CSI - Season 6, Episode 3
Led Zeppelin, “Stairway to Heaven.”
ベッキー・レスターという女性が、自宅の階段の下で死亡した。発見して通報したのは夫のレイ・レスター。2人で中庭でテキーラを飲んでいるところへ、娘から電話がありベッキーは家の中へ。その後レイは庭でうたた寝をし、目が覚めて家に入ったところで、血まみれで倒れているベッキーを見つけて通報したという。レイと救急隊員の足跡に不自然な点はなかったが、階段から落ちたような姿勢ではない。階段を上る途中で倒れたのであれば姿勢の説明はつくが、手で身体を支えようとした形跡は残っていない。血の飛沫は鈍器で殴った時のような形状だったが、そこは天井が低く凶器を振り回せるスペースはなかった。また、レイがベッキーを殴り殺したとしたら、頭蓋骨にひびが入るはずだが、その形跡もなかった。
娘のスーザンはレイが最初の結婚でもうけた子で、事件当時はベッキーの父親の家に泊まっていた。ベッキーの父ステインは、レイの最初の妻(スーザンの母親)ジャッキーも同じように階段の下で倒れて死んでいたと言う。ジャッキーは心臓に疾患があり、病死と判断されて検死は行われていなかった。
レイの胸には歯形がいくつもつけられていた。レイは最初、ベッキーが噛んだと言うが歯形は一致しない。レイは胸を噛まれることに興奮する性的嗜好を持っていたが、ベッキーとはもう何年もセックスレスで、インターネットで知り合った他の女性に胸を噛んでもらっていた。その相手 “Buffy227” とは噛むだけの関係で性交渉はなく、ベッキーには秘密にしていた。一方でベッキーも職場の男性と浮気をしていた。その相手の男性によると、ベッキーは、レイが最初の妻の生命保険で得た金を隠し持っているのではないかと疑っていたらしい。
レイが金を隠しているなら、ベッキーの保険金を得る必要はないはずだった。しかしレイはBuffy227と一緒にいる写真を撮られ、金を渡さないとベッキーに知らせるという脅迫を受けていた。脅迫状を調べると、ベッキーの指紋と唾液が検出された。ベッキーはレイとBuffy227のことを知り、隠している(はずの)保険金を強請り取ろうとしていたのだ。
ジャッキー・レスターの棺が掘り出され、ロビンスが検死を行う。ジャッキーは同じように階段の下に倒れていただけでなく、同じように頭部に傷を作っていた。レイは「連続階段殺人鬼」かと疑われるが、ジャッキーの傷は持病の心臓発作を起こして階段から落ちたものとわかる。
レイを起訴しようとする地方検事のシンクレアにせっつかれ、グリッソムとキャサリンはもう一度事件の時系列を確認する。そこで、スーザンからの電話がレイの自宅のオフィスからかけられたもので、通話時間も2分だけだったことが判明。スーザンは祖父の家をこっそり抜け出して家へ戻り、電話でベッキーを呼び出し、殴り殺したのだった。血のついた衣服とステッキが、スーザンの部屋から発見された。凶器を振り回すスペースがなかったことや、頭蓋骨に傷がなかったことは、加害者が小柄な子どもで力も弱かったことから説明がついた。スーザンはベッキーの情事の現場を目撃し、彼女がレイを嘲る言葉を聞いて殺意を抱いたのだ。
残る疑問はレイの行動。スーザンからベッキーに電話がかかった後、レイはもう1杯酒を飲んだ。であれば、その直後にスーザンがベッキーを殴り、ベッキーが倒れる音を聞いたはず。レイは家に入り、スーザンの身体についた血をふき取り、義父の家へ帰したのではないのか? 最初はレイが娘をかばい、現在スーザンが父をかばっているのではないのか?
だがレイはただ「証明はできない」と言うだけだった――。
うーん、うーん……前回に続き今回も何だかノれなかった。何かこう、まったりしすぎているというのかな……。
事件自体は良かったのだ。遺体と血痕を観察して、あーでもないこーでもないと仮説をいくつも立てる。どの仮説でも、どこかが整合すると別のどこかが矛盾する。主任の実験も見られたし。そして犯人が誰かわかった瞬間、それまでの矛盾や不整合に説明がつくというのも、モルグ街以来の伝統というか基本形かなと思った。実は子どもが、というのは毎シーズンかならずあるので、今シーズンは早かったわねと思った程度だけど。
で、それはいいのだけど、ドラマの進行にどうもメリハリがなくて、いささか退屈だった。Buffy227は面白そうなキャラだったけれど、「噛んだだけ」だったしな~。彼女にはぜひ再登場して、もっと色んなものを噛んでほしい。
気になったのは、TV.comで指摘されていたのだが、この話がどうやら実際の事件を下敷きにしているらしいということ。この前見たマイアミのエピもそうだったので、正直「またか!」と思わないでもない。
“DEATH ON THE STAIRCASE” というドキュメンタリー番組にもなっているので、有名な事件なのだろう。冒頭の部分はけっこう似ているように思う。夫が911に通報し、救急隊員が行ってみると妻が階段の下に倒れていて、すでに手遅れだった。転落したにしては傷が多すぎたこと、夫に秘密の性癖があったこと(噛まれることじゃないけど)、十数年前に前妻の親友だった女性が同じように階段で死亡していたこと、彼女の遺体を掘り返して検死を行ったこと(こちらの検死結果は殺人だったらしい)など、共通の要素が見られる。現実では夫が起訴されて有罪になり、仮釈放なしの終身刑になっている。
現実に起きた事件を使うというのは、老舗の “Law And Order” でもやっているし、ネタ切れ防止には便利な手法なのだろうと思う。しかし明らかな類似点がいくつもあり、かつ現実の被告人とは違う人物を犯人と名指しするのだから、もうちょっと「フィクションである」ことを明示してもいいのではないだろうか。LAOではエンディングにテロップを出して「現実の○○事件とはこれこれこういう点が違います」と説明していたと思う(全部の事件ではないが、視聴者の誤解を招きそうな場合には)。1)
今回、現場が階段であったことが最も活かされていたのは、結局主任の “Stairway to Heaven.” だったかもしれない。ツェッペリンの名曲、また聴きたくなってしまった。
— Yoko (yoko221b) 2006-12-16