CSI - Season 15, Episode 9
クラーク郡の拘置所で囚人の遺体が発見される。予防注射で列に並んでいた囚人が注射針を怖がって暴れだし、洗濯室へ逃げ込んだところで別の囚人の遺体と鉢合わせしたのだった。
死亡したのは強盗犯のブルース・グレイディ。拘置所へ到着したラッセルとニックを若手刑事のブレナーが出迎える。スピード出世で殺人課に配属されたのだという。
グレッグとモーガンはグレイディの房を調べ、脅迫めいた文言の書かれたメモを発見。それは「カイト」と呼ばれる囚人同士の通信文。紙を折って別の房に向けて飛ばすのだが、狙いを外した時のために糸を付けるので「カイト(凧)」と呼ばれているのだった。
フィンはグレイディの犯罪記録を調べ、いつも犯罪のランクが落とされ刑期が短くなっていることに気づく。グレイディは検察と取引をして刑を軽くしてもらっているのではないか。調べてみると、殺し屋のメイフィールドが再審のために拘置所へ来ており、グレイディが証人になっているとわかる。グレイディはメイフィールドの隣の房におり、話をする中で犯人しか知らないはずのことを聞き出していたのだ。
メイフィールドは「グレイディとは話をしたこともない」と言う。グレイディが嘘をついたためカイトで脅し、手製のナイフで刺したことを認める。しかし刺し傷はごく浅く致命傷になるようなものではない。実際、検死の結果グレイディの死因は窒息死と判明。首を絞められたような痕も見つかるが、首から発見されたDNAは囚人の誰とも一致しない――つまり、犯人は看守という可能性が高い。
グレイディの房からは小型の録音装置が発見され、グレイディがFBIのスパイを務めていたこともわかる。洗濯室担当のウー看守に疑いがかかり、ウーは不正を認めたものの殺害は否定。グレイディの録音装置も、洗濯室ではノイズが大きすぎて会話を拾うことはできない機種だとわかる。
改めてグレイディの逮捕歴を調べたところ、事件の多くを担当したブレナー刑事が浮上。メイフィールドの事件にも参加していた。ブレナーはグレイディに捜査情報を与えて証人に仕立て上げ、次々に手柄を立ててスピード出世したものの、FBIの捜査が及んだことに気づいて殺そうとしたのではないか。
しかしグレイディの首から検出されたDNAは囚人のひとり、ピーター・マックローンと一致した。マックローンの逮捕容疑は軽犯罪だが、書類の遅れから拘置所に入れられていた。軽犯罪だったためCODISに登録されていなかったのだ。
グレイディは20年前に男児への性犯罪で逮捕されたが、取引で罪状は器物損壊に変更。その時の被害者がマックローンだったのだ。マックローンは被害を受けたことを忘れようとしてきたが、洗濯室でグレイディに出くわし、声であの時の男だとわかった。マックローンはグレイディに立ち向かい素性を告げたが「まともに育つわけはないよな」と嘲笑され、怒りに我を忘れて絞め殺してしまったのだ。
セレブ向け高級リハビリ施設、ラバースーツ愛好家の次は刑務所。あまり見る機会のない場所を舞台に、その中のちょっと特殊な文化をひととおり紹介した後に犯人が判明というパターンが続いている。今回は「カイト」とか「刑務所ワイン」とか、あまり体験したくないものも色々。汚職を捜査するためのハイテク技術など、道具立てはけっこう派手なのだが、結局ほぼ無関係で終わってしまった。
初登場のブレナー「スピード出世」刑事。何となく鼻につく態度で印象が良くなかったのだが、この展開なら再登場はもうないだろう。
スパイ行為と引き換えの取り引き、殺し屋の派遣、FBIの捜査――何だか大掛かりな陰謀が張り巡らされているのか? と思ったら、動機はわりと単純な過去の怨恨。それにしてもタイミングが最悪すぎないだろうか。マックローン自身は、拘置所に入るようなことはしていなかったはず。さらに、こんな所でグレイディと鉢合わせしていなければ犯行に及ぶこともなかった。
この手の事件で、やはりニックは若年男性に同情してしまうようだ。せめて情状が認められるよう、しっかりした弁護士に付いてほしいと思う。