CSI: Miami - Season 10, Episode 9
ロッコ・ダマラ、ダレン・リグス、ヴィクター・シェトランドの3名が釈放される。3人は19年前に14歳の少年を殺害した容疑で逮捕され、終身刑の判決を受けて収監されていたが、有罪の決め手になった証言が撤回されたため、判決が無効になったのだった。3名には歌手のケイラ・ブレッドソーなど大勢の支援者がおり、釈放を喜び合う。殺害されたトロイ・フェイバーの両親は怒りを隠さない。
だがパーティの後、ロッコが遺体で発見される。手に付け爪が刺さっていたことからケイラが疑われるが、ケイラはロッコの事件のことは知らず「ヴィクターにレイプされた」と打ち明ける。カリーはケイラを病院へ連れて行き検査を受けさせるが、そこへヴィクターが白衣姿で侵入。だがカリーが事前に連絡を受けており、ヴィクターはケイラに手を出せないまま逃走し、病院の外でホレイショに撃たれる。
ロッコは鋭器による損傷を受けており、中にはトロイと類似した傷があった。その傷はマスコミでは詳しく報道されなかったもので、捜査や裁判で詳細な情報を得ていた者による復讐と考えられた。さらにロッコの着衣に残っていた痕跡から、トロイの父親ブルースが軍隊時代に支給されたナイフが凶器らしいとわかる。ブルースは「何も話さない」と口を閉ざすが、妻のコニーが「私が刺した」と自供する。コニーは3人の犯行を確信し、彼らが釈放されたことに耐え切れずに刺したのだという。
だがコニーが刺したのは1度だけで、その傷は浅く致命傷ではない。ロッコは複数の刺し傷を負っており、致命傷になったのは別の凶器による傷とわかる。さらに調べを進めた結果、別の凶器による傷口からはトロイの乾いた血液が検出される。つまり、19年前にトロイを殺害した凶器を使って、誰かがロッコを刺したということになる。
19年前の事件では、凶器は結局発見されていなかった。そこでカリーはトリップとともに当時の捜査メモを調べ直し、凶器は現場近くに隠されているのではないかと思いつく。改めて徹底的に捜索したところ、樹の根元から凶器の一部と思しき金属片が発見される。その金属片は、槍投げの選手だったダレンが使っていた槍だった。
ダレンは、自分がロッコを殺害したことを認める。19年前、ロッコとヴィクターは隠れてドラッグを吸引していたところをトロイに見られ、公になればスポーツ奨学金を取り消されると恐れ、ダレンの槍を使って口封じのためにトロイを殺したのだった。ダレンはずっとそれを知らず、今日になって実は2人が犯人だったことを知り、ロッコを殺害したのだった。
このシリーズでは珍しい、Ripped from the headline(現実の事件を基にした)エピソード。元ネタは、1993年にアーカンソー州で起きた「ウェスト・メンフィス三事件」とのこと。現実の事件では被害者が3人だったが、拷問したうえでの猟奇的な犯行、3人の若者を逮捕したこと、ミュージシャンなどの有名人が3人の無実を訴えて支援していた点など、かなり共通した要素が多い。
現実の事件で逮捕された若者3名は18年間収監され、2011年の8月に釈放されている。で、このエピソードの放送がその3ヶ月後。そのタイミングで、フィクションとはいえ「3人のうち2人は有罪でした」というエピソードを放送するって、ちょっと凄いよね。形式的には有罪答弁に応じて釈放されたのだが、報道を読んだ限りでは実質的に冤罪が認められたようなものだと思う(再審公判の直前に取引)。日本で、たとえば足利事件や袴田事件で同じようなことができるだろうかと考えてしまった。
19年前の事件ということで、「コールドケース:マイアミ」的な仕上がり。マイアミ・デイド警察の歴史は途中で設定変更があり、シーズン8のプレミアでは1997年にCSIが誕生したことになっていた。トロイの事件はその5年くらい前ということになるので、本格的な科学捜査は行われていなかったということなのだろう。それにしても、現場の木に刺さっていた凶器の破片に当時誰も気づかなかったのだろうか。初動捜査で見落とされたうえ、19年の間に大々的な支援活動が行われていたのに、誰も現場で凶器を探そうとはしなかった? これだけ話題を集めた事件なのだから、事件の後からでも大勢の人が荒らし回っていそうな気がするし、ハリケーンも津波も竜巻もあったのに……。
細かい所を見ていくと他にも粗がありそうだけど、まぁいいか。今回はトリップを活躍させるための話だったと思う。トリップは制服警官として事件を担当し、過去と現在をつなぐ重要な役割でいい味を出していた。