CSI: Miami - Season 9, Episode 9
ホレイショは私用で仕事を離れ、車を走らせていたが、途中でジョギング中の男性に助けを求められる。妊婦が重傷を負って倒れているというのだ。ホレイショはただちにその女性、ヘザー・チャップマンを病院へ搬送。夫のゲイリーと義理の息子ジョシュも病院に駆けつける。
現場付近を調べたところ、ヘザーが停車中に車をぶつけられ、カージャック被害に遭ったらしいとわかる。ヘザーの車はただちに手配され、程なく発見される。犯人は2人組で、1人は逮捕したがもう1人は発砲し逃亡。銃弾が以前の強盗事件の物と一致し、逃亡したのはサム・ノヴァクであろうとわかる。逮捕された男はルーベン・フランコで、サムの仲間だった。
フランコの供述が手がかりとなり、ヘザーの写真を隠し撮りしていた写真家、ヴィッキー・ターナーの存在が判明。彼女はノヴァクの元恋人で、彼に頼まれてヘザーの写真を撮ったことを認める。彼女は「当て逃げするだけだと聞いていた」と、ノヴァクの居場所を自供。ノヴァクは自宅で逮捕される。デイド署へ連行するところで、ヘザーの夫ゲイリー・チャップマンがナイフを手に襲いかかるが、その場で取り押さえられる。
ノヴァクの自宅からはヘザーの車のエアバッグが発見される。最初、エアバッグが開いて邪魔になったので取り外したと思われたが、調べてみるとエアバッグは開いていない。そこで改めて車を調べてみると、胎児に衝撃を与えるようハンドルの位置が細工されていたことがわかる。ハンドルの傷を調べたところ、ゲイリーのナイフと形状が一致。
ゲイリーは、ヘザーではなくお腹の赤ん坊だけを殺すつもりだったことを認める。以前の結婚は息子が生まれてから最悪な状況になり、赤ん坊は自分にとって疫病神だったという。ヘザーは完璧な女性だったが妊娠してしまった。「またあのような地獄を味わうのはごめんだ」と考えて今回の事件を計画したのだった。
病院ではヘザーの容態が急変するが、ヘザーは試練を乗り越えて元気な女の子を出産。その頃ホレイショは最初に行くはずだったマリソルの墓前に花を捧げ、デルコは教会でロウソクに火を灯していた。
200回記念エピソード。しかし米国での初放送当時は、スポーツ中継の延長か何かの影響で放送が中止になったりして順序が乱れ、結局このエピソードは199回目に放送され、その次に放送された「砂糖地獄」が200回になったようだ。しかし200回記念エピとしてはやはり今回の方が相応しいので、日本での放送が本来の順序ということで良いのだろう。記念といっても特に大掛かりなことをやるわけではなく、ホレイショがマリソルを想うラストシーンが印象的に挿入されていたぐらいだった。ベガスの200話はゲスト監督を呼んでちょっと変わったことをやっていたが、正直言って成功したとは思えないので、こういう「日常の延長」的な演出の方がかえって良いのではないかと思った。
でも事件は後味悪……子どもは要らない、妻だけがほしいというならパイプカットしとけばいいのに。ヘザーさんの方も終盤では美しく描かれていたけど、不妊治療に苦しむ友達にベビーシャワー(出産直前パーティ)を頼んだりしてちょっと無神経……そこまでなら不注意で済むかもしれないけど、「私の幸せを妬んでるの?」なんて逆切れしちゃダメでしょ。かわいそうなのは息子のジョシュだよね。バイト先が車の解体業者だったせいで疑われちゃうし(結局無関係だったようなので上掲あらすじでは省略)。
そんな感じだったので、Hやエリックが熱くなって走り回るのにもいまいち感情移入できず。被疑者恫喝もどんどんエスカレートしてますよ! 「赤ん坊が死んだら、お前のバラバラ死体がビスケイン湾に浮かぶ」って、警察官のセリフとしては尋常ではない。初期シーズンでは「お前の人生をメチャクチャにしてやってもいいんだぞ」だったけど、メチャクチャでもまだ人生あるだけマシだったのね。
でもそういう部分もすべて許せてしまうぐらい、ラストの場面は良かったと思う。木々の緑にホレイショの髪が映えて何とも美しい。こういう場面を見るたびに、作り手さんが見せたかったのはホレイショのこういう場面だったんだという思いを強くしてしまう。
幸せの絶頂ではなく、孤独や絶望でもなく、幸せだった短い時間の思い出を大切に、亡き妻を想い続ける――それがホレイショに与えられた役割なのだろう。最終シーズンが終わるまで、ホレイショに安定した「お相手」が現れることはないような気がする。
そうそう、今回は出番が限られていたわりにカリーの存在が輝いていた。この時カリー役のエミリー・プロクターが妊娠中だったためか(そろそろ産休に入るのかな)、カリーがヘザーと一緒に祈ったり、最後に赤ん坊を抱っこしたりする姿がとても美しく撮られていた。NYと違ってエミリーの妊娠はドラマに組み込まれず、それ自体は正しい選択だったと思うが、こういう間接的な演出はあっても良い。ドラマの世界に現実が進出しすぎず、美しくまとめられていて素晴らしい。