CSI: Miami - Season 3, Episode 24
Brother… I'll never be clean.
クラブで爆発事件が発生。そこは本当はクラブではなく、ロフトに音楽の機材を無断で運び込み、口コミで客を集めるという、ゲリラ的なクラブ(ブレイクイン・クラブ)だった。爆死したDJは独立をめぐってプロモーターと争っていたというが、爆風の向きから、爆発はステージの奥にある隣の部屋で起きたことがわかる。そこにはもう一体の遺体があった。
ウルフは現場で水銀スイッチを発見。クラブの音楽が強い振動を与えて、スイッチが起動したのだ。現場には高度計もあったが、その用途は不明。まだ実験の途上である可能性があった。
爆弾の部屋にいた被害者、ブランドン・ミラーの腹部には、爆発より前にナイフで刺された傷があった。また、血液からは高濃度のヨウ化物が検出された。通常は甲状腺の治療に使う物だが、この犯人は健康だったので、治療ではなく放射線の中和に使用された、つまり放射能爆弾を製造していた可能性が考えられた。
爆弾に使用されたTNTの出所は、フロリダのMPから横流しされたものとわかる。流出した爆薬は3ケースで、実際の爆破被害はそれより少ない。まだ未使用の爆薬があると思われた。
デルコは現場付近に隠されていたナイフを発見。指紋を調べると、デルコにはアクセスできないデータがヒットした。ホレイショが自分のクリアランスレベルで調べると、その指紋の主はレイモンド・ケインであった。ホレイショがデータにアクセスしたことを知り、デイヴィッド・パーク捜査官が現れる。レイモンドは囮捜査中に、麻薬取引による金がテロリストに流れているという事実をつかんだ。そして現在は連絡を絶ち、行方不明であるらしい。
一方、カリーは現場から何かが持ち去られた跡を見つけるが、それを写真に撮っている時に、何者かが後から銃を突きつける。その人物は銃を撃たずに立ち去る。不審人物を見た者はいなかった。カリーはその人物の顔を見なかったが、クリック音を頼りに銃の種類を絞り込む。
爆発現場で発見された部品から、クラブの客と思われたマット・ヤングが最初は爆弾犯とともにいたことがわかる。隣から聞こえる音楽を不審に思い、見に行ったところで爆発に巻き込まれたのだ。
ヤングを尋問していたホレイショは、レイJr.に危険が迫っていることを知る。ジュニアを探すためホレイショが車に乗ると、そこにはすでに父親のレイモンドSr.が乗り込んでいた。そこへヤングが逃亡したことをヘイゲンが報せに来る。レイモンドは囮捜査官であることをミラーに知られ、争いになって刺してしまったのだった。
ヤングが逃亡したことを知り、ホレイショとヘイゲンはヤングの自宅へ向かい、そこで何かの数字を書いたメモを発見。ホレイショはヘイゲンの身を案じ、クリーンなままでいられるよう「ここで手を引け」と忠告するが、ヘイゲンは「自分はもうクリーンにはなれない」と言う。ホレイショはヤングの車を手配し、倉庫へと追跡する。そこではヤングがジュニアを拘束し、レイモンドが息子を助けようとしていた。銃撃戦になりホレイショはヤングを射殺するが、レイモンドも撃たれる。ホレイショはジュニアが父親の姿を見る前にその場から連れ出す。
レポーターのエリカ・サイクスはウルフとの会話から放射能爆弾の可能性を知り、報道したために市内はパニックになりかけていた。
銃器室では、ヘイゲンがカリーのもとを訪れる。カリーは刑事としての自信を失ったヘイゲンを「友人として」元気付けようとするが、ヘイゲンはその言葉に逆に絶望し、拳銃で自殺を遂げる。ヘイゲンが安全装置をはずした音は、カリーが聞いた「あの音」だった。ヘイゲンのポケットには、ミラーの写真と気象データらしいグラフを書いた紙片が入っていた。彼は「ヒーロー」になりたいと願うあまり、その紙片を現場から持ち出し、カリーに気づかれたために銃を向けたのだった。
ヘイゲンが持っていた気象データは、爆弾によって放射性物質を撒き散らすためのデータだった。現場に高度計があったのは、ヘリコプターを使って上空で起爆するため。ヤングのアパートにあったメモの数字が経度と緯度を表しているとするなら、起爆する場所はダウンタウンにあるキャリロパークだ。その位置で被害が最も大きくなるのは、午後4時――15分後だった。ホレイショは現場へ急行し、ヘリコプターで離陸しようとしていた爆弾犯を取り押さえ、爆弾を解体。危機は去った。
アレックスはヘイゲンの検死を終え、デルコはTVでインタビューを受けるウルフの姿を見て苦々しく笑い、そしてカリーは自分の名札をはずして銃器室を去って行った。
ホレイショはイェリーナをブラジルへの休暇旅行に誘い、レイJr.とともに3人で飛行場へ向かうが、ホレイショは寸前で立ち止まる。飛行機から現れたのはレイモンドSr.だった。銃弾はレイの防弾チョッキにめり込み、ホレイショはパトカーが到着する前にレイを逃がしたのだった。
ちょっと詰め込みすぎじゃないかこのフィナーレは!
