CSI - Season 11, Episode 4
慈善活動家のマーゴ・ウィルトンが自宅で襲われ、全身を切りつけられるが一命をとりとめる。寝室以外は特に荒らされた形跡はないが、壁に飾られた子どもの写真の顔の部分が切り取られ、また市から表彰された「市の鍵」が上下逆にされているなど、個人的な怨恨を思わせる痕跡があった。切られた写真は、マーゴの息子ロビーで、幼くして難病にかかり死亡していた。
侵入経路を調べてみると、浴室の小窓から何度か出入りした形跡があり、犯人は小柄で身体の柔軟な人物と思われた。寝室に残る手足の跡からは、四つん這いになり片手と片足を同時に地面につけて移動したように思われた。寝室の上には屋根裏部屋があり、そこから犯人がマーゴを監視していた形跡があった。さらにベッドの下には人型の跡。
病院で手当てを受けたマーゴは「犯人はアフリカ系、身体はすべすべしていて、目は黒い穴のよう。歯列矯正器を付けていたと思う」と供述する。
ベッド下の人型からは汗の成分が検出されるが、DNAは劣化していて判別不能。だが、ラバースーツ用のスプレーに使う物質が検出され、犯人は黒いラバースーツで全身をぴったり覆っていたのではないかと思われた。その手の品を扱うアダルトショップのオーナーに話を聞いたところ、半年ほど前に特注のラバースーツを2着購入した男性がいたという。写真があったがスーツを着用した状態なので、顔などはわからない。ただし、目は左右の色が違うオッド・アイだった。
男は現金で支払い、イアン・ムーン (IAN MOONE) と名乗ったが、調べてみると偽名。ラングストンは、その名は I AM NOONE(俺は誰でもない)のアナグラムであると気づく。
その後、洗車場に入った車の中でキャリー・ジョーンズという女性が刃物で喉を切られて死亡する。車の窓ガラスには、血で書いた「A」という文字が残されていた。同乗していた娘はイヤホンで音楽を聞き、洗車を夢中で眺めていたので何も気づかなかったが、犯人の特徴を聞かれて「スクウィーグル」(洗車用モップの摩擦音)と口にする。
キャリーは、暴力的なゲームを未成年に販売することを禁止させたという功績を市から表彰され、ファミリー・バリュー委員会の議長に任命されていた。夫によると、キャリーは以前にも襲われて全身を切りつけられ、病院に運ばれたことがあった。その時に「知っているぞ、白状しろ」と脅されたが、何のことか心当たりはなかったという。
手口と被害者像がマーゴの事件に似ていることから、キャリーの自宅を調べたところ、寝室の上には同じようにのぞき穴があり、ベッドの下には人型が残っていた。ベッドのマットレスからは「A」と書かれたDVDが発見される。中にはキャリーと愛人の逢引きの様子が録画されていた。犯人は、ファミリー・バリュー委員会の議長を務めるキャリーが浮気をしていることを許せず、襲撃して警告を与えた。だがキャリーが行動を改めなかったため殺害した――そして「A」は姦通 (Adultery) を示していると思われた。
キャリーへの最初の襲撃が警告であるなら、マーゴが襲われたのも警告である可能性がある。警察はマーゴの身柄を保護しようとするが、マーゴは「もう一度襲ってくる可能性なんて殆どない」と突っぱね、強引に自宅へ戻る。
自宅へ戻ったマーゴは屋根裏で手紙を探すが、スクウィーグルに先回りされていた。スクウィーグルの追及に、マーゴは息子をプールに突き落として死なせたことを認める。息子は難病に苦しみ、「ぼくを愛しているなら」死なせてほしいと願ったのだ。マーゴは罪悪感に苦しみ、ロビーの父親に手紙を書いたものの投函できず屋根裏に隠していた。マーゴは「私は息子を殺したが、正しいことをしたと信じている」と言い、銃を取り発砲。
その頃マーゴの家の外では、ブラス警部やニックが待機していた。救急隊員、ライアン・フィンクの車が乗り捨てられているのが発見されたのだ。ライアンは燃える家から子どもを救い出したという英雄的な行為で市から表彰を受けていたのだ。ニックは、ライアンも既にスクウィーグルの犠牲になったと考え、マーゴを守るために突入しようと主張。
そこへ銃声が響き、ブラスらは急いで中へ。マーゴはスクウィーグルを撃ったが、銃弾は手回し良く空砲にすり替えられており、スクウィーグルは逃亡。ベッド下を見ると、ラバースーツを着た男が倒れていたが、マスクを取ってみるとライアン・フィンク。スクウィーグルはライアンを殺害し、自分の身代わりとしてスーツを着せてベッド下に置いていたのだ。警察へは「ライアンは英雄になるため、わざと放火して救出劇を演じた」という通報が寄せられていた。
スクウィーグルは逃亡したまま、行方は杳として知れなかった。
うわ~、何だこの犯人! キモッ!
……という感想で終わってしまいそうな今回。
だって……誰も見ていないのに変態クモ歩きでくねくね移動するわ、ラバースーツ姿で鏡に向かってキメ台詞を言ってみるわ、もう視聴者の理解とか共感とかどうでもいい! って感じに脚本家の趣味全開なんだもの。市の表彰を受けたのに裏で悪いことをしているのが許せん! という義憤の犯人なのか、ただ自分の変態趣味を満足させるために犠牲者を選んでいるだけなのか(デクスターみたい)もよくわからないし。
英雄になるために放火したのは確かに重罪だけど、ファミリー・バリュー委員会の議長を務めながら不倫、というのは殺すほどの悪行だろうか。良いこととは言わないが、赤の他人はすっこんでろと言いたくなってしまう。しかも幼い娘に一生消えないぐらいのトラウマを負わせている。これだって許されんぞ。最後にマーゴを殺さずに逃げたのは、警官が踏み込んできたからやむを得ず? それとも、マーゴの告白を聞いて気が済んだからだろうか。まぁどっちでもいい。
この「スクウィーグル」というキャラクター、CSIの生みの親であるアンソニー・E・ズイカー氏の書いた小説 “Level 26: Dark Origins” の主人公らしい。読んでいないので詳細はわからないのだが、小説だけではなく、Webと連動してゲーム的な楽しみ方もできるような作品らしい。このエピソードもその一部なのかどうかはわからないが、要するにタイアップなのかな。ズイカーさんといえば、NYの開始と同時にベガスを離れていたが、このシーズンからショウランナーとしてベガスに復帰したらしいので、分家から戻って来た手土産みたいな物なのだろうか。それにしては(自粛)だけど。
小説も、怖いもの見たさでそのうち読むかもしれないけど、この後スクウィーグルの再登板はないんだよねぇ。本当に単なるゲスト出演で終わっているのかもしれないが、まぁ連続ストーリーで解決篇が面白いことは滅多にないので、これはこれで終わって良いと思う。
今回はサラがいなかった。ニックが「マーゴとの共通点」と言われていたのは、ニックも屋根裏に潜むストーカーに狙われたことがあったから(シーズン2「覗き穴の殺人者」)。あの時はグリッソムがストーキング部屋を見て大喜びしていたけど、今回のこの犯人を見ても喜んじゃうかも。