CSI: Miami - Season 3, Episode 3
You know, they say that one day at a time works both ways.
ホレイショ、デルコ、イェリーナ担当。
両手に大荷物を持った女性の買い物客が、急ぎ足で歩いていた。その後彼女は突然バスの前に飛び出し、はねられて死亡。その場所には監視カメラがなかったので、パトロール警官のウルフ巡査が、近くにいた目撃者がカメラかビデオで撮影していないかを調べる。デパートの警備員が万引き犯を捕まえたが、その犯人が被害者の財布を持っていた。万引き犯は以前にも同じ場所で逮捕されたことのある常習犯だったが、被害者を突き飛ばしたことは否定する。拳銃を持っているふりをして、荷物で両手がふさがっている女性客を後から脅し、財布を奪っていたのだ。
万引き犯を尋問している途中、ウルフ巡査が会いに来る。CSIへの転属を希望し、イェリーナに口添えを頼んでいたのだ。ウルフは大学で化学を専攻し、パトロール警官として勤務するかたわら夜学で遺伝学をも学んでいた。これまでも殺人課の捜査に同行したり、定量分析やセミナーの受講などをこなしていた。パトロール勤務自体に不満はないが、事件の解決を最後まで見届けられるCSIの仕事を希望しているという。ホレイショはウルフの拳銃をチェックし、神経質なまでに手入れされていることを確認する。
被害者の氏名はカトリーナ・ハナガン。広告会社に勤務するジェイ・シーヴァーという恋人がいた。背中には、死ぬ直前にできた痣があった。おそらく手で、力いっぱい突き飛ばした跡。他にも内出血や手首の骨折など古い傷跡がいくつもあった。継続して虐待を受けていたと思われる。
そんな折、ジェイ・シーヴァーの会社のエレベータで、男性の遺体が発見された。停止していたエレベータの上に突き落とされたのだ。手の中には緑色の小さな布きれがあった。氏名はパトリック・ウェイクフィールドで、ジェイ・シーヴァーとは昇進をめぐるライバル同士だった。
ジェイは、クローディア・サンダースという女性にストーキングされていることを認めた。数回デートしたが、5ヶ月前に接近禁止令を出してもらったという。だがクローディアに話を聞くと、ジェイはうっかり者なので自分が面倒をみているだけだといい、禁止令はジョーク扱いだった。
パトリックが握っていた繊維片は、制服によく使用される化繊で、植物の葉のツヤ出しスプレーの液が付着していた。クローディアは観葉植物のメンテナンスをする会社に勤務し、ジェイの会社にも出入りしていた。クローディアの会社のロッカーには、袖に穴の開いた緑色の制服があった。破れた部分はパトリックが持っていた繊維片と一致。クローディアはパトリックの殺害で逮捕される。
カトリーナの現場では観光客がデジカメで写真を撮っていたが、あいにく撮影者は現場に背を向けていた。しかし被写体の眼球を拡大すると、そこには事件直前のカトリーナが映っていた。姿勢から、誰かに突き飛ばされた瞬間だとわかる。彼女の後にいた人物は、顔は見えなかったがクローディアの制服と同じグリーンのシャツを着ていた。カトリーナが着ていた衣服の背中の部分からは、植物のツヤ出し液が検出された。またカトリーナが妊娠していたことも判明。その事実を知ったクローディアが背後から押したのだ。
ホレイショは、クローディアがジェイのために他にも殺人を犯していることを疑う。関連がありそうな未解決の事件を調べると、クローディアのアリバイが裏付けられない事件が1件あった。マイアミビーチで刺殺されたマーティン・パールマンという男の事件で、新しい家を買った次の日に殺害されていた。刺殺という手口はクローディアのやり方ではないが、住所を見ると、マーティンの買った家には、現在ジェイ・シーヴァーが住んでいるとわかる。
クローディアの家には、刃先が折れ血がついたカッターナイフがあった。マーティンの体内から発見された刃の欠片は、そのカッターの折れた部分と一致。刃に付着していた血液は、マーティンとジェイのものだった。ジェイは家の売買をめぐってマーティンと争い、カッとなって刺した。そこへストーキングしていたクローディアが登場し、現場の後始末をしてナイフを持ち去ったのだった。
ウルフ、カリー、トリップ刑事担当。
