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CSI - Season 9, Episode 21

#203 If I Had a Hammer...


事件概要

トーマス・ハロット(再審)

1991年に殺人の罪で有罪判決を受けたジェレミー・ケントの再審請求が認められ、事件の証拠が再度検証し直されることになった。これは、キャサリンが初めて単独捜査を行った事件だった。

ケントは91年に2件の窃盗事件を起こし、3件目に侵入した家でトーマス・ハロット氏と鉢合わせして殴り殺したことになっていた。ケント自身は容疑を認めなかったが、家屋侵入を示す物的証拠があったことと、拘置所で同房だった男が「ケントが犯行を認めるのを聞いた」と証言したために有罪になっていた。

だが、ケントはその数年後、証言した同房の男と刑務所で再会し「あの証言は弁護士の入れ知恵の偽証だった」と聞かされる。しかも、担当は同じ公選弁護人だった。刑務所内で法律を学んだケントは「公正な裁判を受ける機会を奪われた」として再審を請求し、認められたのだった。

91年当時とは証拠の分析技術や判断基準が異なるため、当時の証拠がもう一度検討し直される。

まず、ガラスを割るために使用された石。ここにはケントの指紋が付着していたとされていたが、当時の判断基準は「特徴点を5箇所比較して一致した」というもの。ケントは、これでは根拠として弱すぎると反論する。だが、最新技術で指紋を大きく引き伸ばした結果、やはりケントの指紋だったことがわかる。

当時、凶器は未発見のまま。カーペットの血痕を調べた結果、ハロット氏の頭部を殴打した凶器はやはりカナヅチらしいとわかる。現場の家は既に取り壊されていたが、キャサリンは「人は上を見ない」というグリッソムの言葉を思い出して隣家の屋根を捜索。そこで、何と木に埋まった状態のカナヅチを発見する。上に放り上げたカナヅチが木に刺さり、その後木がカナヅチを包むように成長して覆ってしまっていたのだ。

木に覆われていたためカナヅチの保存状態は良好で、血染めの指紋が発見される。だが、血液は被害者のものだが、指紋はケントではなく身元不明の第三者のものだった。

ケントは現場にいたことは認めたものの、ハロット氏はすでに死んでいたと主張を変える。現場に行っていないと言ったのは「当時弁護士からそう言った方が良いと言われたから」だと言い、共犯者の存在については否定する。

キャサリンらは共犯者の存在を確信し、認めないのは「愛情から庇っているか、もしくは恐怖を感じているから」と仮定してケントの周辺人物を調べる。

一方、被害者が侵入者を通報した録音を分析していたアーチーは、車のエンジン音を分析し、車種を「ダッジ・スーパービー」と特定。扉を開閉する音から、2人が車を降りていたこともわかる。ケントの卒業アルバムを見ると、ケントが恋人のサブリナ・リテイと一緒に映っている写真があり、その背後にはダッジ・スーパービーが映っていた。

そのダッジ・スーパービーはサブリナの父親の車だったが、現在の所有者はサブリナ自身。押収して徹底的に捜索したところ、サブリナの血液が付着したガラス片が座席の下から発見される。結婚しサブリナ・オーウェンとなった彼女は、現場に行ったことは認めたものの、「自分はカナヅチを渡されてそれを捨てただけ」だと犯行を否定する。当時、彼女はケントの子を妊娠し、「2人でLAに行って暮らそう」と言われてその資金を作っていたのだった。サブリナは殺害を否定するが、重罪謀殺 (felony murder) の規定により、彼女も殺人罪に問われることになる。

その供述内容を知ったケントは、元恋人の裏切りを知って「カナヅチを振るったのはサブリナだったのに」と怒る。ケントは、サブリナと子どもを守るために刑務所行きに甘んじていたのだった。だが、サブリナは公判の傍聴にも面会にも来たことがなく、自分は子どもの性別すら知らない。ケントはひとりで罪をかぶることに耐えられず、「せめて公正な裁判を受けたい」と望んで再審請求をしたあげく自らの罠に落ちたのだった。


感想

キャサリンが初めて単独捜査した事件が誤認逮捕になってしまうのか? とちょっと心配したけれど(これがマックとかホレイショなら「それはない」と安心して構えていたと思う)、冤罪でも誤認逮捕でもなくてホッとした。

この犯人、わざわざ再審請求なんてしなければ、少なくとも恋人は無事でいられたのに……確かに、18年間バレなかったのだから、今さらバレるとは考えないかもね。凶器はどうせ見つからないだろうし、見つかったところで証拠はとっくに洗い流されているだろうと。まさか、木の幹に包まれて保存状態きわめて良好とは!

それだけでも奇跡的だと思うが、18年前に犯行に使った車を彼女がまだ持っていて、座席の下にガラスの欠片が入り込んだままだというのもすごい。もう、ここまで来るとかえって仕組まれたように見えてしまうくらい。

ケントが「自分は公正な裁判を受けなかった」からと再審請求したくなる気持ちはまぁ、わからなくもない。弁護人はもう1人の依頼人を助けるために自分を犠牲にしたわけで、この時点で彼は公正な扱いを受けていない。それに「公正な裁判を受けたい」というのは、その下の本音が何であれ正当な権利だ。恋人の関与がバレる心配はまずないとしたら、自分は終身刑なのでこれ以上失うものはないし、通常は事件から時間が経つほど被告側に有利になるものだ(証拠が散逸したり証人が死亡したり連絡が取れなくなったりするので)。あわよくば無罪、という賭けに出たのかな。10代で逮捕されていれば18年服役してもまだ30代だから、人生あきらめるには若すぎる。

しかし、上記のような予想外の結果が重なったうえ、恋人はあっさり裏切ってしまう。

そりゃ裏切るでしょう! と当然のように考えてしまったわ(ごめん、ケント)。でも冷静に考えて、弁護士の夫と子どものいる安定した生活と18年前の未熟なロマンス、34歳の子持ち女性がどちらを取ると思う?

自分の人生を捨ててでも愛する女性と子どもを守る、というのは彼なりに真摯な気持ちだったと思うが、やはりずっと刑務所の中にいたことで、ある意味時間が止まっていた――若者らしい潔癖さを持ち続けていたのだろうか。

でも、それはそれとして彼女の夫の態度はどうなんだろう? 「こんな女は知らん」と言って席を立ってしまうなんて、夫としてはともかく弁護士として許される行為ではないと思う。どんな極悪非道な悪人でも、全力で弁護するのが弁護士の仕事ではないのか。とはいえ、昔の男と起こした事件の弁護を現在の男に依頼するというのが、そもそもの間違いかもしれないが……。

Law & Order なら、この後法廷で泥仕合になるところだが、CSIなので鑑識の出番はここで終わり。キャサリンお疲れ様。

Yoko (yoko221b) 2011-06-19