。犯人はアルの前に立って撃ち、血は横と後方に広がったはず。犯人はジョージではないと判断された。

ジョージの服から採取した塗料のサンプルは、2層になっていた。下の層は、バーガンディの車の塗料で、その上から家庭用の塗料が塗られていた。銃床の破片から検出した接着剤の成分と家庭用塗料を使った車の情報を合わせると、あっさりと該当者が判明し、犯行に使用した散弾銃も発見された。その男バージルを連行しようとすると、誘拐されたジョージが声をかける。親戚だという。ジョージはバージルを信用して、自販機のことはピーティが外出する時間などを話していたのだ。


感想

オープニング前の決め台詞がない。主任が絶句したところで音楽スタート。

今回の話は、台詞の端々で他の作品やら何やらに言及されていて、それを調べるのに一苦労。でも事件そのものは面白かった。アライグマの着ぐるみを着た遺体、という奇っ怪な事件として始まり、PAFコンだの着ぐるみ乱交だの、捜査をすすめるうちどんどん奇怪度は増していくのだが、いざ真相がわかってみると、嫉妬と痴話喧嘩が原因の、実に人間的な事件だった。

まず、着ぐるみで死んでいた男性が手に持っていたタグを見て、キャサリンが「ビル・Wの友達だったのね」と言うのだが、この人はアルコール依存症の自主治療協会を設立した人らしい。“My Name Is Bill W.” (「ジェームズ・ウッズのドランカー」)というドラマにもなった。ちなみにこのドラマには、ビルの親友の役でゲイリー・シニーズが出演。

次に、PAFコンでやはりキャサリンが「ハンター・トンプソンを思い出す」と言っているのだが、これは過激な言動で知られるアメリカのジャーナリスト。最近亡くなったらしいのだが、著書の『ラスベガス・71』は『ラスベガスをやっつけろ』というタイトルで映画化された(監督:テリー・ギリアム、主演:ジョニー・デップ)。この作品の原タイトルが “Fear and Loathing in Las Vegas” で、このエピソードのタイトルはそのもじりだったわけだ。

終盤での主任の台詞「草深い丘(グラッシー・ノール)はあるが、リー・ハーヴェイ・オズワルドはいない」は、ダラスのケネディ暗殺現場のこと。んー、でもオズワルドがいたのはその反対方向にある倉庫なので、グラッシー・ノールにはもともといなかったはずなんだけどな。

ケネディ暗殺事件は、公式には教科書倉庫からオズワルドが撃ったことになっているが、反対側の「グラッシー・ノール」から銃声が聞こえたという証言もある。陰謀説をとなえる人々の間では、真犯人がグラッシー・ノールから狙撃したという説が有力であるとか。

着ぐるみマニアの大会なんて本当にあるの?コスプレショーみたいなものなのだろうか。ネイティブ・アメリカンのフォークロアでは人間と獣が家族だったりするし、人間が内面に獣性を秘めていることはおかしくないことなのかもしれない。……でも、それにしては、着ぐるみがどれも可愛すぎというかマンガ調なのよね……獣になりたい願望なら、もっとリアルな獣がいてもいいと思うんだけど。「獣」化願望と「獣人」化願望は違うのだろうか。とか考え出すと、確かに興味深い。

で、そのPAFコンの中にいてぜんぜん違和感がないんですけど、主任!(キャサリンは明らかに浮いているのに)アライグマに恋人を取られた!と怒る狼男にも「狼はモノガミー(一夫一婦)だが、アライグマはポリガミー(複数相手)だ」と大真面目に話してるし。もしやPAFコンの昆虫版のBUGコンなんてのがあって、それに主任も……。

この着ぐるみ事件のインパクトが強すぎたせいか、サラとニックの事件はどうも印象が薄い。最後まで犯人の正体に気づかなかったジョージも間抜けなら、バージルの犯行も行き当たりばったりで、あまりにも杜撰。そこが逆にリアリティがある気もするのだけど、やはり「いかにもBプロット」な感じ。ニックが親しげにハンバーガーの話をして、警備員の話の矛盾をついたりしていく所は面白かった。

ひとつ気になったのは、低温で再現実験をした時は、血が飛び散る瞬間に凍ってしまい、固形の状態で床に転がったのに、最初の現場では普通に液体状の血が壁に飛んでいるように見えたことだ。小さな飛沫はすぐに凍るけど、大量にどばっと出た血液は凍るヒマがなかったのかな。でも、それなら凝固した飛沫が他にもっと床に「転がって」いてもいいはず……。犯人が扉を開けて出て行く時に温度が上って溶けたのか?


単語帳

Yoko (yoko221b) 2006-03-13