CSI: Miami - Season 10, Episode 13
スカイダイビングをしていたケヴィン・ラムジーという男性が、パラシュートが開かず道路に叩きつけられて死亡する。事故かと思われたが、被害者のパラシュートには硝酸が仕込まれており、意図的にパラシュートが開かないように細工した殺人であるとわかる。
ケヴィンの持っていた高度計が実際よりも高く設定されていたため、パイロットのアーニー・ティッシュを追及したところ、燃料を節約するために設定値をごまかしたことは認めたものの、パラシュートへの細工は否定し「ケヴィンの車を壊した奴がいる」と言う。
ケヴィンの車を壊したのは、キャメロン・ロックという若者とわかるが、DNAを比較してみると、キャメロンはケヴィンの息子だったとわかる。ケヴィンと妻の間に子どもはいないが、キャメロンはドナーキッド、つまりケヴィンの提供した精子を用いた人工授精で生まれたのだった。ドナーはドナー番号しか明らかにされないはずだったが、キャメロンはクリニックが運営するドナーキッズ用Webサイトで、自分の「実父」の名を知ったという。調べてみたところ、ケヴィンの「子どもたち」は何と103人もいたことがわかる。
サイトでケヴィンの実名を明かしたのは、同じくドナーキッドのスコット・バンス。検索をしているうちに、クリニックのサイトの内部に入り込んでしまったという。ケヴィンのシャツからはスコットの唾液が検出され、唾を吐きかけたことがわかる。だがそれはスコットではなかった。一卵性双生児がいたのだ。
スコットの母親は仕事で多忙なため代理母に出産を依頼していた。代理母になった女性は、14回も代理出産したが自分の子どもは1人もいなかったため、双子を妊娠した時に片方を自分の子として育てることにした。ケヴィンに唾を吐いたのはその息子、トレントだった。
トレントはケヴィンから遺伝したウィルソン病を患い、移植が必要だったので、ケヴィンに頼みに行ったが冷たく断られたのだった。トレントは「自分が殺した」と言うが、刑務所で治療してもらうための虚偽自白なのは明らか。
クリニックの医師に事情を聞いたところ、保管室に何者かが侵入してケヴィンの精子を破壊したという。指紋を隠すために使用した薬品から、侵入者はパイロットのアーニーと判明。アーニーの娘もまたケヴィンのドナーキッドで、ウィルソン病で死亡していた。アーニーは、病気であることを知りながらドナーになったケヴィンを恨み、危険な高度でパラシュートを開かせようとしたことは認めるが、パラシュートには手を触れていないという。
一方、カリーは硝酸の濃度とビニールが溶ける時間で犯行時刻を割り出すため実験を繰り返していたが、誤って硝酸を手にかけてしまう。急いでアンモニアで中和したデルコは、皮膚がオレンジ色に変色していることに気づく。犯人はおそらく、時間を計るために実験を繰り返し、同じように手を変色させているはず。ナタリアは、ドナーキッドに事情を聞き、ケヴィンの妻がドナーキッズの存在を知っていたという事実をつかむ。
ナタリアは口実を設けて妻のメレディスを呼び出し、手にオレンジ色の変色があることを確認。メレディスはケヴィンとの子を望んでいたがかなわず、諦めていた。だがケヴィンは精子提供をして103人もの子どもを作っておきながら、結婚するとパイプカットし、「無精子症になった」と嘘をついて趣味に明け暮れる日々。自分の人生の最盛期を奪ったケヴィンが許せず、趣味のダイビング中に死ぬことを狙って、パラシュートに細工をした。化学の教師だったメレディスには簡単に思いつける手口だった。
これもネタバレ邦題と言って良いかな。サウジアラビアのアブドゥルアジーズでも100人はいなかったはずなので、これはもう、人工授精だなと見る前から見当がついた。Law & Order でも似たような話があったが、現実では150人というケースもあるとのこと。
クリニックにしてみれば、検査のコストを節約したいので、いったん合格した「優良」な精子はできるだけ有効に使いたいということだろう。なのにウィルソン病は調べていなかったのかという疑問は残るが、同じ遺伝子を持っていてもスコットの方は発病していないようなので、発病する確率が低いのか、食生活などの環境に左右されるのか、あるいは早めに治療しておけば治るものなのかもしれない。人工授精を利用するカップルは総じて裕福だろうから、治療にもお金をかけられる。近親婚のおそれはないのか、という疑問もあるが、全米中に分散させていればその確率も十分に低くなるのだろう。
お金を稼ぐために精子を売り、100人を超える我が子を持ちながら、父親としての責任を嫌って趣味に生きる男。14回も代理出産したが自分自身の子には恵まれなかった女。卵子とお金を出して後は出産までクリニックにお任せの女。妊娠・出産のプロセスがビジネスに組み込まれていくことを、ことさらグロテスクに描いてみせようという意図が感じられた。「子どもを盗んだわね!」「1人分の料金しかもらってないわよ!」という言い争いには殺伐としたものを感じてしまった。