CSI - Season 14, Episode 7
2006年に発生したクレア・ギブソンの強姦殺人事件が再捜査され、逮捕され収監されていたガス・エリスが実は無実だったことが判明。タッチDNAを検証する技術が進み、性犯罪の前歴がある人物が真犯人だとわかったのだ。技術の進歩により誤判が判明した場合、捜査官に責任はないはずだが、弁護側の犯罪学者ジェニファー・ローズは「証拠を捏造した疑いがある」と証拠の検証を要求。ラッセルはフィンに協力するよう命じる。
その事件は、CSIとしてはまだ新人だったグレッグが単独で担当し、エリスを逮捕した決め手は、現場に落ちていたバールに彼の血液が付着していたことだった。ローズとフィンは、まず現場の写真を調べる。グレッグは手順どおり家屋の外観から始め、被害者の部屋から次の部屋へと順番に撮影し、最後にまた被害者の部屋へ戻っていた。2人はここで、最初の写真とバールの位置が異なっていることに気づく。
さらに、血液からは抗凝固剤が検出され、「エリスから採取した血液サンプルをバールに付着させて証拠を改ざんした」という仮説に符合する。抗凝固剤自体は日用品にも含まれているが、検出されたものは病院の採血管に使用するものと一致する。病院で採決された血液サンプルは、現場にいるグレッグが受け取ってサインしていた。
写真と記録から当日の時系列を再構成した結果、グレッグが血液を受け取ってから次の写真を撮るまでの間、誰にも見られずに細工をする時間があったとすれば最大で4分。時間的には可能だが、当時血液のDNAを調べたウェンディは、開封の痕などに気づかなかったようだ。
他の証拠を再度検討した2人は、エリスのポケットにあった血染めのハンカチに気づく。エリス本人の血液しか検出されなかったので重視されていなかったが、フィンは「エリスはハンカチを持ち歩くタイプには見えない」と不審に思う。報告書には「NOBLE」という文字が記されていた。
新しい技術で再度調べた結果、指紋が検出されるが身元にはアクセス制限がかかっていた。州の職員ヤンシー・ランガーのもので、事件当日は警官の体験プログラムに参加して現場に来ていた。
ランガーは当日のことを記憶していた。病院でサンプルを取られると知って怯えたエリスが鼻血を出したため、自分のハンカチを貸したというのだ。「NOBLE」は鼻血(NOSE BLEED)の意味だった。その後、好奇心から現場に入り、バールを蹴って動かしてしまったこともあっさり認める。バールを元の位置に戻した時に、手からエリスの血が転移してしまったのだ。それで無実のエリスが有罪になったと知り、ランガーは動揺する。
結局、捜査には落ち度も改ざんもなかったことがわかり、グレッグの疑いは晴れる。サラの助言でフィンとグレッグも和解できるようだ。
放水路に転落した男性がERに運ばれ、サラが証拠採取に向かう。だが「被害者の持ち物」として渡されたカバンを開けると、そこには爆弾が。患者とスタッフは直ちに退避し、爆弾処理班が出動。アンソニー・ハーストがサラから爆弾を受け取り、安全に爆破処理を成功させる。
身元不明だったため指紋を照合すると、まったくの別人が登録されていた。男は命をとりとめるが、うわごとのように外国語を繰り返し口にする。言葉はアルメニア語のようだが、歯の状態は幼少期から米国で育ったことを示している。
仕方なく「昔ながらの方法で」と、TVで情報提供を呼び掛けてみたところ、宿泊先のモーテルが判明。しかし一足先に何者かが荒らして荷物を持ち去っていた。だが巧妙に隠されていたパスポートとフラッシュドライブが見つかる。パスポートには「アーマン・アガキアン」という名が記されていた。
衣類の残留物から、アガキアンがメディテレニアンの近くにいたことがわかり、サラはアンソニーとともに現地を歩いて「この近くで爆弾を設置しそうな場所」を探し、放水路に近いガス管の設置場所に目を付ける。アガキアンは爆弾を設置するためにここへ来て、足を滑らせて放水路に落ちた可能性が考えられた。その場の金網は破れて血痕が付着していたが、採取して「モバイルラボ」の機材で調べた結果、アガキアンのものではないと判明。