カリーのもとへ父親のケンウォール・“デューク”・デュケーンが訪ねて来る。「車で人をはねて殺したかもしれない」と言う。カリーは車を調べ、血痕を発見。デュークに酒を飲むように言う。「気持ちを落ち着けるために酒を飲んだ」と言って飲酒運転をごまかすためだ。カリーは自分で事件を担当しようとするが、ホレイショはそれを却下し、新人のウルフに捜査を命じる。
トリップは、デュークが事件の夜バーにいたことを突き止める。ウルフはタイヤから鉄や生石灰など、建設現場によくある物質を検出する。トリップはウルフとともに、バーと家の間にある建設現場へ向かい、そこで男の遺体を発見する。胸にタイヤ痕があった。
デュークの服には、小さなガラス片がいくつも付着していた。車のサイドウィンドウが割れ、座席にガラス片が落ちていた。カージャックにあったものと思われた。
遺体の身元はトラヴィス・マディソン。死因は車にひかれたことではなく、円筒形のもので頭を殴られたこと。ウルフは凶器を探すため、再び建設現場へ向かう。誰かが片足に体重をかけ、何かを遠くへ放り投げた足跡があった。土管の中からワニが出現するが、ライアンはローストビーフを使ってワニを追い払い、凶器のパイプを回収。デュークの容疑が晴れたのでカリーも捜査に参加。パイプには、前歴のあるラリー・グリルという男の指紋があった。ラリーは麻薬のことでトラヴィスと争い、殺害。通りかかったデュークの車をカージャックして逃げようとしたが、デュークは車を降りず、トラヴィスを踏んで走り去ったのだった。
新人ウルフくんの登場。ルックスもいいし何だかフレッシュな感じだ。パトロール警官をしながら夜学で勉強するという努力家。初登場の場面から優秀なところを見せたばかりか、いきなりラボに放り込まれても臆することなく淡々と分析をこなし、現場でも機転を利かせて凶器を発見。何だかできすぎ君じゃないかウルフ!
一応、分析の経験はあることになっているので、ラボの使い方などは心得ているのだろう。しかし自分でメインに担当する「最初の事件」としては動きに迷いがなさすぎるような気もする。これも最初のドラフト段階ではデルコあたりが担当していたのではないだろうか。ワニ担当だし。そんでAプロットの事件はスピードルが……。ああやっぱりそのことを考えてしまうなぁ。
いつまでも惜しんでいてもしょうがない。そう思いつつも、“SPEEDLE” の名札のついたロッカーがそのまま置いてあるのが切ない。きっとあの名札は当分そのまま外さないんだろうな……。でも殉職警官のロッカーを全部そのままにしておくわけにもいかないので、どこかで吹っ切るしかないのだろうけど。でもそれは、もっとずっと先であってほしい。レイモンドのロッカーは、今はホレイショが使っていたりするのだろうか。
ところで、新人ウルフも気になるところだが、今回のエピソードはカリーの位置づけにも大きく関わってくるように思う。これまでのカリーは、最もCSIらしいCSIとして描かれていたと思う。弾丸・弾道分析の腕は一流。証拠収集のためなら「女の武器」もためらわず使い、職場にクリスマスカードを送られるほどのワーカホリック。パーティで騒ぐより銃を扱っている方が好き。弱者への暴力は決して許さないが、さりとて感情的にのめりこむでもなく、というバランスを保っている存在だった。そんなカリーのアキレス腱が父親なのだろう。
「永遠の旅立ち」でスピードルの銃を調べたカリーは、結論を「動作不良(malfunction)」にとどめた。明確にされてはいなかったが、カリーはおそらく、原因がメンテナンス不足であった可能性が高いと判断していただろう。だが、その判断は推測(speculation)の域を出るものではないとして、確実に言える最低限の結論だけを提示した。しかし今回、デュークに酒を飲めと言ったのは、明らかに工作だ。息にアルコールの反応が出ても「さっき飲んだ」と言えば飲酒運転は証明できない。ホレイショがそれに気づかないはずがない。ラストシーンで、ホレイショはカリーをいたわる言葉をかけ、笑顔で見送ったが、カリーが去った後の最後の瞬間には真顔になっていたように見えた。公私混同という点では、ホレイショもあまり偉そうなことを言える立場ではないはずだが、今後が少し心配になる表情だった。
— Yoko (yoko221b) 2006-07-15