小説版CSI:NY第2弾。著者前回に続きスチュアート・カミンスキー。季節は、前作と反対に蒸し暑い夏のニューヨーク。マックとダニーは、クイーンズの住宅街で起きた一家惨殺事件を担当。両親と十代の娘が刺殺され、十歳の息子が行方不明になっていた。一方、ステラ、エイデン、フラック刑事はブルックリンのシナゴーグでユダヤ教徒の男性が殺害された事件を担当。被害者は、近隣に住むカリスマ的な宗教指導者との間でいさかいを起こしていた。
マックとダニーの事件は、一家惨殺事件として始まり、サイコサスペンス風に展開し、単純にこのまま進むのか? と思ったらそうではなかった。こういう偽装工作をする場合というのは、実は家庭内暴力の隠蔽でした、という結末が多いので、その意味では意外な結末ではなかったけど。父親の「前科」が出てきた時点で「あー、じゃあこっちの路線でいくのかなー」な感じがしたのだ。でも、それに至るまでのマックとカイルのやり取りや、警察犬を使って楽しそうなマックとか、展開は面白かった。マックのわんこ好きが取り入れられていたのが嬉しい。また、その「前科」に関係する事実(両親に年齢に関すること)が終盤になって明かされるのも、まぁ叙述トリックというほどではないけれど、小説ならではのやり方かな~と思う。映像だと一目瞭然だから。
ダニーは以前に担当した猟奇事件のトラウマから、時おり手が震えるようになっており、マックが心配している。その記述の中で、ダニーの父親も祖父も警察官だったという記述が出て来るのだが……そしてダニーも、メッサー家の伝統を継ぐべくCSIになったようなことが書かれているのだが……。それダニーのプロフィールとはちょっと違っているような気がする。ドン・フラックか、あるいはダニー役のカーマイン・ジョヴィナッツォの話が混ざっているんではなかろうか。
ステラたちの事件は、ユダヤ教の儀式とか宗教コミュニティのことをよく知らないので、そのへんの描写がわかりにくかった。カミンスキーは、他にもユダヤ系の刑事を主人公にした小説を書いており(リーバーマンシリーズ)、さまざまなエスニックコミュニティの記述が多い作家らしい。
冒頭からいきなりストーカーに狙われているステラ、という描写もショッキング。その後、うかうかとストーカーにだまされて危機一髪に……と思ったら、そうはならなかった。さすがステラというか、こういう展開ももはやミステリのお約束のような気がする。「短時間でそこまで先回りできる?」という疑問もなくはないけど、やはり探偵役たるもの、こうでなくては。かっこいい!
事件も二転三転を繰り返す。上述したようなわかりにくさがあったり、突然スケールがでかくなったりしてめまぐるしかったが面白かった。気づかなかった伏線がいくつかありそう。
エンディングでは、事件の捜査を終えたメンバーそれぞれが、友達と食事に行ったり自宅で事件のことを考えたりする。マックはジェイン・パーソンズとピザを分け合って食べながら、クレアさんの話を始める。このラストが、SMAC(Mac/Stella ロマンス)派の人には不評らしい。
ミステリとしては前作の方が面白いと思ったが、より「科学捜査」らしいのはこちらの方かな。現場で発見された木の葉、服の匂い、家具に使われる木材のDNA分析など、証拠を分析する描写が多かったように思う。科学捜査の比率が高くなると、ドン・フラックの影が薄くなる、というのを何となく実感。彼はCSIじゃないからしょうがないのかな……。
— Yoko (yoko221b) 2006-05-14