CSI - Season 15, Episode 14
世間を震撼させたシリアル・キラーの遺品や事件に関連する品々の展示即売会が開かれて、ブルーペイント・キラーやネイト・ハスケルなどの関連グッズが出品されていた。目玉商品は20年前に何人もの女性を殺害し、最近死刑が執行されたルーカス・リームが乗っていた乗用車。だが、舞台に現れた車の中には、主催者の一人、デーモン・ハーローの血まみれの遺体があった。客たちは人形を使った演出だろうと思い、喜んでカメラを向ける。
血痕などの状況から、デーモンはその車の中で何度も刺されて殺害されたと思われた。ダッシュボードの指紋を照合すると、カジノで働くノラ・ウォーターズと一致。ノラはリームに殺害された被害者の妹で、姉がクローゼットに匿ったおかげで助かったのだった。ノラはデーモンの恋人で、彼は殺人犯の心理を研究していたのだという。警察にノラの父親が現れ、娘を心配する。
デーモンの死因はやはり、ナイフで複数回刺されたことによる失血死。体内からは古い骨の欠片が見つかり、デーモンは人骨を研いで作ったナイフで刺されたことがわかる。しかもその骨は、処刑されたルーカス・リームの骨だった。
リームの処刑後、遺体が葬儀社から盗まれていたことがわかる。リームの骨からはナイフが何本も作られ、ブラッドマーケットと呼ばれる闇ルートで販売されていた。デーモンも仲介役として取引に関わっていたらしい。
ノラの父親のブルースがリームの骨をすべて入手して破壊しようとしていたことがわかり、ニックとサラが取引場所へ向かうが、ブルースはそこで殺害されていた。ブルースはやはり何度も刺されており、口の中には革ジャケットのフリンジの切れ端が残されていた。ルーカス・リームも同じようなフリンジ付きジャケットを着ており、デーモンの殺害現場にあった特徴的な血痕もフリンジによるものと思われた。
ニックはブラッドマーケットについての情報を得て、模型殺人事件で使用されたミニチュア模型を「手土産」にして取り引き会場へ向かう。そこで骨のナイフを持っていたジェイコブ・ウォーレンと接触するが、調べてみるとジェイコブの持っていたナイフはリームの骨ではなかった。しかし別の殺人犯の骨が使用されており、最初「遺体を盗まれた」と主張していた葬儀社のナーヴィックが実はナイフを制作して売りさばいていたことがわかる。
ナーヴィックは自分の軽犯罪を見逃す代わりに顧客リストを渡すという取り引きを持ちかける。ナーヴィックのリストを調べてみると、ナイフはすべて同じ人物が購入していた。匿名で住所は私書箱のようだったが、グレッグは「デッド・オウル・クリーク」という地名を見て、冒頭の現場で言葉を交わした若者カイル・ジェサップを思い出す。カイルはリームに心酔し、リームの伝説を守るためにデーモンらを殺害したのだった。
冒頭に登場する不気味なイラスト。昔のエピソードに出てきたなぁと思ったら「ブルー・ペイント・キラー」の作品だという。シーズン3「死刑執行停止」とシーズン5「青の衝撃」に登場し、西ラスベガス大学で殺人を繰り返していた連続殺人犯。連続殺人のストーリーアークも、あの頃はまだ面白かったなぁ……。
連続殺人といえば、シーズン13の「死霊の囁き」にも「20年前の連続殺人犯」シムズの話があった。リームの事件は現時点から20年前なので、シムズの2年後ということになる。その5年後くらいにポール・ミランダの事件があり、ブルー・ペイント・キラー、模型殺人……。
グレッグはベガス・マフィアの本を書いたけれど、ベガスの「シリアルキラー列伝」もかなりのボリュームになりそう。
収監された殺人犯が制作した作品や手紙などを蒐集するコレクターは日本にもいて、銀座のヴァニラ画廊ではそのような作品を展示する「シリアルキラー展」が何度も開かれている。これが毎回盛況で、会期末近くになると入場制限がかかるほど(会場が狭いせいもあるけど)。実利的な動機がなく、偶発的なものでもない快楽殺人は、人々の好奇心を引き寄せる心の闇を固めたようなものだろうか。恐ろしいが知りたい。この手の事件では最も古い19世紀の「切り裂きジャック」事件も、世界中にマニアがいる。中には殺人犯を称揚する者たちもいることは、ハスケル事件でも言及されていた。
事件の「ドラマ性」は、捜査する側よりも圧倒的に当事者、特に加害者側にあるので関心が集まるのも当然な面はあるのだが、上記展覧会のパンフレットにあるように「犯罪者への憧れをいたずらに増長させる」ことのないよう、精神的な距離を保っていきたいものだと思う。