ヘイゲンが自殺し、彼のデータから爆弾の場所を割り出すあたりは、かなーり駆け足で、最初に見た時は背景事情(誰が何に関与しているか、とか)をほとんど追えなかった。何か知らんがホレイショが爆弾を解体して解決したの? みたいな感じ。
全体を軽くおさらいしてみると、爆弾犯ミラーを刺したのはレイモンド。爆発はクラブの大音響が引き起こした事故。ジュニアを誘拐したのはヤングの仲間。ヤングはいったん脱走したが、ホレイショがOnStarで追跡して射殺。ヤングの仲間はその場から逃走したが、その後爆弾をヘリに積むところでホレイショが追いつき射殺。これで、刑事事件は全部解決したのかな。今回登場したのは下っ端の実行犯で、テログループの親玉は謎のままだが、そういうのは地元警察の知ったことではないのだろう(そうなのか?)。
さて、シーズン1から延々と引きずってきたイェリーナとレイモンドのことは、ここでひとまず終了。
途中までは自分も一緒にブラジルへ行くと思わせておいて、飛行場に行ってみるとそこにはレイモンドがいて――という、もう「カサブランカ」かよ! というような結末。だが、サングラスを装着して飛行機を見送るホレイショの立居振舞は完璧だった。孤独をまとい一人佇むホレイショ、素晴らしい! そこに至る過程への(山のような)ツッコミはすべて、胸の内に仕舞っておくことにしよう。
レイモンドが生きている、とわかったあたりから徐々に主張が強くなり、前回のエピではついにステットラーを叩き出したイェリーナ。イェリーナの存在感が強くなると、ホレイショの側から女性が姿を消すという今までの法則からいうと、今回は――? と思ったら。
なんと、イェリーナ本人が退場!(爆)
そんなのありかよ!
ホレイショは結局最後まで、姫君を王子様のもとへ送り届ける騎士だった。イェリーナ、前回は強い女性だったのに今回はまた元に戻っちゃったよ、と思って少しがっかりしたが、最後にホレイショと抱き合う場面と、その直後にレイモンドに見せた表情は良いと思った。あの泣いてるのか怒っているのかわからない表情。レイモンドに対する複雑な思いが溢れていて良かった。今までにも、もっと色んな表情を見せてくれていたら良かったのになぁ。泣いても怒っても美人は美人なんだから。
レイモンドのキャラもシーズン1の頃と比べて変わったと思うが、それに応じてホレイショとレイモンドの関係も変わっているように思う。S1のレイモンドだったら、ホレイショは弟を抱きしめるか、せめて肩を抱くとか、もっと親密にしたと思う。もっとも、S1のレイモンドなら生き返らなかったかもしれないけど。今のレイモンドは、もちろん愛情は抱いているが、生きていたらいたで困った弟という感じ。兄弟らしい仕草が2人で指差し確認しあうだけ、というのはちょっとあっさりしすぎていたかなぁ。この仕草自体は、子どもの頃から2人だけに通じる合図、みたいな感じで良かったけど。ホレイショたるもの、たとえ実の弟でも男はハグしないものなのか。
それとも、スケジュールの関係か何かで別撮りだったのかな? この2人、同じ画面で同時に顔が映るタイミングがなかったような気がする。
さて、ホレイショ、レイモンド、イェリーナの話はそれなりに美しく終わったわけだが、それ以外はラボも刑事課ももう大変な状態のまま終わっている。次シーズンどうなるのだろうといちばん心配なのは、やはりカリーだな。ヘイゲンが、よりによってカリーのいちばん大切な銃器室で自殺した、というのは本当にショックだった。ヘイゲンも、レイモンドがパートナーだったばっかりに、レイの「死後」いろいろと苦労してきたことや、ホレイショが彼を守ろうとして言った言葉にかえって追い詰められてしまったことを思うと、本当に気の毒でしょうがない。ヘイゲンがホレイショに “Brother” と呼びかける場面は胸が痛いほどだった。レイモンドが生き返ってくるのと入れ替わるように死んでしまうなんて。
カリーは自分の名札をはずして帰ってしまったけれど、これで辞めるわけではないはず。次シーズンでは、以前のように元気で前向きで、弾道学の単純明快さが大好きな Bullet Girl のカリーに戻ってほしいなと思う。S1で親友を亡くし、S2で恋人と破局、このシーズンでは同僚と元彼を亡くし、パパの事件もあって、あまり良いことのなかったカリーだけど、次シーズンではもっと良いことがありますように……。
— Yoko (yoko221b) 2006-10-03