CSI: Miami - Season 8, Episode 17
広告代理店の受付係、ルネ・ドーセットが殺害される。遺体は消防用の斧を頭に刺され、エレベーターの天井裏に遺棄されていた。ワイヤーがからまっていたためエレベーターが急降下し、ちょうど乗っていた社員のジェフリー・リプトンが負傷していた。
ルネは同僚たちの行動を細かく監視し、うるさく小言を言うため、皆から嫌われていたらしい。
ケント・アッカーマンは、息子の写真や絵をオフィスに飾り、学校行事などでよく休みを取っていたが、実は子どもはいないという。単身者は休暇もあまり取れずリストラされやすいので、手のこんだ工作をして子持ちに見せかけていたのだ。それをルネに知られて口論になったという。
ヴァレリー・メトカーフは、ルネにプライベートなことを大声で暴かれたため、彼女を恨んで少しずつ食事にヒ素を入れていた。ただし殺意はなく「ちょっとお腹を壊せばいいと思っただけ」だという。
捜査中に不審な物音を聞いたジェシーが天井裏に上ってみると、そこにいたのはテディ・エンワルドで、何とそこに住んでいるという。家賃が高すぎて払えないからと、天井裏に着替えや寝具などを持ち込み、同僚たちの残飯を食べていたのだ。
ルネのデスクからは脅迫の手紙が発見されるが、送られたのは2年以上前で、まだルネが勤め始める前。そこでルネ自身について調べてみると、意外な過去が明らかになる。彼女は一流大学でMBAを取得し、前職は大手投資会社の副社長で、住んでいる家も受付係には似つかわしくない豪邸だった。
ルネの自宅の庭は何者かに車で荒らされており、やはり社員のマーク・バロックがしたこととわかるが、マークはルネを誤解していただけだと言う。マークは職場に飼い犬を連れて来たことを注意され、ルネに告げ口されたと思い込んで花壇を荒らしたが、ルネは実はマークをかばっており「発作を起こしたので介助犬が必要だ」と嘘の報告をしていた。ルネがあれこれ口うるさく言っていたのは、同僚たちが解雇されないよう守るためだったのだ。
ルネが毎月墓地に小切手を送っていたことがわかり、管理人に聞いたところ、ペイジ・ショアハムという女性の墓の手入れをするためだとわかる。ペイジは以前にルネの下で働いていたがリストラされ、それを苦にして自殺していた。ルネに送られた脅迫状は、ペイジの筆跡だった。ルネはペイジが自殺したことで投資会社を辞職し、もう誰もクビにしなくてすむようにと、受付係に転職していたのだった。
ペイジについて調べたところ、彼女には婚約者がいたことがわかる――遺体の第一発見者だったリプトンだ。
病院からリプトンの着衣を回収して調べたところ、遺体発見時の滴下血痕とは異なる血痕が発見される。リプトンはルネを殺害した時に返り血を浴び、その上から上着を着てエレベーターに乗り込み、ルネの遺体を「発見」したのだった。
変な会社!
休みを取るために小道具をそろえて子持ちのフリをする、なんてのはまだ可愛い方だった。家賃を節約するために会社の天井裏に住んで同僚の残飯を食べたり、プライバシーを大声で言われた仕返しに砒素を盛ったり(ベガスでおなじみの「ミーズ線」が出てきた)、とんでもない会社だ。
被害者のルネは、普段から社員の動向に目を光らせて口うるさく言いたてる、アメリカ版お局様みたいな受付係。実は、大手の企業で副社長まで務めていたという華麗な経歴を持ち豪邸に住む。リストラを強行したために社員を自殺に追い込んでしまい、その後「誰もクビにしなくてすむように」と、経歴につり合わない低い立場に転職したのだった。そういう事情がわかってみると、皆の言動にうるさく口を出していたのも「クビにされないようカバーしていた」という彼女の真意が見えてくる。ヴァレリーの薬のことを大声で口にしたのはちょっとどうかと思うけど……。
結局、犯人は以前の職場で解雇されて自殺した社員の婚約者で、遺体の第一発見者だった。冒頭のアレは防犯カメラを意識しての演技なのか、罪の意識が混ざった恐怖感からだったのか……。婚約者のペイジさん、業績が良いのにリストラされるのは確かにショックだろうと思うけど、まだやり直せる年齢だし、普通に稼ぎがありそうな婚約者もいたので、まさかそこまで追い詰めたとはルネも思っていなかったのだろう。
それはともかく、コミカルなタッチで息抜き的に楽しめるエピソードだったと思う。ローマンが「脚立を持って来てくれ~」と言ってるのに無視して置き去りにしちゃうウルフとか、デイド署のエレベーターが何だか不調なのを気にして皆降りちゃう場面とか、面白かった。