CSI - Season 9, Episode 15
ラングストン、ウェンディ、ブラス警部担当。美術商カーステン・ペニングトンが自宅のプールで死亡する。婚約者のダーシー・ファレルによると、カーステンは死ぬ前に自宅のパーティに来た買い付け師のジェフリーと争っていたという。部屋では、イラクから盗まれてきたらしいメソポタミア時代の壺が割れていた。だがラングストンは、飼い猫のガレスが壺のカケラを舐めていたことを思い出し、模造品であることに気づく。模造品を本物らしく見せかける塗装にヨーグルトを使用するのだ。
ジェフリーはカーステンに贋作をつかまされたことになるが、殺しても金は戻らない。一方、カーステンは死ぬ前に10万ドルの預金を引き出し、逃亡の準備をしていたらしいことがわかる。そこで改めて自宅を捜索したところ、血痕を洗い落とした形跡のあるダーシーのドレスが発見される。
事件は解決するが、ラングストンはキャサリンが担当するモーテル事件の関係者である、プロデューサーのトリップ・リンソンがカーステンにそっくりであることに気づく。
キャサリン、グレッグ、ヴァルタン刑事担当。ハリウッドから来たジェナ・マッキンの遺体がモーテルで発見される。死因は頭部を撃たれたことで、天井には高速飛沫血痕と2発の銃弾の跡があった。ベッドの下にはカメが隠れていた。
カメの甲羅の指紋から、ジェナの夫で俳優のミッキー・ロスが現場にいたことがわかるが、ミッキーは犯行を否定し、「ジェナは自殺した」と主張する。ミッキーは4年前、プロデューサーのトリップ・リンソンに20万ドルを騙し取られ、妻のジェナをも誘惑されていたが、トリップは結局ジェナを捨てて他の女性と婚約。ジェナはトリップの婚約を雑誌で知り、彼を追ってベガスへ来たのだった。
ミッキーはジェナの居場所を突き止め、ペットのカメ「ガレス」を連れて会いに行き、2人でやり直そうと説得した。だが、ジェナはトリップから「人違いだ」と突き放されて絶望し、結局死を選んでしまったのだ。
自殺で2度撃つことは不可能と思われたが、ミッキーは「銃声は1発だけだった」と主張。弾が古く劣化している場合、引き金を引いても弾丸が銃身に詰まってしまうことがある。そこでもう1発撃った時に、1発目が2発目に押し出されて1度に2発発射されたものと思われた。
キャサリンはラングストンにトリップの映像を見せるが、そこへ入って来たニックが、自分の事件の関係者ライアン・モートンにもそっくりであることに気づく。
ニック、ライリー、キャバリエ刑事担当。私立探偵ショーン・ヘイガンの遺体が駐車中の車で発見される。ヘイガンを撃った弾は手の平を貫通し、胸や肋骨に当たってピンボールのように跳ね返り、体内をズタズタにしていた。着衣からは犯人の物と思しきコンタクトレンズが発見される。ヘイガンは当時、ポール・アントンという顧客の依頼で不動産開発業者ライアン・モートンの行方を探っていた。
ニックはライアンが愛犬「ガレス」とともに移っているPRビデオを見て驚く。婚約者に殺害された美術商のカーステン・ペニングトン、自殺したジェナ・マッキンを騙したプロデューサーのトリップ、そしてこのライアン・モートンの3人は同一人物だったのだ。
ヘイガンを撃った銃がゴミ箱から回収され、アントンの銃であることが判明するが、アントンは「銃をライアンに譲った」と主張する。アントンは離婚で妻と娘と別れており、同郷のライアンを息子のように思っていたのだ。ライアンは実は詐欺師で、アントンからも大金を騙し取っていたが、医師であるアントンは「自分の判断力が疑われるから」と通報していなかった。
コンタクトレンズのDNAを調べた結果、持ち主はライアンの兄弟であることがわかる。ライアンにはガレスという兄がおり、彼はペットにいつも兄の名前をつけていたのだ。
改めてペニングトン家の防犯ビデオの映像を調べたところ、事件の夜にガレスが来ていたことがわかり、その後ガレスはあっさり逮捕される。
ガレスは、ライアンが自宅を勝手に担保に入れていたことや、ヘイガンから「顧客の金を返せ」と迫られたことなどを供述する。自分はずっと母親の世話をしていたのに、ライアンは詐欺行為を繰り返して贅沢三昧。だが弟にはカリスマ性があり、自分も弟が好きだったので殺してはいないと主張。
だが、逮捕時のガレスの服装を調べた結果、下着とその他の衣服がちぐはぐであることがわかる。ガレスは下着だけが高級品で、他はバーゲン品。逆に、プールで死んでいたカーステン(=ライアン)はバーゲン品の下着を着用――つまり、プールで死んだのは実はガレスの方で、ガレスとして逮捕されたのがライアンだったのだ。車からは、カーステンが引き出していた預金の10万ドルも発見される。
ダーシーは、カーステンがガレスを殺害し、脅されて偽装を手伝ったことを認める。
一見無関係な事件と事件の間にちょっとずつ関わりが見え、時間を巻き戻しながらひとつずつ描写するという、シーズン5の「冷たい街」っぽい構成のエピソード。1人4役というのは、シーズン7の「レジェンド・オブ・ベガス」を思い出す。なのでアイデアとしてはそれほど斬新ではないはずだが、見た印象としては新鮮な感じで面白かった。
最初に見た時は「え? え?」という感じで、なかなか時系列を把握できなかったが、落ち着いてじっくり見てみると事件自体はどれもこれもシンプルに解決していた。ダーシーがカーステンを殺害した動機がいまいちわからないな~、というのが最初は不満だったが、それもきちんと終盤で説明があったし(ダーシーは2人の入れ替わりを知って、話を合わせていたのね)。
ペットに兄の名前をつけるというのは、どういう気持ちなのだろう。愛情の表れか、逆に侮蔑の対象なのか……あるいは兄弟もペットも同じくらい「どうでもいい」存在だったということなのか。ライアンという男は兄のフリをして「ライアンにはカリスマ性があって皆に愛されていたし、僕も弟が好きだった」と堂々と言ってのけるくらいだから相当のナルシストだろうし、自分以外の人間は本当にどうでも良さそうな感じだった。だから無条件で自分を愛してくれる相手なら、兄弟でもペットでも良かった、ということかな。あるいは、兄のガレスだけはライアンの本性を知っていたので、ライアンは内心で彼を恐れており、支配しておきたいという気持ちからペットにその名前をつけた?
……うーん、やはりよくわからない。
複数の事件が並行するというエピソードは特に珍しくないが、今回のように発生から解決までを集中して1つずつ描くと、パラレルの時と比べて、ひとつひとつの事件描写が薄くなりがちな気がするが、これは構成上しょうがないのかな。珍しくウェンディまで現場に出て活躍していたが、その一方でグレッグとライリーの印象がない。いたよね、2人とも?
— Yoko (yoko221b) 2011-06-17