そこへ、アガキアンの容体が急変し死亡したという一報が入る。デイヴィッドが遺体回収に向かうが、その前にFBIが到着して遺体を引き取って行った。
ホッジスはアンソニーが回収した破片から爆弾を再構成していたが、どうしても爆発する爆弾を組み立てることができない。さらに信管が破壊されず残っていることから、爆弾はダミーだったのではないかという可能性に思い至る。
サラはフラッシュドライブのパスワードを解読し、アガキアンがうわごとのように繰り返した言葉が爆弾の設置予定場所であるらしいと判断。それをラッセルに報告しようとするが、そこでFBIの捜査官に迎えられる。アガキアンはアルメニア系ギャングに接触していた囮捜査官で、彼らの恐喝に加担するふりをしてダミー爆弾を仕掛け、別の捜査官が事前に回収するという筋書きになっていたのだった。アガキアンが運悪く放水路に転落したため、多少の計画変更はあったものの、アルメニアギャングの検挙は成功する。
珍しく事件が2件。しかし2件とも何となく印象が薄いというか……事件2つの配分ってこんなものだっけ? 昔はもうちょっと密度が高くて、ストーリーに「力」があったような気がするのだけど。見ているこちらの意識の変化かな?
サラの事件では爆弾処理班のアンソニーが登場。これが結構良いコンビで、前シーズンの元カレより良くない? 風貌も何となく、若グリッソム的な印象。アガキアンの情報提供を呼び掛けるキャスターの人も久しぶりで懐かしかった。たしかCBSのニュース番組に出ている本職で、初期シーズンから同じ役で何度か出演しているのだ。
グレッグの再捜査事件は……うーん、どうしたものか。今回の脚本はElizabeth DevineとRichard Catalaniで、どちらがこの部分を書いたかはわからない。しかし2人とも初期シーズンから関わっているベテランライターではなかったか。その2人が書いた脚本がこんな展開で良いのか。「どうしてこうなった」感が満載の事件だった。
細かい部分のツメが甘いところはいくつもある――ランガーがバールを戻した時、あれでは指紋が残るのではないかとか、なぜ血液のサンプルを取る必要があったのか(DNA採取はいつも綿棒を口に入れるだけなのに)、証拠の血液から検出された抗凝固剤が病院で使われたものと一致した理由は何だったのか、鼻血を出したことを弁護側は公判で持ち出さなかったのか(公判を開く前にエリスが有罪を認めたのか?)、ランガーがハンカチを貸した時エリスはすでに拘束されていたようだった(映像で手が後ろに回っていたように見えた)が、まだ証拠の採取も終わっていない段階での逮捕容疑は何だったのか(部屋の覗きかな)。まだあったかもしれないが、とりあえず今思い出せるだけでこれだけ。
だがもっと根本的な所で「何かおかしい」という感じがずっと引っ掛かっていた。
多分それは「動機がない」ということだ。フィンは「新人だから、ボスにいいところを見せたかった」という可能性を口にするが、それは現場と証拠を調べ尽くして何も出なかった時に、初めて動機になることだ。証拠からエリスの犯行が裏付けられれば何も危ない橋を渡る必要もないし、それは事件直後に現場でわかることではない。事件の大前提が説得力を欠いてしまっているのだ。ラボで捏造したことにしても十分成立するストーリーだと思うので、もう本当に、どうしてこうなった。
ともあれ、これが原因でフィンとグレッグの間がギクシャクすることがなさそうなのは良かった。「無実の罪で7年服役した男性がいるのに自分の心配をするのか」とフィンは言うが、そりゃ心配するでしょ! シーズン2「六番目のチャクラ」で証拠を捏造した刑事が逮捕された件を思い出そう。重罪の容疑をかけられているのだから。NYでは証拠袋を開封しただけでクビだよ。
「イノセンス・プロジェクト」で過去の事件を調べ直すという話自体は面白いし、もっと良いエピソードになる可能性があっただけに惜しい。
— Yoko (yoko221b) 2020-11-21