CSI: Miami - Season 3, Episode 11
Glenn, we are the deceased's last line of protection before they are put into the ground.
レストランで食事を終えて帰ろうとした夫婦の車が襲われた。車は猛スピードで走り去り、ほどなく被害者が発見される。妻ケイは土手に放り出されたうえに射殺され、夫モーガンは負傷していたが意識はあった。モーガンの話では、犯人は車に乗り込み、彼に財布を要求したうえ銃で殴ったという。スキーマスクを着用していたため、顔は見ていない。
だが車の中には、現金が入ったままのコールマンの財布があった。また、モーガンの怪我はバックミラーに頭をぶつけた物だった。本当にカージャック犯がいたのか、と疑われるが、車の後部座席からは顔の上皮細胞が検出され、前歴のあるヴィクター・ティノコという男が乗っていたことがわかる。
ホレイショらはティノコの自宅へ向かうが、そこには彼の射殺体があった。ティノコの手に発射残渣はなかったが、手についた汚れから現場にいたことは明らか。部屋にあったメモから、ティノコが誰かから犯行を指示されたらしいとわかるが、その紙には「コールマン・シャッター」のマークが入っていた。それはモーガン、サル、フレディの兄弟が経営する会社だった。同社は、製造物責任を問われて訴えられており、訴訟に負けると会社の存続も危うい状況だった。社内のプリンターを根こそぎ押収して、メモをプリントした機器を調べると、一致するのは、次男のフレディだった。
ケイは排卵誘発剤と避妊用ペッサリーを同時に使用していた。妊娠を望む相手と望まない相手がいた(つまり浮気)と仮定して、カードの履歴や銀行口座で浮気の形跡を調べるが、ケイはオンラインのギャンブルに耽溺し、金が必要になったため、人工授精クリニックに卵子を売って金銭を得ていたことがわかる。
ケイはそれだけでなく、自分に横恋慕しているフレディからも金銭を得ていた。フレディは製造部門の責任者だったが、シャッターに安い粗悪なアルミを使用して金を横領したのだ。その素材はハリケーンに耐えられる物ではなかったため、事故が起きて訴えられる羽目になった。フレディは、秘書のジュリーも卵子のことを知っていたという。ジュリーはサルのアリバイを証言した人物だったが、ジュリーの携帯電話の記録を調べると、ちょうど最初の犯行が行われた時刻にレストランの付近で通話していたことがわかる。だがジュリーはサルに電話を渡したと主張し、誰が電話を持っていたかまでは断定できなかった。
銃弾を比較した結果、ケイとティノコは同じ銃で撃たれていた。ティノコはちょうどフリーザーを開けたところを後から撃たれ、弾は貫通してフリーザーの壁にめり込んでいた。そのため、冷蔵庫のフレオンが放出されて犯人の衣服に付着している可能性が高かった。
サルの衣服はドライクリーニングされていたが、シャツの袖口からはフリーザーの痕跡が発見される。一方ホレイショは、最初にモーガンから聞いた「自分は信心深い人間ではないが、自分に繰り返し呼びかける神の声を聞いた」という言葉を思い出す。サルのネクタイを切って開くと、中には血痕があった。サルは「自分の兄弟の未来の子」を売り飛ばしたケイを恨んで殺したが、モーガンを傷つけるつもりはなかった。そこでモーガンの上にかがみこんで無事を確認するために何度も呼びかけた。その時にネクタイに血がついたのだった。
アレックスはアルコール依存症治療の一環として、飲酒運転で死亡した被害者の検死を見学させていた。その一人デレク・ロディソンが検死官の助手をさせてほしいと申し出る。アレックスは1週間の試用期間として採用。
その後、アレックスは遺体の持ち物を調べ、酒のボトルが紛失していることに気づく。その遺体を処理したのはデレクだった。アレックスはデレクの犯行を疑うが、その後助手のフォスターがボトルを発見。カリーが指紋を調べると、発見された指紋は、検死官グレン・モンローのものだった。デレクの疑いは晴れるが、デレクはレンジャーの方が自分に向いているからと言って、そのまま検死局を後にする。
アレックスは再び、飲酒運転で死亡したドライバーを迎える。それはグレン・モンローだった――。
マイアミにしては珍しく科学捜査らしい内容。これはホレイショが一歩引いて部下に捜査を任せているからなのだろうか。addiction(耽溺、依存症)というテーマではホレイショが苦悩しつつ暴れまわってもおかしくはないのだが、今回は主にウルフのサポートと指導に回っていた。ウルフも初登場時のできすぎ君っぷりには少々驚いたが、逆にだんだんと新人らしくなってくるのが面白い。
最初にモーガンが「銃で殴られた」と言ったのは、単に彼がそう思い込んだ勘違いだったということかな。でも、ミラーにぶつけたのなら、頭の前方に衝撃を受けるから、後部座席に乗っていた犯人のはずがないと思わないのか。思わなかったんだろうなぁ、混乱していて。
ギャンブルにおぼれる妻ケイ、そのケイに横恋慕して横領してしまう(その結果、顧客を死なせてしまう)フレディ、家系とプライドに固執し、一族を裏切ったケイに殺意を抱くサル――結局、最初に怪しかったモーガンだけがまっとうに生きていたということなのか。モーガンに会社の半分を譲ったパパの目は確かだったのだな。でもモーガンとケイの仲は見かけだけで、実際は冷え切っていたのだろうか。だからモーガンはケイのギャンブルのことも卵子のことも知らなかったし、事件の後も当然のように会社に行ってしまった。モーガンにも、ワーカホリックという addiction があったのかもしれない。
「どんな立派な一族にも問題はある」「我々がそのツケを払うのか」というホレイショとモーガンの会話では、やはりホレイショの弟レイモンドを思い出す。彼もまた麻薬への addiction に苦しんだはず。そしてホレイショは、レイモンドが愛するイェリーナを裏切ったことも知っている。ただ、ホレイショがマディソンの面倒を見るのは、弟の過ちのツケを払うのではなく、純粋に伯父としての愛情からだと信じているけれど――。
今回はBプロットのアレックスの話も印象深い。こちらでアルコールに addict していた検死官グレンは、「造られた女」で登場した嫌味な検死官。死人には必要ないだろうと酒を失敬してしまうのだが(でもそれって事件性のあるケースじゃなかったっけ?証拠品じゃないの?)、アレックスは「死者が埋葬される前、最後に守るのは私たち」と、それを許さない。死者への敬意と責任感とプライドが感じられる台詞だった。
— Yoko (yoko221b) 2006-08-14