CSI - Season 14, Episode 21
タンジールス・カジノのオーナーの妻、オードリー・バーマンが自宅の寝室で射殺される。夫のリー・バーマンは事件直後、自動車を運転しているところを逮捕される。
バーマンの自宅は最新の警備システムを備えたスマートハウスだが、防犯システムは解除され、センサーの記録から犯人は家の間取りを知っており、寝室へまっすぐ向かったことがわかる。夫婦仲はあまり良くないらしく、寝室は別。夫の部屋にあったPCには別の女性の映像があったが、画面を撮影した直後にPCはシャットダウンされてしまう。
取調べ中に、FBIからサイバー捜査官のエイヴリー・ライアンがやって来る。ライアンはバーチャルセックスサイトで富豪ばかりを相手にする「キティ」という女性を追っており、バーマンもそのサイトに出入りしていたのだった。ライアンはモニター画面に「キティ」を呼び出すが、通信に負荷をかけると映像が乱れ、「キティ」は生身の女性ではなくCGで作られたチャットボットであることがわかる。ライアンはそのシステムを構築した黒幕を「ノード」と呼び、捜査を続けていたのだった。
バーマンは銃を所持していたが、オードリーを殺害した凶器とは不一致。また車の走行記録からもアリバイが裏付けられる。
ライアンはフィンとともにバーマンのPCのデータを解析する。「キティ」は目を付けた裕福な男性ユーザーに「ギフト」を送り、相手がその「ギフト」を開くとチャットしている彼の映像が双方向カメラで録画される仕組みになっていた。バーマンもその「ギフト」で淫らな姿を録画されていたのだ。「キティ」はその動画でバーマンを脅し、ビットコインで大金を要求していた。バーマンは「ビットコインではなく現金で支払え」と日時を指定。銃を所持していたのは、それで「キティ」を殺すつもりだったのだ。だが「キティ」は現れなかった。バーマンは自分がネットで女遊びをしたために妻が殺されたことを恥じ、口をつぐんでいたのだった。
バーマンは釈放されることになるが、そこへバーチャルな存在であるはずの「キティ」が現れ驚く。ライアンは画面上の「キティ」の細かい動作に注目し、「元データ」となった生身の人間がいるとにらんでいた。そこで映像を公開したところ、サンディエゴに住むスーザン・マクダウェルが自分の姿を見て驚愕し、苦情を言いに来たのだった。スーザンは「フレンド・アジェンダ」というSNSを利用しており、プロフィールページを調べると「Nebula1」というユーザーが異常な頻度でアクセスしていたことがわかる。
現場で犬が保護されていたが、バーマンは犬を飼っていない。調べてみるとシェルターから引き取られた犬で、犯人は犬の散歩を装って怪しまれず邸宅に近づいたのだ。家の間取りを知っていたのも、数年前に売りに出された時の「バーチャルツアー」動画がネットに残っていたためと思われた。犬から手掛かりを追ってみたものの、乗り捨てられたレンタカーに凶器の銃と使い捨て携帯電話が残されていただけで足取りは途絶える。その携帯に殺害の様子が録画されていたことから、実行犯は「ノード」に雇われたヒットマンであるらしいとわかる。
そこで「Nebula1」のアカウントを改めて調べると、現在の絵文字アイコンに替える前に、自撮りらしい写真を使っていたことがわかる。その写真からプロフィールを推測していたニックとライアンは、ブラインドの隙間から星明りのようなものが見えることから最初は「夜に撮影した」と判断するが、形をよく見ると星ではなく、セントルイスにある特徴的な建物の照明であるとわかる。そこから位置を割り出し、現地のSWAT部隊が踏み込むが、部屋はもぬけの殻。ライアンはWebカメラの存在から罠に気づき、全員に退避を指示するが、その直後に爆弾がさく裂する。ライアンの指示で隊員は無事だったが、証拠はすべて破壊されてしまった。
ライアンは最後の手段として、スーザンの協力を得て「Nebula1」を誘き出すことにする。スーザンは記者会見を開き「Nebula1」の挑発に成功。「Nebula1」はサンディエゴのスーザンの自宅に現れるが、待ち構えていたライアンらにより逮捕される。
新スピンオフ「CSI:サイバー」の主人公、エイヴリー・ライアンのお披露目エピソード。このような形でのクロスオーバーは2004年5月の「マイアミ-NY 合同捜査」以来、実に10年ぶりとなる。
厳密にいうとこの手のエピソードが「クロスオーバー」かどうかは微妙かな、と実は思っていた。この時点ではまだ新番組の方は始まっていないので、存在しない番組とクロスオーバーすることは可能なのか? という論理的な問題があるので。ただ新番組のパイロットエピソードを兼ねていることも事実なので、「クロスオーバー」と呼んで差支えはないと思う。
だから今回も「CSI:サイバー」とのクロスオーバーで良いのだ、思っていたら何だかちょっと様子が違う。今までは、ベガスからマイアミへ、マイアミからNYへ行って新番組の舞台やキャストメンバーを紹介するような形式を取っていた。だから「パイロット」エピソードになっていたわけだけど、今回はライアンが向こうから来ただけ。FBIのどういう部署でどういうメンバーがいるのか、まったくわからないままだった。「クリック」と呼ばれるスタッフが1人登場したけれど、彼は「サイバー」のキャストではないみたいだし、これではとてもパイロットとは言えない。この時点では主役とテーマソング以外まだ決まっていなかったのだろうか。
捜査の内容は「物証からたどっていく」通常のCSIとは異なり、心理作戦を仕掛けるというもので、行動科学者であるライアンが、ラッセルの助言を受けつつもストーリーを主導していく形となっていた。サイバーでCSIだからデジタル・フォレンジックが中心になるのかと思ったら、それほどでもなかった。これは「サイバー心理学者」を名乗るメアリー・エイケンが原案を提供しているためかなと思う。
なので「これがCSI?」という疑問が生じたことは否定できない。どちらかというと、「クリミナル・マインド」や「メンタリスト」系列の話になりそうな予感もあるけど、せっかくなので2シーズン、見てみようかなと思っている。2021年2月現在、AXNでは放送予定がないようなので、再放送を待つかDVDにするか、まだ決めていないけれど。