CSI - Season 12, Episode 7
自動車事故が発生し、3名のドライバーが死亡する。だが現場にはむき出しの人間の脳が落ちていた。どうやらその脳は、オープンカーを運転していたダニー・クレッグがクーラーボックスに入れて持ち運んでいたらしい。クレッグは運転中に薬物の過剰摂取で死亡したものと思われた。
脳の献体記録を調べたところ、その日は男女2名の脳が運ばれることになっていたが、いずれも病院に届いていることがわかる。
その後、遺体安置所が荒らされ、セリグソン中尉の遺体から脳が取り出されていたことがわかる。しかし鑑定の結果、クレッグが運んでいた脳は中尉の物ではないとわかる。身元不明の脳は外科手術によってきちんと切り取られているが、中尉の脳は明らかに素人によって乱暴に切られていた。しかし、安置所の扉や靴跡などの痕跡を調べた結果、押し入ったのはやはりクレッグであるとわかる。
事故前のクレッグの足取りをたどってファストフード店の防犯カメラを調べたところ、クレッグが何者かとクーラーボックスを交換していたことがわかる。
クレッグがボックスを交換した相手は病理医のハンソン・エラーと判明。脳を献体した2名のうちのひとり、自殺したライアン・デンプシーの死亡診断書を書いたのが、このエラー医師だった。つまりエラー医師がライアンの脳を取り出し、途中ですり替えてセリグソン中尉の脳を「ライアン・デンプシーの脳」として病院へ運び、クレッグがデンプシーの脳を持ったまま事故を起こしたと考えられた。
妻のジョイスによると、ライアンは総合格闘技の選手で、記憶障害や暴力的な傾向があり、CTE(慢性外傷性脳症)を患っている疑いがあった。ジョイスは息子とハイキングに出かけ、帰宅すると夫が銃で自殺していた。そこでトレーナーのビル・ペルナンに連絡してエラー医師が脳を摘出する手はずになっていた。
しかしエラー医師は射殺体となって発見される。ライアンの脳が検査されCTEが明らかになっては困る人物が脳を交換させ、口封じに医師を射殺した可能性があった。セリグソン中尉が選ばれたのは、注意がユダヤ教徒で防腐措置をしていないためであろう。
ライアンの事件は、現場の様子から自殺と判断されていたが、身体には火薬の付着した形跡がない。また、電話の通話記録から、ペルナンとジョイスが不倫の関係であることが推察された。それに気づいたライアンが暴れ、ジョイスが射殺したという疑いが生じるが、ペルナンは頑として口を閉ざす。
クレッグとライアンは同じジムでトレーニングしていた仲間で、同じ薬物を摂取していた。さらに、クレッグの車にあったアメフトのボールを詳しく調べると、中に注射器が隠されていることがわかる。注射器にはペルナンの指紋。事故現場の近くに警察署があったことから、クレッグは脳のすり替えと薬物の件を通報しようとして事故に遭ったのではないかと考えられた。
ペルナンの自宅からはエラーを殺害した銃が発見されるが、ライアンの件については証拠がない。だが、ジョイスの息子デクランは、ブラスと言葉を交わすうちに「ぼくがパパを殺した」と認める。
事故現場に落ちている身元不明の脳――事故で脳が飛び散るのではなく、摘出された脳がむき出しで発見されるというシュールな状況。これはいったい何が起きたんだ! と好奇心をそそられる。
その後、死亡した軍人が脳を盗まれ、どれが誰の脳なんだ!? という混乱がしばらく続く。一時は脳がもうひとつどこかにあるのか? とも思ったが、結局脳を摘出されたのは献体した2人と中尉だけで、途中のすり替えで身元が混乱していたのだった。そして最後は「子どもが犯人」という真相。このオチも、本当に毎シーズン決まったように出てくるパターンだ。カンの良い人はブラス警部と言葉を交わしているあたりで気づいてしまったのでは?
事件の展開がスピーディで謎が多いのは良いが、「クレッグが警察へ行こうとした」という所が少々描写不足で説得力を欠くように思った。クレッグは注射器という証拠品を持っていた。ボールに隠していたくらいだから、以前から用意していたのだろう。わざわざ無関係なご遺体を冒とくして(しかもあんなひどい状態で放置して)までライアンの脳を警察に持って行く必要があったのか。
クレッグが死亡した状況もいまいちはっきりしない。いつもナゲットを頼んでいるクレッグが、最後に立ち寄ったドライブスルーでは「17番」のチーズバーガーを注文。この「17番」がヒントになってニックが「17番」のボールを発見するわけだが、つまりここでクレッグは注文ではなくボールのことを伝えようとしていたのではないかと思われる。電話しているクレッグの声は尋常ではない感じだったが、その時は薬物の過剰摂取ですでに死にかけていたのだろうか。
しかし警察へ行く途中なのに、薬物をやったりするだろうか。その過剰摂取も仕組まれたものではないのか? また、どう見ても解剖の心得などなさそうなクレッグが、いきなり脳の摘出などできるものだろうか。アイデアは良いのに細部が色々と惜しい。
事件以外のところでは、まずラッセルの息子が登場。よく犯罪の舞台になる西ラスベガス大学の新入生らしい。ラッセルは前回、大学で妻と出会って交際した女性は彼女だけだと言っていた。それが本当なら奥さんも同年代だと思うが、息子はまだ18歳? ラッセル夫妻は何歳の設定なのだろう。うーん。
そしてキャサリンにも、上院司法委員会が設置する「科学捜査委員会」のメンバーというすごい話が舞い込んでくる。キャサリン役のヘルゲンバーガーは今シーズンで降板が決まっているので、このポストに決まるかどうかはともかく、そろそろお別れが近づいているんだな、と意識させられる。でも、CSIを去るのが殉職でも解雇でも燃えつきでもなく「栄転」になりそうなのは何となく嬉しい。ネガティブじゃない去り方は珍しい。