CSI - Season 15, Episode 8
全身を何か所も刺され、下着姿で遺棄された男性の遺体が発見される。指紋から指名はネルソン・カーンと判明。路上には人の顔のような血の痕があったが、被害者の顔面に傷はなく、血の痕自体も顔面にしては凹凸が少ない。
ニックは制服巡査とともにカーンの携帯電話を追跡し、付近のゴミ箱に遺棄されているのを発見。巡査はゴミ箱に、女性の遺体らしきものを見つけるが、出してみるとそれは女性の姿をかたどったラバースーツ(着ぐるみ)だった。カーンは殺害された当時、そのスーツを着ていたらしい。
スーツに残された指紋から制作者が判明。ラバースーツを愛好する男性たちは「ラバードール」と呼ばれ、たまり場となっているクラブで遊んだり、連れだって出かけたりするという。クラブでの聞き込みの結果、カーンが着ていたスーツは「シャーリーン」と呼ばれていたことがわかる。クラブに現れたのは最近だが、すぐに人気者ナンバーワンになった。
その後、シャーリーンのスーツは80年代にモデルとして一世を風靡したシャーリーン・ブロックの姿を真似て作られ、本物のシャーリーンのイヤリングまで着けられていたとわかる。現実のシャーリーンはすでに死亡しており、夫でモデルエージェンシーの社長であるスタン、息子ジョナ、娘エイプリルは、ドールのこともカーンのことも知らず、遺品は売ってしまったという。おそらくネットオークションに出されたのだろう。
一方モーガンはラバードール同士のライバル関係が動機ではないかという仮説から、愛好家たちのWebサイトを調べ、レクシーというドールがシャーリーンに対抗意識を燃やしていたことを知る。だがカーンの車が発見され、そこにレクシーのスーツがあったことで事態は一変。カーンは実はレクシーであり、シャーリーンのスーツを盗み出して犯行当日に着用していたのだった。
カーンの車に残された付着物から、彼が盗みに入ったのはスタン・ブロックの物置であることが判明。スタンは息子と娘の手前、知らないふりをしていたが、物置を祭壇のようにシャーリーンの写真や遺品で埋め尽くし、スーツを注文し、遺品のイヤリングを入手して亡き妻になりきっていたのだった。だがカーン殺害については否定。スタンの犯行につながる証拠もなかった。
その後、シャーリーンのスーツを着たカーンとラバードール好きの男が関係を持ったことがわかり、その男の供述から発想を得てベビーオイルの痕跡をたどってみたところ、凶器と思しき爪やすりを発見。ジョナの指紋が付着しており、さらにジョナがエージェンシーの経営から父スタンを追い落とそうと動いていたこともわかる。実はジョナは、スタンの行動やスーツのことを知っていたのだ。
だがジョナはアリバイを主張し、爪やすりはシャーリーンを象徴する物として追悼式で直接手渡したため、自分の指紋がついていても当然だと言う。シャーリーンは気性が激しく、気に入らないことがあると爪やすりを取りだし、周囲を怯えさせていたのだった。
爪やすりからは女性のDNAとネイルに使用するゴールドの粒子が検出され、ジョナの物ではないとわかる。爪やすりでモデルのネイルケアをした娘エイプリルの犯行だったのだ。エイプリルは父とともにシャーリーンの下でずっと苦しめられ、母の死でようやく解放されたと思ったら、スタンがシャーリーンに扮していることを知って打ちのめされた。自分の誕生日を祝ってほしかったのは父だけだったのに「体調が悪いから」とキャンセル。その背後にはクラブの音楽が流れていた。エイプリルはシャーリーンのスーツを着たカーンを父親と思い、爪やすりで刺し殺したのだった。スーツを脱がせて別人と気づいたが、「母を捨てたかった」から、スーツをごみ箱に投げ捨てたのだ。
ラバースーツを着て女性の身体を文字通り「身にまとう」男たち。別人になりきりたいのかオートガイネフィリア(自己女性化性愛症)なのかよくわからない。スタンがシャーリーンになりきった動機は、妻を失った喪失感を埋めるためだろうが、姿形を再現するだけでは不足だったのだろう。パーティの華になり注目と賞賛を集めること。それもシャーリーンという存在の一部であり、世界中から愛された全盛期のシャーリーン・ブロックをもう一度この世に蘇らせようと思ったのだろうか。
脚本を担当したTom Mularzはシーズン9からの参加で、シーズン13からはプロデューサー。他の担当作品を見ると「美味しいヒト」とか「閉所のオアシス」など、ちょっと変わった嗜好を取り上げた作品が多い。初期シーズンで、Jerry Stahlが脚本を書いたエピソードを思い出す。
この手のラバースーツやその愛好家は本当にいるらしく、時折目撃情報がSNSに上がったりする。日本では「フィメールマスク」ということも多い。男性版はないのかな? ムキムキの男性スーツを着て歩けば「ぶつかりおじさん」も寄って来ないと思うのだが。